観察者

小躍り太郎

第1話視点A

よく晴れた日はあなたの笑顔を思い出します。太陽のように眩しいキラキラした光の強さで常に光り続けるあなたの、曇り一つない晴天の笑顔を見ると、私の沈んだ気持ちも晴れ渡ります。


曇りの日はあなたの真面目な顔を思い出します。


私は知っています。毎日毎日、周囲の人々に向けて笑顔を振りまくあなたが、時々、力が抜けた時に見せる真面目でクールな表情をしていることに。


その滅多に他人に見せぬ表情を見れた時私はたまらなく幸福になるのです。いつもの優しい慈愛に溢れた笑顔も素敵ですが、真面目で誠実な顔も大好きです。学校にいる間はずっとあなたを見ています。


雨の日はあなたの・・・・・・。


あなたの見たくない一面を思い出します。


雨が降るたびに私が哀しい思いをしているのをあなたはご存知でしょうか?


いっそこんな思いをするぐらいなら、雨なんてこの世から綺麗さっぱりと消し去ってしまいたいと、何度も何度も願いましたが神様は意地悪なんでしょうか。


一向に思いが届くことはありません。

しとしと降り続く雨を見るたび、嫌でもあの日の光景が甦ってきて気がふれてしまいそうになります。


あなたが悪いわけではないのに、あなたは優しいだけなのに、あなたはただあの意地の悪い女を人間的な優しさから傘に入れて差し上げただけなのに。


それなのに、それなのに、あの意地の悪い女ときたら、気味の悪いしなを作り、あなたに必要以上も近寄っていった。


その光景を目の当たりにした時私は何度、女の前に飛び出して、気味の悪い笑顔を引き裂いてしまいたい衝動に駆られたことか。


あの日の時間に巻き戻せることができるなら、私は今すぐにあの日あの時に戻り、あの意地の悪い女の顔を引き裂いているでしょう。


でも残念です。いつも世の中は残酷に時ばかり進みます。時間は巻き戻らず。雨は止まず。


あの勘違いしたキチガイ女もあなたの前から、いなくなりません。それにあの時にも戻りません。


分かっています。だって私は毎日あなたを見守っているんですから。

あなたは優しすぎるが故に悩まれているのでしょ。


あの女の存在に・・・。


大丈夫です。安心してください。あと少しの辛抱ですから。いつもの光り輝くあなたの笑顔を取り戻してあげますわ。


それまで我慢していてください。私の、私だけの大好きなあなた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る