45

「じゃあ、お祭りは一緒に行くってことでいいよね」電話の向こう側で梓が言った。

「うん。じゃあまたあとで」と言って明日香は電話を切った。

 それから明日香はベットの上に目転んで、自分の一番の親友である西山茜に電話をした。

「はい」と言って茜が電話に出ると、明日香は梓と一緒にお祭りに行くことになったから一緒に来て、と茜に言った。

「別にいいけど、私一人じゃ嫌だよ。あんたたち、どうせ途中で二人っきりになるんでしょ?」と茜は言った。

「ならないよ、全然ならない」と明日香は言う。

「じゃあ、そうだな。私は匠を誘ってもいい? それで匠が受けてくれたらそれでいいよ。四人でお祭りデートしよう」と茜は言った。

 匠か……、と明日香は一瞬思ったが、茜の提案は一番現実的だった。

「いいよ。それでお願い」

「了解」

 そこで二人は電話を切った。

 明日香はそれから勉強をして、そのあとで気分転換に絵画の画集を広げて、それを眺めた。

 その中で、一枚の絵が目に止まった。

 ハムレットの中に出てくるオフィーリアの絵だ。水辺の横になった木の幹に腰を下ろしているオフィーリアの絵。

 オフィーリア、ローズマリー、……花言葉は、ねえ、私のことを忘れないで……、だったかな? ハムレットの中にもそんなセリフがあった気がする。

 明日香は深いため息をついて画集を閉じた。

 それから勉強を続けるために、濃いコーヒーを淹れに部屋を出て、一階のキッチンまで階段を下りて移動した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る