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「小森さんに自分の口から、きちんと告白をしなかったことを、僕は後悔しているんだ」と楓は言った。

 楓はフォークでチョコレートケーキの端っこを切った。桜はストロベリーショートケーキを一口分、口に運んだ。

「ずっと小森さんのことが好きだったんだ」楓は言う。

 桜は照れて、その頬を赤く染めた。

「でも、勇気がでなくて、その気持ちを伝えることができなかった。お祭りのときとか、街で偶然見かけるときとか、それくらいしか接点がなかったし、でも、それでも満足できる自分もいたんだ。

 だけど、引越しが決まって、もう小森さんに会えないと思って、なんとか気持ちを伝えようと考えて、それで手紙を書いたんだ。本当に情けないよね。いや、手紙で思いを伝えることは悪いことじゃないんだけど、僕は本当は自分の言葉で、小森さんに会って、自分の気持ちを伝えたいと思っていたのに、それができなかったんだ。それがすごく悔しかった。そのことをずっと、僕は後悔しているんだ」楓は本当に辛そうな顔をしていた。

「手紙。もらって嬉しかったよ」と桜はにっこりと笑って言った。

 すると楓は少しして「ありがとう」と桜に言った。


「夏休みが終わったら、また引越し先に帰っちゃうの?」と桜は聞いた。

「うん。こっちにいるのは、あと一週間くらいかな?」と楓は言った。

 ……一週間。

 なら、ぎりぎりお祭りには間に合うかな? そんなことを桜は思った。


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