226
「ふーん」
それだけ言って蓬はもう結衣になにもこの状況がどうして起こったのか、その理由を尋ねることはしなかった。
そのことに結衣は少しだけ驚いた。
しかもそれだけではなくて、蓬は結衣がアイドルだとわかってからもアイドルの仕事についてなにも聞いてこなかったし、「じゃあ、僕はそろそろ帰るね」とか言って、結衣の元から立ち去ろうともしなかった。
蓬はなんだか置物みたいにそこにいた。
そんな蓬の態度が、なんだか結衣はすごく気に入った。
実際に結衣は、それからもう一度、小瀬蓬をよく見て、これは拾いものだと思った。
「ねえ、小瀬くん。あなたこれから暇なの?」
「暇? うん、まあ別に暇だけど」
その答えを聞いて結衣はにっこりと笑う。
「じゃあさ、これから私とデートしない?」
結衣は言う。
「デート?」と蓬はあまり興味もなさそうな顔で言う。
「そう。デート。暇ならさ、別にいいでしょ? 付き合ってよ」結衣は言う。
蓬は少し考える。
結衣はじっと蓬の答えを持つ。
それからしばらくして、蓬は結衣の顔を正面から見ると「別にいいよ」と結衣に答えた。
「よし! じゃあ決まりだね! よろしく小瀬くん」
結衣が笑顔でそう言って、それから二人の初めてのデートが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます