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わたし。の戦う理由。
私。の戦う理由。
楽しい、というのはなんなのだろうか。
愉しい、とはなにか。
何故、人は人を傷つけるのだろうか。
何故、人は人と争うのだろうか。
答えは。なかった。
なら、それが人間なのだろう。
わたしは、そう学習した。そして実行した。
だが結果は、返ってきた反応は、恐怖と怒り。
人は、ルールに従って生きている。
人は、ルールを破って生きようとする。
無法を求める人間がいる。
自由を求める人間がいる。
秩序を求める人間がいる。
だけど、求める人間ほど、そのルールの保護下における自由を求め、本当の自由、一切の法や秩序が存在しない、無法での自由ではなかった。
人殺しは法で禁じられていてもルール違反ではないと豪語した人間に、わたしはそれを実行した。
だけど、その人間は喜ぶばかりか、自分が殺そうとした人々に助けを求めながら、自分の血の海の中に沈んだ。
格闘技で自身は強者だと豪語していた人間に、わたしは本当に強いのかと実行した。
初めの頃はすぐに応じてくれたが。やがて同意書だの契約書だのを挟むようになった。
それでなくてもルールに従った方式で強さを決めていた。
何故なのか。自分こそ最強と謳ってる割には、誰もがルールの枠組みを越える力を求めようとしてはいなかった。
そして、わたしが実行した後彼らはわたしを称えなかった。
やはり怒り。そして恐怖、もしくは困惑。歓声ではなく、悲鳴。怒号。
弱者は淘汰されるべきと、言っていたのに。
強者こそ正義だと、言っていたのに。
自分が淘汰される側に立つと思わなかったからなのか?
ならばどうして、そんなことを無責任に言い放てるのか。
何故?
無法を謳う人間ほど、法や秩序の中で保障されながら無法を求めていた。
強者を誇る人間ほど、同意とルールで確定された強さを誇っていた。
人は、自分の都合のいいルールを求める生き物で、ルールの中で生きることを求める生き物だ。
本当の自由を、本物の無法の中でなんて、生きたくはないのだと、わたしは理解した。
だからこそ分からない。
なぜルールの中で生きることに殉じないのか。
わたしは、わたし達には、
そんな人間を、愚かと言った生き物がいた。
大抵は人間とほとんど変わらない生き物だった。
なるほど、人間は愚かだからルールに守られながらルールを破ろうとするのか。
なら、
同じだ。
同じだった。
生き物も、同じくらい愚かで賢かった。人間とほとんど変わらなかった。
機械も、精神だけの存在も、神と呼ばれるものも、その眷属とされるものも。
わたし達には、同じものにしか見えなかった。
恐らく、知的生命体と呼ばれるものたちは、ほとんどこんなものなんだろう。
では、わたし達も同じなのだろうか。とわたし達の間で話に上がった。
同じくらい賢くて
同じくらい愚かで
同じくらい醜くて
同じくらい美しい
同じくらい尊くて
同じくらい卑しい
そんな生き物が、わたし達なのだろうか、と。
もう、わたしには分からない話だ。
わたしは、落伍した。
他はどうしてるのだろうか。
わたし。
でも、戦えなくなった、ということはない。
むしろ、今こそ戦える。
やはり、
どんな形であれ、戦うことこそ
それにすら実際にはルールが厳格に決められていて、遵守されていたとしても。
今のわたしは、
なら、わたしはそれに従うべきだと思う。
だから戦えるのだ。
「わたしの戦う理由が知りたい、と言ったわね」
「あなたは楽しいからと言った」
「わたしが戦う理由は…」
「わたしが、あなたたちが怪物と呼んだから」
だけどやはり、何かが違う気がする。
とりあえず、
わたしと一緒にいる人達、同じウェステッドと呼ばれる人たち。
彼らが戦う理由は何なのだろうか。
彼らは、はぐらかさず、無視せず、わたしに教えてくれるだろうか。
そしてわたしは、それを理解できるだろうか。
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