魔法侍 まじかる武蔵☆

一条人間

神日本帝国大ピンチ!侵略⁉ぺりゐ軍到来ッ!!

第1話 魔法侍現る!

 超江戸時代末期、何百年にも及ぶ他国文化導入禁止令を解いた日本は亜米利加アメリカ率いるぺりゐの軍勢に侵略を許してしまった。

 そしてぺりゐは日本に亜米利加の権力を見せつけるべく次々と日本に欧米文化を広げていった。

 多くの民が暴力的な文化の移行により蹂躙じゅうりんされ、悲しみの中に溺れていた。


 しかし、ただ一人愛と正義と勇気とUSAのロゴを背負い、130円のお小遣いを手に古き良き大和の文化を取り戻すため立ち上がる侍がいた。


「ヒャッハー!ここもマルドナルドができたぜぇ!ほらこれで金があればいつでも飯が食えるぞ?」

 星条旗をかたどっているスーツを着た巨漢の男たちはは嬉しそうに嘲笑う。こいつは亜米利加からやってきた欧米化専門戦闘集団アメリーの戦闘員だ。

 とある村で家屋を破壊し多くの人を傷つけてその店は立っていた。その名もマルドナルド。格安ハンバーガーの店だ。種類も豊富で安くて早いうまい飯がコンセプトのファストフード店だ。


「もう勘弁してください、この村にはそんなもの買う余裕などございませぬどうかご勘弁を」

 村長は泣いて詫びているがそんなこと奴には関係ない。ただ奴らは各地を蹂躙し欧米文化を広めることしか考えていないのだから。


「あーそっか!お前らもう金ないんだったな!残念だ!このままさっさと餓死してな」

「「ぎゃはははっーーー!!」」

 わかり切っていたことをわざわざ言い直すアメリーたち。この侵略は日本の文化を欧米の文化で塗りつぶすほかに日本の勢力を削ぐという考えもあったのだ。これによって衰退した日本は容易く制圧されてしまうだろう。


 突然大きな地鳴りが響いた。それはだんだんと近づいてきていた。


「あぁぁ!獅子神様ししがみさまのお怒りじゃ」

 村長がそう言った。この村に古くから伝わる伝説の獣だそうだ。


「あぁ?なんだ獅子神ってのはそんなのただの虎もどきだろ?」

 地鳴りのする方へ振り向いたアメリーはその光景に愕然した。


「おおぉぉぉぉ!!!獅子神様のお怒りじゃー!ハンバーガー食べる子はお仕置きじゃー!」

 颯爽と現れたのはイノシシにまたがった侍だった。ちょんまげにはかまを着ており、腰には刀を差していた。


「これ獅子じゃなくてイノシシだろ!なんだお前ふざけてんのか!?」

「これがふざけてるように見えるのか?だとしたらお前は愚か者だ」

 そう言って侍は静かにイノシシから降りるとこう叫んだ。


「いのししちゃーんご飯の時間だよー!今日はこのアメリカ野郎たちがメインディッシュだ!☆」

 その声でイノシシはアメリーたちを次々となぎ倒していった。


 あらかたアメリーたちを倒し終えると、イノシシは『定時なんで帰りますね』と言って去っていった。


「ありがとよー今度は俺食べられないようにするからな!気を付ける!」

 あのイノシシは侍の言葉を聞くと、「俺は切られちまったよお前の正義の心にな」と言い返して森に帰っていった。


「くそぅなんで俺たちがこんなにも簡単にやられたんだ……、なんなんだ前は」

 倒された隊長のアメリーは悔しそうに地に伏し叫んでいた。そこに侍と村長が駆け寄りこう言葉をつけ足した。


「なんだかんだと聞かれたら」

「答えてやるのが世の定め」

 村長と侍が聞いたことのあるフレーズと見たことのあるポーズをやり始める。


「アメリカ文化を根絶するために!」

「我らは戦うその日まで!」

 侍たちの掛け合いはまだ続く。たぶん名乗るまで終わらないだろう。


「まじかる武蔵むさし!!」

 侍が鷹の構えで決める。

 戦隊ものならばここで爆発がある。そんな雰囲気だ。


「モブ村長!!」

 続いて村長も蛇の構えで決め込む。


「そうかお前が……最近噂のアメリカつぶしの……」


 その言葉を聞いてアメリーが確信した。最近アメリカ文化流布を邪魔する荒す輩がいるというその犯人がこいつであると。


「は?何言ってんだよ、お前早く名乗れよ」

「え?これ俺もやるの?だって敵だよ?」

「はぁ?知るかあぁ!!さっさとやれ!」

 武蔵は激怒し、アメリーに名乗りを強要する。


「くっ、マルドナルド副店長 ポテット・カリット……」

 ポテット・カリットは俯きながら恥ずかしそうに流れに乗った。


「そうかお前そんな名前だったのか」

「いい名前だな!うまそうだ」

 武蔵とモブ村長はそう言って手を差し伸べた。


「武蔵、敵のお前がどうしてそこまで……」

 ポテット・カリットは目に涙を浮かばせてその手を取ろうとした。その時だった。


「甘ったれてんじゃねぇぇ!!!」

「なんでっ?!」


 武蔵は思いっきりポテットの顔面に拳骨をぶちかました。不意の一撃にポテットはなすすべなく倒された。


「ふん、ハンバーガーの無料券さえ持っていないなど貴様はアメリカ人の風上にも置けんな」

 日本人のくせにアメリカを語る侍。解せない。


「おいモブ村長、そのマルドナルドの本店はどこにある?」

「はい!それはここから少し離れた丘にあります。まさか乗り込むのですか?やめた方がいいです!命を無駄にする気ですか?」


 モブ村長は武蔵のやろうとしていることを理解したのだろう、止めに入る。しかしそんなことではたぎる大和魂は止められないのであった。


「モブ村長、拙者せっしゃは二つおぬしに言わねばならぬことがある。一つは侍たるもの、引けぬ戦があるということだ」

 武蔵はさっきとは別格の雰囲気を出し、周囲を圧倒する。これが侍まじかる武蔵の本気なのだろう。


「それなら止めはしません。どうかご無事で、この村に吉報きっぽうをお届けくださいませ」

 村長は武蔵にすべてを託した。それは覚悟を決めたもう一人の男の顔だった。


「それからもう一つはモブ村長。貴様の出番はこれ一話限りだ。達者でな」

「そうなんですか!?」


 そう言って武蔵は村を去っていった。最後のあまりにもメタすぎる言葉は村長を立ったまま絶命させるほど破壊力のあるものだったという。


「待って居ろマルドナルド店長、お前の店長人生はすぐに閉店に追い込んでやる」

 そう意気込み武蔵は本店を目指した。


「……まじかる武蔵か……、なかなかやる侍じゃないか……。あいつなら奴をやれるか?」

 その人物は村を後にする武蔵をずっと仁王立ちで見つめていた。隠れもせず堂々と黒装束を着ている姿からしてとても痛い人物なのだろうか。

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