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「見ていてわかるんだ。今、平さんはきっと、誰かに恋をしているって」にっこりと笑って小坂くんは言った。
「どうしてそう思うの?」
「僕と映画の中で恋をしていたときは、平さんは全然、そんな感じじゃなかったから」
小坂くんはそう言って、また桜を見た。
「あのときの平さんは、すごく演技はよかったけど、でも、本当に恋をしている人の雰囲気のようなものは感じなかった」
「本当の恋じゃない?」
「うん。あれは偽物の恋だった」
結衣は考える。
「……でも、それってしょうがないことじゃない? だって、実際に偽物の恋……、なんだしさ」と結衣は言った。
「確かにそう。平さんの言う通り」
小坂くんは結衣を見る。
「でも、僕は本当の恋だった」
「え?」
小坂くんはとても真剣な表情をしていた。冗談で、そんなことを言っているような感じでは全然なかった。
「本当の恋?」
「うん。あのとき、恋坂の映画を撮影しているとき、僕はずっと平さんに恋をしていた。……そして、あれから二年経った今も、僕はこうして平さんに恋をしている」と小坂くんは言った。
結衣はなんだか、すぐに小坂くんの言っていることを理解することができなかった。
でも、だんだん、ああ、小坂くんは今、私に恋の告白をしているんだ、と言うことに気がついて、結衣の顔は真っ赤になった。
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