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「ふーん」

 それだけ言って蓬はもう結衣になにもこの状況がどうして起こったのか、その理由を尋ねることはしなかった。

 そのことに結衣は少しだけ驚いた。

 しかもそれだけではなくて、蓬は結衣がアイドルだとわかってからもアイドルの仕事についてなにも聞いてこなかったし、「じゃあ、僕はそろそろ帰るね」とか言って、結衣の元から立ち去ろうともしなかった。

 蓬はなんだか置物みたいにそこにいた。

 そんな蓬の態度が、なんだか結衣はすごく気に入った。

 実際に結衣は、それからもう一度、小瀬蓬をよく見て、これは拾いものだと思った。

「ねえ、小瀬くん。あなたこれから暇なの?」

「暇? うん、まあ別に暇だけど」

 その答えを聞いて結衣はにっこりと笑う。

「じゃあさ、これから私とデートしない?」

 結衣は言う。

「デート?」と蓬はあまり興味もなさそうな顔で言う。

「そう。デート。暇ならさ、別にいいでしょ? 付き合ってよ」結衣は言う。

 蓬は少し考える。

 結衣はじっと蓬の答えを持つ。

 それからしばらくして、蓬は結衣の顔を正面から見ると「別にいいよ」と結衣に答えた。

「よし! じゃあ決まりだね! よろしく小瀬くん」

 結衣が笑顔でそう言って、それから二人の初めてのデートが始まった。

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