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 三月。中学を卒業して間もないころ、鈴は律と初めて出会った小森神社の鳥居のところで、秋山律に愛の告白をされた。

「ずっと前から好きだった。俺と付き合ってほしい」

 律の告白はシンプルなものだった。

 だけどすごく気持ちがこもっていた。

 鈴は律に告白されて、その顔を本当に真っ赤に染めた。男の人に好きだと告白されたのは人生で初めての経験だった。

 ……正直な話、すごく嬉しかった。

 でも、鈴は頭を下げて「ごめんなさい」と言って、律の告白を断った。

 池田鈴にとって、秋山律はどんなにかっこよくても、どんなにいいやつでも、あくまで律は友達だった。最高の男友達。

 鈴の返事を聞いて、「……そうか。わかった」と律は言った。

 それから鈴に手を振って律は桜吹雪の舞う坂を下りて行った。

 次にあったときには、まるで告白のことは夢であったかのように、律はいつもの律だった。


 律の告白を断った理由の一つには、小森桜のことがあった。

 桜が律に恋をしていることはわかっていたので、そのことを考えないわけでもなかった。

 でも一番の理由は、鈴本人にあった。

 高校生になった今でも、律は人を好きになるということがどういうことなのか、よくわかっていなかった。

 ……誰かを、好きになることが怖かった。

 恋をすることが怖かった。

 自分が変わってしまうことが、怖かった。

 ……ようするに、鈴は恋に対して、すごく臆病な少女だった。

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