第22話、わたくし………の知らぬ間に、『悪役令嬢バトルロイヤル』が始まったみたいですの。

「──どうして、どうしてなのですか? どうして同じ『悪役令嬢』でありながら、こんなむごいことができるのですか⁉」


 あたかも『ゲンダイニッポン』の『ムサシノ』の地にそっくりな、風光明媚で緑豊かな丘の上に建てられた、伝統ある貴族の子女専用の女学園『リリィーアンアン』にて、透き通った朝の空気が染み渡っている。

 本来なら、純真無垢なる少女たちの、「ゴキゲンヨウ」、「ゴキゲンヨウ」、という、毎朝恒例の挨拶が交わされている時分であるが──


 まさに今、幼稚舎から大学院に至るまでの広大な敷地は、無慈悲な戦火に包み込まれていた。


「──敵魔法大隊、沈黙!」

「別働隊による、王都王城の占拠、完了!」

「地方属領の領主たちも、次々に投降を宣言しています!」


 敵軍の伝令が矢継ぎ早に、絶望的な戦況を伝えてくる。


 ……どうやら、伝統ある我が魔法大国『ガーリィコボルト』も、今日で終わりのようだ。


 それでも、王国一の魔法公爵家の、、直系の娘としては、最期ぐらいはせめて一矢報いようと、いかにも女性らしい瀟洒な鎧を身にまとい、我が学園魔法警備隊の隊長席に我が物顔で座っている、敵国の総司令官にして国家元首たる、『戦神バトルジャンキーの悪役令嬢』へと向き直った。

「……ここはあくまでも、無力なる少女たちの学び舎。確かにわたくしたちは、伝統芸である魔法の修行に切磋琢磨しておりましたが、それも淑女のたしなみの範疇にすぎません。なのにいきなり大軍をもって、王都ではなく守備部隊もほとんどいないこの学園に攻め込むなどとは、尚武の国として知られたメツボシ帝国の方にしては、人道にもとるというものではありせんの?」

 すでに焦土と化した国土と共に果てた、百万の民の怨嗟の念を込めて睨みつけるものの、その凄絶までに美麗で無表情なかんばせは、微塵も揺らぐことはなかった。

 その一方で、文字通り彼女の影であるかのようにすぐ斜め後ろに控えている、いやに蒼白い肌をしたぞっとするような美形な青年のほうは、絶対零度の冷たい視線を投げかけつつも、口元に嘲笑を浮かべ、もはや身のうちの魔法力を使い果たし刀折れ矢尽きて、敵前にあってみじめに這いつくばるしかない、私のほうを見下ろしていた。


 まさしく異世界の有名な古典文学『ファウスト』に登場する、主人公の『ファウスト博士』を言葉巧みに唆し堕落させた、大悪魔『メフィストフェレス』そのままに。


「……タチコお姉様」

 腕の中の最愛の『魂の妹ソウルシスター』が、いかにも不安そうにわたくしの袖を引く。

「大丈夫よ、ユネコ。何があっても、あなたのことだけは守ってみせますわ」

 こちらを涙で潤んだ瞳で見上げている、丸顔でツインテールのそれはそれは可愛らしい♡下級生の少女を、慈愛の笑みを浮かべながら勇気づけていた、

 まさに、その刹那であった。


「──そう、まさにそれこそが、おまえたちの敗因なのだよ」


 初めて耳にする、朗朗たる美しき声音。

 何とそれは、これまで頑なに閉じられていた、憎むべき侵略者の薔薇の蕾のごとき唇から発せされていた。

「……わたくしたちの、敗因ですって?」

 あまりに唐突に意味不明なことを言われたために、思わず問い返せば、当学園高等部二年生であるわたくしと同じ年頃の、いまだ少女と言っていい幼さを残した女帝陛下が、やけに大人びた口調で更に言を紡いだ。

「おまえは完全に、悪役令嬢としての道を誤ってしまった。我々の本分は、『闘争』だというのに!」

「はあ?」

 何、この人。『闘争』とか、突然何を言い出すつもりなの?

 ……まさか、『ゲンダイニッポン』お得意の、『ダイサンテイコク』系の、『ミリオタ』とか?

 若干退き気味のわたくしに気づくことなく、更に熱弁のボルテージを上げていく、文字通りの『戦神バトルジャンキーの悪役令嬢』。

「我々悪役令嬢は、生まれながらのいわゆる『物語の拘束』のために、常に『破滅の未来』を強いられ続けている。この『乙女ゲー』そのままの世界の中で、与えられた『ヒロインの敵役』をただ漫然と演じておれば、座して死を待つだけなのだ。ならば我々に残された道は、ただ一つ。己の力で、この『呪われた運命』を打ち砕くのみだ! そしてその唯一の手段が、『闘争』なのである! 『愛があれば、わかり合える』などといった、戯言にすがりつくな! 一度でも本来自分の婚約相手であるはずのボンクラ王子の浮気相手である、『乙女ゲー的ヒロイン』を陥れたなどと疑いを持たれてみろ、たとえそれが濡れ衣であろうと、正式な婚約者なのだから自分には非は無いはずだと言い張ろうと、王族の勘気に触れたその瞬間に、我々個人だけでなく、一族郎党の首がはねられてしまう運命が待ち受けているのだ! だからこそ我々は、闘わなければならぬ! では、『何』と? 自分の婚約者を奪った『ヒロイン』か? 自分をないがしろにして不倫をした婚約者か? 我が身かわいさに哀れなわれわれだけを犠牲にしようとした自分の一族の者たちか? いっそのこと理不尽な裁きを突きつけてきた王族であり王国そのものか? ──否! そんな個々の『小物ども』を相手にしても、始まらないのだ!」

 ──え。

 な、何よ?

 てっきりこれから、某作品みたいに、すでに彼女の帝国軍が使用している『ゲンダイヘイキ』を使って、極身近な学園生活の場から、最終的には国家間戦争に至るまでの、ミリオタ悪役令嬢大ハッスルな、大バトル絵巻が展開されると思ったのに。

 思わぬ話の流れに戸惑うわたくしを尻目に、今や最高潮に達した目の前の甲冑少女は、

 ──これまでのシリアス展開をぶち壊しにしかねない、トンデモ発言をぶちかましやがった。


「我々が真に打破する相手は、この世界そのものであり、こんな出来損ないの『乙女ゲー』もどきの物語を創った、能なしの『作者』どもなのだ!」


 ………………………………………………………………………は?

「ちょっと、あなた、いきなりよりによって、何てこと言い出すのよ⁉ 世界そのものを打破するというだけでも、十分無理ゲーっぽいのに、言うに事欠いて、『乙女ゲー』に『物語』に『作者』ですってえ⁉ 何その、あからさまな『メタ』発言は! もはや世界観そのもののがぶち壊しじゃん!」

「お、お姉様、お言葉が、大層乱れておられますけど……」

「ユネコ、あなたは黙ってて!」

「あ、はいっ」

 しかしわたくしの至極当然の抗議の言葉に対して、目の前の少女帝王のほうは、いかにもきょとんと首をかしげるばかりであった。


「何を今更、我々が自分のことを『悪役令嬢』だと認識している時点で、メタも何もないだろうが?」


 ………………………あ。

 そ、そういえば、そうよね。

 いくら少々己が高慢でわがままである自覚があろうと、貴族の子女が自らを『悪役』などと、認識するわけがないですわよね。

「いや、そんなことは別に問題ではないのだ。それよりもゆゆしきは、君たちの悪役令嬢らしからぬ、数々の愚かなる行動のほうなのだよ」

「なっ、愚かなる行動、ですって⁉」

 無礼な! いくら勝者だからって、何という言い草よ!

「だって、そうだろう? 例えば今君の腕の中にいる彼女こそは、本来君にとっての最大の恋敵ライバルだったはずの、『乙女ゲー的ヒロイン』なのだろうが?」

「──っ」

 ……すでにこちらの人間関係は、すべてすっかり調べ上げているってわけね。

「どうして君はよりによって、最大の『排除対象』である『ヒロイン』と、むしろ最も仲良くなって、何の影響か知らんが、『魂の姉妹の契りソウルシスターズ・エンゲージ』なんてものを結んでしまって、ゆりゆりの関係になったりして、一体何を考えているのかね?」

「べ、別に、争うばかりが能じゃないでしょう? わたくしたちが本来の『シナリオ』とは違って仲良くなって、何が悪いというのです?」

「それを『敵前逃亡』と言うのだ、この敗北主義者どもが! ──いいか、我々悪役令嬢にとっては、恋愛も立派な『闘争』なのだぞ? たとえ正式な婚約者であるおまえとそこの『ヒロイン』が結託したところで、肝心の攻略対象の第一王子が他の女になびいたら、二人共敗北するだけじゃないか?」

「えっ…………あ、いや、もう私たち、王子なんてどうでもいいですし」

 わたくしがあっけなくそう言うや、顔を赤らめ私の袖を掴む手に更に力を込める、マイ『魂の妹ソウルシスター』。

「き、貴様、敗北主義だけでなく、退廃主義でもあったか! だが甘いな。忘れるんじゃない、おまえには常に『破滅の運命』が、つきまとっていることをな。いかにおまえたちが二人だけの世界にこもって現実逃避しようとも、王子の新たなる恋人となった女にとっては、目障りであることには変わりなく、いついかなる時に王子に讒言をもっておまえのことを陥れて、その結果一族郎党滅ぼされることすらも、けしてあり得ないことではないのだぞ?」

「──‼」

 ……た、確かに、ユネコと『魂の姉妹の契りソウルシスターズ・エンゲージ』を結び合う以前の私だったら、それくらいのことはやってのけたかも。

「どうだ、わかったか? 我々悪役令嬢の星の下に生まれた者は、世界そのものや己にとっての『作者』的な存在を、こちらから逆に支配するか破壊し尽くすまでは、常に闘争に身を置かなければならないのだよ」

「で、でも、世界そのものとか、どこにいるのかもわからない『作者』などといった者を、打破するとおっしゃっても、一体どのように行われるおつもりなのですか?」

 そうなのである。気宇壮大なのは構わないが、できもしないことを目標に掲げても、結局のところ労多くして功少なしとなって、何の意味もないのだ。

「何だ、そんなことか、別に問題はない」

「はあ?」


「何せ私はすでに『無敵の軍隊』を有しており、それを使えば時を移さず世界は私のものとなり、しかもそのうちすべての人間を滅ぼして、新たに私の言うことだけを聞く者と入れ替えて、『作者』からこの世界の支配権を奪い取ってやればいいのだからな」


 …………………………………………………………………………………。

「可哀想に……」

「な、何だその、いかにも人のことを哀れむような目は⁉」

「だって、『無敵の軍隊を有している』なんて、単なる中二病的妄想か、本当に持っていたら間違いなく『負けフラグ』だし。しかも『この世界のすべての人類を滅ぼして、自分の言うことだけを聞く者だけにする』とかまでになると、もう中二どころか初等教育低学年の時に考えた、まさしく黒歴史的自作のSF設定そのものじゃん。それでその結果、『この世界を物語として生み出している「作者」とでも呼ぶべき存在から、支配権を奪い取る』とかになったら、もはやどこの窓のない病室から逃げ出してきたのか問いたださなければならない、手遅れレベルの戯言でしょうが?」

「や、やめろ! 人の発言を、いちいち常識的見地に則って、解説を加えるんじゃない! まるでこの私が、『イタい』人間みたいではないか⁉ よ、よかろう! 今すぐ証拠を見せてやる! ──誰ぞ、特別リロード遊撃隊の隊長を呼べ!」

 い、いけない、ちょっとばかり正論で、追いつめ過ぎちゃった(てへっ)。

 一応こちらの生殺与奪件を全面的に握られているんだから、これ以上下手に刺激してはまずいぞ。

 私がどのようにして彼女に取りなそうかと、考えていた、

 まさに、その時であった。


「──呼んだかい? 麗しの女帝サマ♡」


 突然魔法警備隊詰め所内に響き渡る、新たなる野太い声。


 振り向けば部屋の入り口から、五、六名の男たちが入ってくるところであった。

 軍最高司令官たる皇帝陛下の御前だというのに、着崩した制服にズボンのポケットに入れたままの両手。

 いかにも傭兵か外人部隊であるかのようだが、着ているのは正規軍の上級将校のものであり、その風体も黒髪に黒瞳という、大陸内陸部では珍しい、極東の島国出身のメツボシ民族のものであった。

「……相変わらず、態度と言葉遣いがなっていないやつらだな。一応私は軍の最高司令官で、おまえたちは一部隊の幹部将校なんだぞ?」

「堅いことは言うなって、こちとらこのいくさの間中ずっと、最前線で斬り込み隊を受け持っていたんぞ? 小言よりもむしろ、褒美でもたんまりともらいたいほどだぜ」

 な、何だ?

 これが、軍の規律がどこよりも厳しく、それこそが強さの秘訣になっているとも謳われている、メツボシ軍の司令官と高級将校の会話か?

 ……おかしい、この違和感は、けして無視していいものではないわ。

「ふん、褒美か、ちょうどいい。おまえらの『力』を、そこの女どもに見せてやろうと思っていたところだ」

「おっ、どっちかのか」

「ああ、髪の長いほうは悪役令嬢だから、私のコレクションに加える予定があって無理だが、そっちのツインテールのほうは、好きにしていいぞ」

 ──なっ、まさか⁉

「げへへ、ちょうどこの国の男の身体には飽き飽きしていたところなんだ、久方ぶりに、女の身体を楽しませてもらうぜ♡」

 そう言って懐から大ぶりのサバイバルナイフを取り出して、その刃を長い舌でねぶる、男たちの中で最も位の高い階級章を付けた軍服を着ている将校。

「お、お姉様!」

「あなた、そのナイフで、何をする気なの⁉」

 ナイフ片手ににやついた笑みを浮かべながら、文字通り獲物を見定める獣の目で舐めるように、愛しきユネコのほうをねめつけている男に対して、怒鳴りつけてみたところ、

「こうするのさ!」

「──! あ、あなた⁉」


 己の首を、何らためらいなく、掻き切ったのであった。


「きゃああああああああっ⁉」

 ほとばしる鮮血。響き渡るユネコの悲鳴。崩れ落ちる軍服をまとった屈強なる体躯。

「──ゆ、ユネコ⁉」

 あまりにショッキングな光景に耐えきれなかったのか、気を失なってしまった最愛の少女を、慌てて抱き留める。

 一方将校のほうは、すでに事切れているようだった。

「……何なのですか、一体、何をやりたかったのでしょうか、この方ときたら」


「──そりゃあ、決まってるじゃん、オネエサマ? 『死に戻りセーブ・アンド・リロード』だよ」


 私が思わずこぼしたつぶやき声に、打てば響くように返ってくる、どこか人を小馬鹿にしたような声音。

 ──何とそれは、己の腕の中の少女の、桃花のごとき唇から発せられていた。

「……ユネコ?」

「はーい、オネエサマの、最愛の『魂の妹ソウルシスター』の、ユネコちゃんで〜す♡」

 そう言うやいなや、突然唇を近づけてくる、『ユネコ』。


「──やめて! あなたは一体、何者なの⁉」


 咄嗟に突き飛ばせば、目を疑うような敏捷な身のこなしで、こちらから距離をとる、『ユネコ』。

「チッ、気づきやがったか、さすが『魂の姉妹の契りソウルシスターズ・エンゲージ』は、伊達じゃないってところかねえ?」

「くっ、何者でも構わないから、とっととその身体から出ていって! 私にユネコを返しなさい!」

「おほっ、こいつ可愛い面して、夜は『攻め』なのかよ? そしてあんたのほうが、『受け』だって? いやいや、女にも『攻め』と『受け』があることだけでも初耳なのに、『リバーシブル』までやりこなしているなんて、ほんと、オジサンびっくりだよ♡」

 な、何よ、こいつ。何でさっきから、わたくしとユネコしか知り得ないことを、べらべらとしゃべっているの⁉

「出て行けと言ったら、出て行ってよ! お願い、これ以上、私のユネコを穢さないで!」


「やめておけ。そいつがその身体から出て行くのは、おまえの『魂の妹ソウルシスター』とやらが、死んだ時だけなのだ」


 ……何……です……って……。

 思わず振り返れば、『戦神バトルジャンキーの悪役令嬢』が、相変わらずの氷の無表情で、わたくしのことを見つめていた。

「おまえも見ていただろう、あの男が自分の首を掻き切るところを。何せ『転生者』が憑依する身体を変えるためには、憑依されている側の人間が死ななければならないのだからな」

「ぐひひっ、俺の『作者』サマは、『ゲーム脳』であられてな、だから俺に与えられたチート能力は、この『死に戻りセーブ・アンド・リロード』になっちまったんだよ」

 ……『転生者』? 『作者』? 『ゲーム脳』? それに『死に戻りセーブ・アンド・リロード』ですって⁉

「……あなた、まさか」


「ご想像通り、『ゲンダイニッポン』からやって来た、ハンドル名『カワセミ』だ。以降、よろしくな」


 それを聞いてわたくしは我を忘れて、再び皇帝殿のほうへと振り向いた。

「まさか、あなた、『転生者』に魂を売り渡してしまったの⁉」

「──そうだ。こいつらは全員、『死に戻りセーブ・アンド・リロード』を固有能力スキルにしているので、何度激戦の最前線で命を落とそうが、すぐに甦ることができるという、事実上の『不死の軍隊』なのだ」

「……馬鹿げている、これだけ大規模な『死に戻りセーブ・アンド・リロード』の軍隊を維持するために、どれだけの数のあなたの国の国民が、犠牲になると思っているの⁉」

 そうなのである。いくら『死に戻りセーブ・アンド・リロード』のチート能力とはいえ、質量保存等の物理法則に鑑み、その者自身の肉体において、すべての傷が自動的に修復されることによって息を吹き返すなどといった、フィクションそのまんまのことが現実に起こることなぞあり得ず、実際には何と、致命傷を受けるたびに自動的に再処置が施されて、また別のメツボシ人の肉体へと憑依することになるのであった。


 つまり転生者が『死に戻りセーブ・アンド・リロード』をするごとに、彼女の国の民が必ず一人死んでしまうことになるのだ。


「──ふんっ、かつては私のことを殺そうとした、王国の民草どもだ、どれだけ犠牲にしようが、構うものか」

「じゃ、じゃあ、いつかは全人類を、自分の言うことだけを聞く存在と入れ替えるというのは?」

「もちろん、世界中のすべての人間に、『ゲンダイニッポン』からの転生者を憑依させることによって、この世界を自作の小説として生み出しているとされている、『作者』の世界の支配権を横取りするというわけさ」

「自分の国どころか、世界そのものすらも、『転生者』に売り渡そうとするなんて、そんなことが赦されるとでも思っているの⁉」

「別になんて、思っちゃいないさ、むしろ力ずくでんだよ。何せそのための『闘争』なんだからね。世界のすべてを征服できれば、私に文句を言うやつなんか一人もいなくなるのはもちろん、何もかもが自分の意のままにできるって寸法だよ」

「そんな権力者の言いなりとなるばかりの、ロボットみたいな人間だらけの世界なんて、御免こうむるわ! ──さあ、ユネコ共々この私を、今すぐ殺しなさい!」

「……あいにくだが、悪役令嬢である君を、殺すわけにはいかないんだ」

「は? なぜです?」

 怪訝な顔となるわたくしをよそに、その征服者の少女は、これまでになく真摯な表情となって、厳かに宣った。


「──なぜなら、最終的に我々の前に立ち塞がるであろう、ホワンロン王国きっての悪役令嬢にして、かの『なろうの女神』とともにこの世界そのものを司るの巫女姫である、アルテミス=ツクヨミ=セレルーナと互角に渡り合うためには、私を含むすべての悪役令嬢の力を結集する必要があるのだからな」


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


【後書きというか、注意書きというか、のコーナー】


「……ええと、最後の最後にやっと名前が出た、本作の主役兼メインヒロインの、アルテミス=ツクヨミ=セレルーナでございます。


 おそらく多くの読者の方が戸惑われたでしょうが、これは間違いなく『わたくし、悪役令嬢ですの!』の本編でございます。


 けして、別の作品や番外編等ではございません。


 しかも一応、前回の『悪役令嬢教師』編の続きとなっており、当然次回以降は引き続き、悪役令嬢教師としてのわたくしが登場いたしますので、どうぞご安心を。


 もちろん今回の『悪役令嬢バトルロイヤル』編も、並行して続けていく所存ですが、ここで全体的なお断りを一つ。


 本作中に登場した『悪役令嬢』はすべてフィクションですので、実在の人物や実在のWeb小説とは一切関わりはございません。


 ……万一なにがしかの関わり合いがあったとしても、あくまでも洒落でやったことですので、どうか作者のことを怒らないであげてくださいませね♡」

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