第3話 休息の行方

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第3話 休息の行方



≪登場人物≫


サイアス♂(17歳):自由気ままな冒険者。

ラキア♀(28歳):法国ルミナシアの大司教。

シエル♂(24歳):聖都シュティレーゼ、聖騎士団騎士団長。

デュラハン♂(27歳):聖都シュティレーゼ、聖騎士団騎士副団長。

イヴァン♀:(21歳):聖都シュティレーゼ、聖騎士団騎士大隊長。

ヤシュム不問:黒い猫のような見た目だが、猫より大きい。一部の人以外には見えない仕様。

コモラ不問:不思議な雰囲気を纏った少年。




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≪聖騎士団屯所/歩きながらの会話≫




サイアス:「はぁ・・・。」


デュラハン:「戻ってきてからため息ばかりついてますが

       大聖堂で何かあったんですか?」


サイアス:「あぁ・・・うん。」


デュラハン:「お兄さんの、事ですか。」


サイアス:「(深いため息)」


デュラハン:「どういった内容でした?」


サイアス:「自らの責務を全うする為に、聖騎士団を去ったって。」


デュラハン:「そうでしたか。

       確か、此処へ来た目的でもありましたね。」


サイアス:「うん。」


デュラハン:「この先、どうするつもりです。」


サイアス:「・・・なんかさ。」


デュラハン:「ん?」


サイアス:「みんなの手伝いしてたら

      その内兄貴に会えるような気がするんだ。」


デュラハン:「私も・・・そんな気がします。」


サイアス:「良かった! だから、俺は兄貴の事は諦めてないよ。」


デュラハン:「分かりました。」


サイアス:「それに、色々勉強するにはいい機会かなって思って。」


デュラハン:「勉強?」


サイアス:「鍛えて貰って強くなるのは勿論だけどさ、社会勉強とか?

      今までずっと田舎暮らしだったから、そういうの全然分からなくってさ。」


デュラハン:「(微笑)良い心掛けですね。

       サイアスさんはそのままでも良いと思いますけど。」


サイアス:「うん! あ、そうだ。 デュラハンさんは・・・」


デュラハン:「おっと、私の事はデュランで結構ですよ。

       こちらの方が呼ばれ慣れてますので。」


サイアス:「わかった。 デュランさんは兄貴を知ってる?」


デュラハン:「はい。少しの間でしたがお世話になりましたよ。」


サイアス:「俺、兄貴の記憶って小さい時のしかないんだ。 

      だから聖騎士団ではどんな人だったのか知りたくって。」


デュラハン:「そうですね・・・。

       とても優しく芯のお強い方でした。」


サイアス:「しっかりしてそうなのに、何処か抜けてたり。」


デュラハン:「はい。それに、女性にも人気でした。

       あの甘いマスクに魅了される方々も多かったのでしょう。」


サイアス:「へぇ・・・。 モテたんだ。

      女の人苦手だと思ったんだけど、平気だったのかな。」


デュラハン:「そう、だったんですか?」


サイアス:「うん。 話しかけられると異常に慌てる。」


デュラハン:「あぁ・・・、確かに。言われてみれば

       そんな場面に何回か遭遇した事がありました。」(微笑)


サイアス:「だろ!」(嬉しそうに)


デュラハン:「ですね。」


サイアス:「良かった、昔と全然変わって無い!」


デュラハン:「あの人はこの先もずっと変わらない気がします。」


サイアス:「俺もそう思う!」


デュラハン:「さて、・・・そうこう話してる間に、目的地へ着きました。」


サイアス:「ん? 此処は・・・」






イヴァン:「『Histoire of Eternto(イストワール オブ エテルノ)』第3話 休息の行方」






≪大教会入口≫





ラキア:「シエル殿、まだいらしたんですね。」


シエル:「あぁ、ちょっと用事を思い出してな。」


ラキア:「そうですか。」


シエル:「書状は?」


ラキア:「手配は、終わりました。」


シエル:「後は返事を待つのみか。」


ラキア:「・・・はい。」


シエル:「ん・・・どうした? 歯切れが悪そうだな。

     それに俺を名前で呼ぶときはプライベートの用事だろ?」


ラキア:「(切り出すのを少し戸惑って)

     ・・・彼の事です。」


シエル:「・・・サイアスか。」


ラキア:「はい。」


シエル:「俺は決まった事に口出すつもりはない。

     それにヨハンさんの弟なら問題ないだろ。」


ラキア:「いえ、その事ではありません。」


シエル:「何か、引っかかる事でも。」


ラキア:「サイアス殿が、ヨハン殿の肉親である以上、 

     真実を知るべきだとは思うのですが・・・、

     正直、迷っています。」


シエル:「一体、何に迷ってるんだ。」


ラキア:「私・・・、いえ。貴方の過去に触れる事になりますので。」


シエル:「・・・。」


ラキア:「4年前のあの出来事は、私達の心を大きく動かしました。

     そして、目を背けてはならない現実です。

     

     彼女がしたことは・・・」


シエル:「(遮る)ラキア。」


ラキア:「っ・・・失礼。

     何れにせよ、歯車が動きだした今、

     意図せず彼の耳に届く可能性もあります。

     ですから、誤解や混乱が起きぬよう、

     直接私達の口からお伝えしたほうが良いかと。」


シエル:「・・・あぁ。」

     

ラキア:「ですから、早い段階で貴方にも

     覚悟をして頂かないといけません。」


シエル:「分かってる。」


ラキア:「話は、それだけです。」


シエル:「ん、了解。 んじゃ、忙しくなる前に

     ちょっくら団員達に顔出して来る。」(歩き出す)


ラキア:「はい。(見送ろうとして引き止める)

     ぁ・・・シエル殿。」


シエル:「ん?」(一回足を止める)


ラキア:「あ・・・いえ。

     どうぞ行って下さい。」(言葉が見つからず引く)


シエル:「そうか? んじゃ、また後で。」(振り返らずに手を軽く上げて去る)





≪聖騎士団・屯所≫






イヴァン:「んで、私の所に来たのか。」


デュラハン:「そういうことです。

       サイアスさん。彼女はイヴァン=ラングフォード。

       聖都シュティレーゼ直属、聖騎士団クレスティアシュトルツの大隊長。

       貴方の面倒を見てくれる人です。」


サイアス:「よ、宜しくお願いしま~す。」(少し遠慮がちに。)


イヴァン:「デュラン、何で他の奴にしなかったんだよ。」


デュラハン:「団長命令ですから。」


イヴァン:「えぇ~! そんな暇ないっての。」


デュラハン:「そういって、ただ面倒くさいだけでは?」


イヴァン:「うっ。」


デュラハン:「観念して下さい。」


イヴァン:「ったく、分ったよ!

      ・・・そういやサイアス。」


サイアス:「ん?」


イヴァン:「ラキアに呼ばれて大聖堂まで行って来たんだろ?」


サイアス:「うん。呼ばれたけど。」


イヴァン:「けど? そん時の話を聞かせろよ。」


サイアス:「え~っとなんて、説明したらいいかな・・・。」


イヴァン:「はっきりしねぇな!

      このガキはぁああっ!!」(相手の頭をぐしゃぐしゃする)


サイアス:「だぁあわあわぁわ、やめろってっ!」


デュラハン:「イヴァン、一方的過ぎないですか? 

       ちゃんと順序を追って聞いてあげ・・・」


イヴァン:「(食い気味)うっせぇ!」(肘鉄)


デュラハン:「ぐふっ。気が、短いのは・・・相変わら、ず。」


イヴァン:「で?」


サイアス:「ひぃ!?」


イヴァン:「・・・ん。」(睨み付ける)


サイアス:「あっ! えっと。

      俺が神具の持ち主だから

      アルシャディア救済の手助けをしてくれって言われて。」


イヴァン:「は? なんだよそれ。 本当なのか。」


サイアス:「んな事言ったって、俺も半信半疑って言うか

      現実味を感じてないって言うか・・・。」


イヴァン:「(食い気味)おい。

      さっきから気になってる事があるんだよ。」


サイアス:「え?」


イヴァン:「テメェは、目上に敬語使えっっての。」


サイアス:「だって、イヴァンも使ってな・・・。」


イヴァン:「(食い気味)立場が違ぇだろぉがっ!!」(腹パンチ)


サイアス:「げふっ。俺、団員・・・じゃ、ないんだけ、ど。」


イヴァン:「あん?」(怒りの威嚇)


シエル:「おーおー、やってるな。慣例の儀式。」


デュラハン:「あはは、お帰り、なさ・・・い。」(ダメージ残)


シエル:「って、デュランまで制裁受けてんのか。」


デュラハン:「え、えぇ・・・」


イヴァン:「おう、シエル。暫く振りだな。」


シエル:「あぁ。遅くなって悪かった。」


サイアス:「あ、シエルさん。」


シエル:「サイアス、さっき振りだな。」


デュラハン:「団長丁度良かった。 先程来たばかりですよ。」


シエル:「ん、了解。

     サイアス、改めて宜しく。」(握手を求める)


サイアス:「よろしくっ!」


イヴァン:「(食い気味)だから敬語っつってんだ、ろ!」(十字固め)


サイアス:「いだだだだだあっ、ギブギブ!!」


シエル:「なんだ? 随分気ィ立ってんな。 どうした。」


デュラハン:「先日、大司教(アークビショップ)様に大目玉を食らったみたいですよ。」


シエル:「あぁ。」


イヴァン:「デュラン、思い出させるような事言うんじゃねぇ!」(十字固め)


サイアス:「あだだだっ!!」


デュラハン:「どうどうどう。」


シエル:「ははは、成る程。おい、イヴァン。」


イヴァン:「ん?」(十字固め中)


サイアス:「いでで、離せって!」


シエル:「久し振りに、手合わせするか?」


イヴァン:「おっ!?」(行き成り離す)


サイアス:「あでっ! た、助かった・・・。」


デュラハン:「あの、こんな時に宜しいんですか?」


シエル:「こんな時だからこそ、だろ?」


デュラハン:「それは、どういう?」


シエル:「本日付で、ルミナシアから各国に向けて書状を出した。」


デュラハン:「先日の、襲撃事件の事ですか。」


シエル:「あぁ、それも内容の一部に含まれてる。」


イヴァン:「それじゃ、近いうちに円卓会議をやんのか。」


シエル:「そう言うことだ。」


サイアス:「えんたく、会議?」


デュラハン:「四ヶ国の賢人が集って、大切な話をする場の事ですよ。」


サイアス:「へぇ・・・。」


シエル:「そのお客様を迎える大事な仕事が始まる前に、

     束の間の休息って奴をだな。」


デュラハン:「そうは言っても、準備をしなくていいんですか?

       円卓会議にご出席なさるんですよね。」


シエル:「デュラン、そう硬いこと言うなって。

     此処で落ち着かせとかないと、被害を受けるのはお前らだろ?」


デュラハン:「そうでした。」


イヴァン:「どういう意味だよ。」


シエル:「俺も、丁度体を動かしたかったんだ。 いいだろ? イヴァン。」


イヴァン:「あ、あぁ。手加減なしでやるからな。」


シエル:「構わないが、程々にしろよ?」


イヴァン:「分かってるって!」


サイアス:「えっ、へ? デュランさん、どうなったんだ?」


デュラハン:「これから二人で戦闘訓練を始めるそうです。」


サイアス:「本当かっ!?」


デュラハン:「きっと、見るだけでも良い経験になる筈ですが、

       血生臭い事にならなければ良いんですけど。」


サイアス:「はっ?」


シエル:「デュラン、今空いてる修練場は?」


デュラハン:「はい。 え~、旧舎の近くなら空いてるかと。」


シエル:「それじゃ、移動開始だ。」


イヴァン:「よっしゃ、久々にあばれっぞー!」


シエル:「サイアス、お前も来いよ。」


サイアス:「わかった!」






≪城下町一角の広場/木陰にて≫






ヤシュム:『此処にいたのかイ。』


コモラ:「あ、ヤシュム。 また会ったね。」


ヤシュム:『嫌だな。 会いに来たんだヨ。』


コモラ:「遊んでくれるの~?」(目をキラキラさせ)


ヤシュム:『遊ばない。 まったく、相変わらずダ。』


コモラ:「僕は変わらないよ! これからもずっと。」


ヤシュム:『本当?』


コモラ:「ええへ(微笑)」


ヤシュム:『ケッ、呑気な奴。 この前傷付けられたくせ二。』


コモラ:「それは、しょうがないよ。」


ヤシュム:『見守るだけしか出来ないのも、窮屈そうだネ。』


コモラ:「僕は楽しいよ!

     毎日が同じようで少しづつ違う。

     人の生活を眺めてるのは時を実感出来るもの。」


ヤシュム:『確かに人間観察は面白いと思うけどサ。

      人の姿になってまでする事?』


コモラ:「同調するのは大事な事だよ。

     突然僕が本来の姿で現れたら、それこそ大騒ぎじゃない?」


ヤシュム:『それもそうだけド。』


コモラ:「ねっ?」



(暫く人々の動きを眺めてる二人。)


コモラ:「みんな楽しそう・・・だけど。」


ヤシュム:『・・・感じてル?』


コモラ:「・・・うん。」


ヤシュム:『この前の襲撃事件から更に加速してる見たイ。

      少し君の体が心配ダ。』


コモラ:「平気さ。」


ヤシュム:『僕の勝手な判断で連れて来たけど、後悔は無いヨ。』


コモラ:「うん・・・。」


ヤシュム:『アルシャディアはまた荒れるかモ。』

 

コモラ:「よいしょっと。(立ち上がる)」


ヤシュム:『何処行くノ?』


コモラ:「へへっ、秘密!」


ヤシュム:『君はこれからどうするんだイ。』


コモラ:「僕の役目は“見守ること”。 ただ、それだけさ!」


ヤシュム:『・・・気を付けて、守護獣コモラ。』


コモラ:「またね。紡ぎし唄、ヤシュム。 女神の加護を!」






≪修練場≫






イヴァン:「はぁあっ!」(切り込み)


シエル:「っ、踏み込みが甘いぞー。」(受ける)


イヴァン:「言われなくてもっ!」(右攻撃)


シエル:「おっ?」(避ける)


イヴァン:「分かってんだよっ。」(左攻撃)


シエル:「ほっ。」(避ける)


イヴァン:「でやぁあ!」(攻撃)


シエル:「はっ。」(弾き飛ばす)


イヴァン:「なっ!! クソッ。」


サイアス:「おぉ! 大振りの攻撃を簡単に弾き飛ばしたっ。」


シエル:「イヴァン。」


イヴァン:「あん?」


シエル:「まだ、終わっちゃいないぞ。(微笑」(相手の額に手を沿える)


イヴァン:「ちょっ!?」


シエル:「よっと。」(足を引っ掛ける)


イヴァン:「うわっ!(倒れる)づっ!!」


サイアス:「あんなんで、軽々と転ばすなんて・・・。」


イヴァン:「いつつっ。 あ~、背中、思いっきり・・・打った。」


シエル:「ん、これで2勝。 俺の勝ちだな。」(剣先を向ける)


デュラハン:「流石ですね。 あのイヴァンがこうも遊ばれてしまうとは。」


イヴァン:「くそっ、また負けたっ!!」


シエル:「連撃のスピードは良かったが、最後のトドメが大振りすぎる。」


サイアス:「へぇ~!」


シエル:「そん時に出来る隙は改善した方がいいぞ。弱点に成りかねない。」


イヴァン:「何か調子でねぇんだよなぁ~。」


シエル:「ま、瞬発力に関しては前より断然良くなってる。

     そう、気を落とすなって。」


イヴァン:「逆にフラストレーション溜まるっての。

      いつか必ず両手使わせてるからなっ!」


デュラハン:「でも、いい発散が出来たんじゃないですか?」


イヴァン:「まぁな!」


デュラハン:「それにしても。手加減なし、と言いながら

       お互い抑えてやっていましたよね?」


シエル:「あぁ、久し振りの手合わせで加減が分からなかったからな。」


デュラハン:「成る程。こちらとしては、

       血生臭いことに成らなくて安堵してますよ。」


シエル:「流石にお前の手を煩わすような事はしないって。」


デュラハン:「ははっ、そうですね。

       いつでもそうであって欲しいと願ってますよ。」(苦笑)


サイアス:「あれで、加減してやったのか!?」


イヴァン:「手加減しまくりだっての。 

      シエルは二戦とも殆ど動いてねぇし、

      片手片足しか使ってねぇんだから。」


サイアス:「すげぇえ!」


デュラハン:「良い経験になりましたか?」


サイアス:「なった!」


シエル:「イヴァンから話は聞いてるが、サイアスも筋は良いらしいな。」


サイアス:「そ、そうなのか?」


イヴァン:「だから、お前はっ!」


サイアス:「へっ!?」


イヴァン:「はぁ、怒る気失せちまったぜ。

      そうだな、対魔物に関しては問題はないと思う。

      冒険者(バックパッカー)名乗るくらいの腕は在ったしな。」


デュラハン:「少なくとも、旅での経験は生かされていると言うことですね。」


サイアス:「つっても・・・実践経験は殆ど無いよ。

      昔、村で槍を教わってた事はあるけど。」


シエル:「ははっ、そういうことか。

     そんで、聖槍イーリオスの持ち主だろ?」


サイアス:「あ、あぁ。」


シエル:「だとすると、今後大いに期待は持てるな。」


サイアス:「が、がんばる。」


イヴァン:「みっちり扱いてやるからな、覚悟しろよ?」


サイアス:「お手柔らかに・・・」(震え声)


シエル:「ははっ! 正式に入団したわけじゃないんだ、

     これくらい気軽で良いんじゃないか?」


デュラハン:「そうですね、こちらは手伝ってもらう側ですから。

       聖騎士団の慣わしに従わせる必要は無いと思いますが。」(微笑)


イヴァン:「ったく、分かったよ。」


シエル:「ん、俺はこれから議会がある。デュラン、後は頼んだ。」


デュラハン:「分かりました。」


シエル:「サイアス。」


サイアス:「ん?」


シエル:「何か困ったことがあったら遠慮なく言えよ。

     俺も、デュランとイヴァンも出来る限りの協力は惜しまないからな。」


サイアス:「っ! お世話になります!」


シエル:「これから色々大変だろうが、頑張れよ。」(去る)


デュラハン:「行ってらっしゃいませ。」


イヴァン:「またなぁ!」


(3人でシエルを見送る)


デュラハン:「次は・・・部屋ですね。」


サイアス:「部屋?」


デュラハン:「宿屋で生活するには何かと不便だと思いますので

       少し窮屈かもしれませんが屯所に寝床を用意させて貰いました。」


サイアス:「え、いいのか!?」


デュラハン:「勿論です。」


サイアス:「やった! ありがとう!」


イヴァン:「部屋に空きなんかあったか?」


デュラハン:「丁度私の部屋が片方空いてるので。」


イヴァン:「なるほど。 確かに不便はしなさそうだな。」


デュラハン:「団員は一つの部屋を二人で使うのが基本ですから

       サイアスさんにもそうして頂けると助かります。」


サイアス:「借りれるだけでもラッキーだし。 

      俺は気にしないよ。」


デュラハン:「それは良かった。」


サイアス:「イヴァンは?」


イヴァン:「女専用の屯所の方にいる。」


サイアス:「へぇ。」


デュラハン:「男子禁制ですから、行っちゃだめですよ。」


サイアス:「わ、分かった。」


デュラハン:「では、移動しましょうか。」


イヴァン:「んじゃ、私はこれから巡回があるから。」


デュラハン:「ご苦労様です。」


イヴァン:「夜は皆で飯でも食おうぜ。」


サイアス:「うんっ!」


デュラハン:「分かりました。」


イヴァン:「またな。」(軽く手を上げて去る)






≪移動完了後≫







(扉を開けると広い部屋が一つ)



サイアス:「おぉ・・・! 沢山本がある。」


デュラハン:「すいません、少し散らかってますが

       空いてる方を自由に使ってください。」


サイアス:「分かった!」


ヤシュム:『へぇ。 もっと凄いの想像してたけど割と殺風景だネ。』


サイアス:「あ、ヤシュム。 散歩帰りか?」


ヤシュム:『うン。』


サイアス:「いつも気付いたらいないよな。」


ヤシュム:『ネコは気紛れなのサ。』


サイアス:「気分屋の間違いだろ?」


ヤシュム:『フンっ。』


サイアス:「あ、こっから訓練所も見えるんだ。」


ヤシュム:『日当たりも良いし、昼寝するには持って来いだネ。』


デュラハン:「先程から会話をしているヤシュム、というのは精霊ですか。」


サイアス:「うん。」


ヤシュム:『この人には僕が見えてないヨ。』


サイアス:「え、見えてなかったのか。 俺、てっきり。」


デュラハン:「残念ですが。 私は女神の加護が弱いもので。」


サイアス:「そうなんだ。

      なんで加護ってある人と無い人が居るんだろうな。」


デュラハン:「聞く所によれば天地戦争が鍵になっているそうですが

       詳しいことは未だ分かっていないようです。」


サイアス:「う~ん。

      みんな同じなら絶対楽しいと思うんだけど。」


ヤシュム:『楽しい?』


サイアス:「だって、見えない人たちが見えるようになったら

      ヤシュムとデュランさんだって会話出来るだろ?

      その方が絶対良いって。」


ヤシュム:『誰構わず見られたら僕は困るけド。』


デュラハン:「しかし、・・・“みんな同じ”ですか。」(ぼそっと)


サイアス:「え?」


デュラハン:「あぁ、いえ。 

       お兄さんと同じ事を考えてらっしゃるんだな、と。」


サイアス:「兄貴と?」


ヤシュム:『血は争えないって奴だヨ。』


サイアス:「そっか。」


デュラハン:「さて、私もこの後用事があるので失礼しますね。」


サイアス:「うん、わかった!」


デュラハン:「明日からは騎士団の手伝いをして頂くつもりなので

       今日はゆっくり休んで下さい。」


サイアス:「デュランさん、ありがとう!」


デュラハン:「いえ。それでは。」


ヤシュム:『お疲レ~。』



(デュラハンを見送る)



サイアス:「なぁ、ヤシュム。」


ヤシュム:『何?』


サイアス:「騎士団の手伝いってどんな事するんだろな。」


ヤシュム:『さぁ、それは明日になってからのお楽しみでショ。』


サイアス:「そうだよな! なんか、ワクワクしてきたっ。」


ヤシュム:『フフッ、子供みたイ。』






コモラ(M):『たった一つの願い事。

        アルシャディアに生きる皆が平和で穏やかでありますように。」



サイアス:「次回『Histoire of Eternto(イストワール オブ エテルノ)』第4話 同じ天を仰ぎし者達」


ラキア:「色々な意味で楽しみにしていてくださいね。」


サイアス:「ひぃいっ!?」









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『Histoire of Eternto(イストワール オブ エテルノ)』公式HPはこちら


     https://iroha0710sakuraba.wixsite.com/hofe


【ボイスドラマ/第3話 休息の行方】


niconico:http://www.nicovideo.jp/watch/sm32122987

YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=pBQbe3gFgew&t=5s

MQube:https://mqube.net/play/20171019213047


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