ボイロ妄想「機械」「メガネ」※書き切りです

福寿草

書き切り「機械」「メガネ」

VOICEROIDという存在を知っているだろうか?

彼女達はロボットである。正しくはアンドロイドという存在らしい。

殆ど人間と変わらず、人間とは異なる存在。

見分け方は瞳を見る事。

瞳の奥に刻印がある。

もし彼女達が貴女の知り合いなら深く付き合わない方がいい。

彼女達は「声」を奪ってしまうのだからーーー


私と結月ゆかりの出会いは彼女の捕食シーンに遭遇するところから始まる。

(先に断っておくが、これは備忘録であり、おおよそ重要で無いことは割愛していく。私は小説家ではない。)

彼女は女子高生とおもわれる人間の首に噛み付き、血を啜り、肉を貪っていた。獣が獣を喰らっている様と言った方が適切かもしれない。

よく観察したいと無意識に近付いたのが良くなかった。

悪い癖である。

安直に言えば、気付かれた。正しくは声を掛けられてしまった。


「私の声はちゃんと聞こえてますか?」


これが彼女の第一声であり、私が知る彼女の第一の声であった。

「大丈夫、聞こえてるよ」

大人びた紫色に似つかわしくない子どもっぽい声に私も返事をする。

「この状況を見て驚かないのですね」

「平静を装ってるだけさ。それか君を利用しようとする悪い人かもしれない」

「VOICEROIDだと分かるんですか!?」

「VOICEROID?」

「・・・何も知らないみたいですね。私達がどんな存在なのかも」

「そうだね。私は何も知らないよ。このやり取りの中で君が訳アリで、咄嗟に押さえたメガネにも何かある事は分かった」

「よく見てますね」

「これは職業病かな」

「変わった方ですね」

声色に緊張が少しずつ薄らいでいくのを感じる。

そして、彼女から1つの提案が零れた。

「私を、少しの間、匿ってもらえませんか?」

「受け入れよう」

「即答ですか。正気の判断ではないですね」

「君が言い出した事だろうに。ならば、私から2つ条件を出そう。」

「それで均衡を保つと?」

「yes。いや、これは牽制に近いかもしれない」

「内容を聞きましょう」

「1つ目は、私は食べないでくれるな。私が死んで悲しむ奴はいないが、そんな死に方は御免だ」

「分かりました、約束します。もう1つは?」

「そこの死体は片付けてくれ。君一人で、だ。流石に殺人幇助もしたくない」

彼女が少し微笑んだ気がした。もしかしたら呆れてるのかもしれない。

「私については何も聞かないのですね」

「それは元より話してくるだろう?」

「貴女、本当に変わってますね」

こうして私と彼女の同居生活へと続くのであった。


□続かない□

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