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「律くんはね、今、東京駅にいるの。小町くんの家族のところだよ。律は時間を稼ぎに行ったんだけど、でも、新幹線の時間は遅らせることはできないから、事情を話して小町くんをこっちに残らせてもらうように、説得するって言ってた。もし、説得できれば小町くんは東京駅に残ってくれるはずだよ。まあ、そうならなくても、新幹線の時間に間に合ってみせるけどね」鈴は言う。
桜は黙っている。
「あとは桜次第だよ。ここで待っているから、なるべく早く鳥居のところまで来てね」そう言って鈴は電話を切ってしまった。
電話が終わると、桜は小森神社の本殿の前で一人ぼっちになった。
少しして「桜」と声がして、戸が開いた。
桜が振り返るとそこには桜のお父さんがいた。
「お父さん」と桜は言った。
桜は正座をしたまま泣いていた。
声もなく、ぽろぽろと涙をこぼしながら、子供のように泣いていた。
桜のお父さんは戸を閉めると、「少し話をしようか」と言って、桜の前に正座をした。桜も体の向きを変えて、お父さんと向き合った。
「事情は鈴ちゃんと律くんから聞いたよ」と桜のお父さんは言った。
桜は驚いた顔をする。
「あ、聞いたと言っても、全部じゃないよ。桜の大切な人がいなくなっちゃうから、今日、桜に時間をあげて欲しいって、お願いをされたんだ」と桜のお父さんは言った。
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