瑠璃の誘惑。メロンパンの誘惑。
本宮 秋
第1章 幻の石
第1話
山深き、とある町。
小さな集落だが、歴史ある所。
古い神社やお寺が、ひっそりと佇んでいる。そこに住む人も疎らで、寂れた町。
若い人もいない。
そこに20歳の男子が、住み着いた。
何故この集落かと言うと昔、祖父が住んでいた所。それだけの理由。
まだ小さかった時に何度か訪れた記憶があった。
自分は、志望の大学に落ち浪人生活を選ぶ。静かな所で勉学に集中したいと親に言い、此処に。
祖父は亡くなっているが、祖父の妹(大叔母)が居て昔からおばあちゃん代わりだったので、そこに居候させて貰う事に。
本当に静かな所。
勉学に集中するには、うってつけ……
しかし……
勉学とは、此処に来る為だけの言い訳。
この場所に来たかった本当の理由……
それは、石。
つまり石探し。この歳で石に興味とは、ジジくさいかと思われるかもしれない。
しかしある時、ある石を見て感動し興味が湧いてしまった。
その石は……『瑠璃黒曜』《るりこくよう》
黒曜石なのだが、黒いガラスの様な黒曜石の中に瑠璃色に輝く模様が。
正に奇跡の石と呼ばれてる。
一般的に黒曜石は真っ黒、ガラスの様な石。時折、白いスジや模様の入った物や赤茶色の斑ら模様のある物などがあるが、濃い紫色掛かった青の模様の入った『瑠璃黒曜』は、今ではとても貴重。
今では、もう取れる事は無いと言われる幻の石。
その『瑠璃黒曜』と、この地が何の関係があるかと言う事だが……
正にこの地が『瑠璃黒曜』が最後に見つけられた場所だから。
その最後の『瑠璃黒曜』とされる石は、此処から少し離れた所にある歴史資料館に展示されている。
昔、祖父の所に遊びに来ていた時は『瑠璃黒曜』が、この地の売りで今より賑わいがあった。
何となく、祖父との思い出の記憶を辿ると自分がまだ小さかった時に此処らの川で石を取っていた記憶があった。
祖父の家にも沢山の色んな石が飾ってあったし……
祖父の時代には、『瑠璃黒曜』は採れていたらしい。
その今では幻となった『瑠璃黒曜』を探す為、親に嘘をつき 浪人生がやらなければいけない勉学と言う本文を置き去りにする程、自分は『瑠璃黒曜』に魅了されていた。
そんな理由でわざわざこんな山奥に。
ただ良い事も沢山あった。
ほぼ高齢の人ばかりの中に、若い男子。
可愛がられると言うか、とても気にしてくれて意外と良い生活が出来そうな気がした。
早速、川へ下見に。
透明な清らかな川。
水量は多いが自然そのままの整備されていない、うねりの多い川。
周りも
何処に石があるのかなんて、実はさっぱりわからない。
何と無く昔、祖父と石拾いした所ぐらいしかわからなかった。
ただそんな無知で無謀な自分だったが、何と無く見つけられそうと思ってしまう。
ポジティブ思考と言うべきか……
それともそんな感じにさせてしまう程、『瑠璃黒曜』が魅力的なのか。
もはや自分自身が、探検家の様なつもり。幻の石を探すという男が特に憧れる『ロマン溢れる』そのものだった。
とりあえずは今日は、下見だけ。
川に架かる橋を二ヶ所程廻り、橋の上から川辺を見て 気分だけ味わっていた。
移動は、スクーター。
電車もバスも無い町。夕暮れ近くになり下見を終え帰る事に。街灯も疎らな所なので早めに帰宅。
探検家気取りの割には…… 暗い山の中の道にビビり日が落ちる前にあたふたと帰宅する自分。
帰ると既に夕食が用意されていた。
大叔母のヨシ婆。名前はヨシコだが小さい頃から『ヨシばあちゃん』と慕っていたので今だに『ヨシばあ』と。
おばあちゃんなので、夕食の時間も早い。ご飯を用意してくれるだけ有難いので、無論文句など……
コンビニすらない所。小さな商店が一つだけ。
日が落ちるとポツポツ程度の家の灯りと少な目の街灯、ポツンとある自販機が妙に明るく感じる。鹿なのかキツネなのかタヌキなのか動物の鳴き声が、たまにする。そんな田舎の集落。
静かな夜…… でもなかった。まだ夏本番でもないのに虫が鳴き、カエルが鳴き。
でも一番驚いた事は、夜の空。
こんなに星ってあったんだと改めて思う程、空一面の星空。
暗い集落だからこそ、よりはっきりと星が見えた。天の川まで。実際に天の川は、見えるものなんだと感動しながら。
明日から実際に石探しを始める予定だが、気持ち的には既に興奮していた。
早めに寝床に入り、気持ちも昂ぶっていたので眠れないかなと思っていたが、心地よい虫の鳴き声と疲れのせいで知らぬ間に眠りについていた。
清々しい朝日の中、目を覚ました。
既に起きていて食事の支度も、し終えていたヨシばあ。流石に朝も早い。
ヨシばあには、石探しをする事は言っていた。
昔から常に自分の味方のヨシばあ。
流石に「勉強もしなさいよ」って言われたけど、祖父の孫ゆえ、石に興味が惹かれるのも理解してくれた。
幻の『瑠璃黒曜』を探しに……
いざ! 探検家デビュー。
第1話 終
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