全員ゾンビ

冬の真夜中に、スマホも何も持たずに外に出る。


イヤホンを耳に突っ込み、イヤホンジャックはポケットに。


あてもなく、ただ歩くのだ。


静まり返った街中は、時折通る車の走行音ぐらいしか聞こえない。


その音さえもイヤホンで塞ぐ。


音楽プレーヤーに繋いでいないイヤホンからは何も流れない。


私は今、この情報社会から完全に消失した。


社会から乖離した存在という意味ではまるで死人。


冷たい身体を引っ張って、あてのない小旅行を楽しむのだ。


しかし、その旅程も短いもので、すぐに蘇生して社会へと帰る。


死んで生き返ってを繰り返す私はさながらゾンビだろうか。


社会に縛られ、死にきれずに彷徨い歩くゾンビは、全世界に蔓延している。

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