41

「……と、いうわけなんです、木野さん」

 明日香はそのことで木野さんに相談をした。木野さんには悪いと思ったけど、ほかに相談できるような人物が明日香には思いつかなかったのだ。

「まあ、話はわかったけどなんで俺なわけ?」と木野さんは言った。

 二人はバイト前に、お店の近くにある喫茶店で待ち合わせをしていた。誘ったのは明日香で、今日は相談料としてコーヒー代も明日香持ちだった。

「そういうのって、もっと相談する人、ほかにいるでしょ? とくに梢さんは友達も多いんだしさ」

 確かに最初は親友の茜に相談しようかとも思ったけど、できなかった。茜は梓と昔から仲がよかったからだ。

 他の友達にはこういった相談はあまりしたくはなかった。

「お願いします。木野さん以外に頼れる人がいないんですよ。相談に乗ってください」明日香は木野さんに頼み込む。

「そりゃ、梢さんの頼みだから聞いてあげたいけどさ、……この間のことを考えているんだとしたら、あれは例外だよ。俺は基本、他人に無関心だし、あれは、……朝陽と梢さんの話だったから、俺は俺らしくもなく、二人にちょっかいを出したんだよ」と木野さんは言った。

 そのことは確かに明日香もわかっていた。

 でも木野さんが恋愛経験豊富なこともまた、事実だった。

 そのことを木野さんに言うと、「恋愛経験が豊富だからって、恋愛が上手いわけじゃないし、相手を傷つけないで問題を解決できるわけじゃないよ」と木野さんは言った。

「なによりも問題は梢さんの気持ちでしょ? 梢さんはその梓ってやつと付き合う気はないの? そいつ、すごくかっこいいんでしょ?」と木野さんは言った。

「ないです。全然ありません」と明日香は即答する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る