ひがたものがたり
みき かおろう
第1話 花のマーチ
俺の名は日形 楽都 みんなからはがくちゃんと呼ばれている、生まれも育ちも博多湾の東北に広がる和白干潟だ、海っぺたの一軒家が俺達の唯一の財産、この日形って名前も干潟から来てるんじゃないかって勝手に思ってる。
来月末の和白干潟まつりのライブの練習に日々余念がない、ギター一本でやっていけたら最高なんだけど、現実は何でも屋 家族には迷惑のかけどおしだ。
そんな俺の最初の曲 花のマーチの思い出を語ろうか。
あれは忘れもしない 友人だったピアニスト 千手 右手郎んちに行って初めて妹の左手子に会った時のこと、このさだこは今俺の奥さんやっている、だからゆうちゃんは今では義兄弟ってえわけさ。
大学で同窓だったから、あのときの左手子はまだ女子高生 制服姿のあいつの手にあった1冊の本 努力の上に 花が咲く
それがふと目に入った、そのとたん まるでこぼれ種のようにその言葉が俺の中に入り込んで、文字通り 花が咲くように ひとつのメロディーが浮かんだんだ。
俺はタブ表しか読めないから、早速 ゆうちゃんに採譜してもらった、苦しんだのはその後だ、この子はいわば逆子と言っていい、つまりサビの部分が先にできたため、AメロBメロを作ってドッキングさせなければならない。
頭からつくる場合はわりかしスムーズに行くんだが、足からできると、思いつくのがなかなか大変なんだ。
苦労に苦労を重ねて完成させたときは凄く嬉しかった、またイントロ部分も何とか自力で作れたし。
子ども時代の入選曲をはじめ、それまでの俺の曲は1フレーズがせいぜいだったから、実質コイツが処女作ってわけだが、この言い方はオレ男なんでちょっと恥ずかしいから、第1号曲とみんなには言っている。
編曲がゆうちゃん、作詞は左手子、その苦労話は本人に語ってもらおう。
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