127
「小森さんに自分の口から、きちんと告白をしなかったことを、僕は後悔しているんだ」と楓は言った。
楓はフォークでチョコレートケーキの端っこを切った。桜はストロベリーショートケーキを一口分、口に運んだ。
「ずっと小森さんのことが好きだったんだ」楓は言う。
桜は照れて、その頬を赤く染めた。
「でも、勇気がでなくて、その気持ちを伝えることができなかった。お祭りのときとか、街で偶然見かけるときとか、それくらいしか接点がなかったし、でも、それでも満足できる自分もいたんだ。
だけど、引越しが決まって、もう小森さんに会えないと思って、なんとか気持ちを伝えようと考えて、それで手紙を書いたんだ。本当に情けないよね。いや、手紙で思いを伝えることは悪いことじゃないんだけど、僕は本当は自分の言葉で、小森さんに会って、自分の気持ちを伝えたいと思っていたのに、それができなかったんだ。それがすごく悔しかった。そのことをずっと、僕は後悔しているんだ」楓は本当に辛そうな顔をしていた。
「手紙。もらって嬉しかったよ」と桜はにっこりと笑って言った。
すると楓は少しして「ありがとう」と桜に言った。
「夏休みが終わったら、また引越し先に帰っちゃうの?」と桜は聞いた。
「うん。こっちにいるのは、あと一週間くらいかな?」と楓は言った。
……一週間。
なら、ぎりぎりお祭りには間に合うかな? そんなことを桜は思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます