第122話

「あ〜あ。美味しかった」


「ここ、なかなかいい店だな」


世界の食を知る、多国籍料理の好きな教授もジャルダンを気に入ってくれたよう。


「また来よう」


ナンに合う、ビーンズカレー、サプライズの2種類のタイカレーも最高の味だった。


さて、研究室の祝賀会はお開き。


オケのコンパはまだ続いている。


「恵ちゃん。このまま一緒に帰ろう」


「一緒に?」


「うん」


二人してヒソヒソ話す。


「何かから逃げるようなスリル感あるね」


「自由からの逃走」


二人して目を合わせてウキウキする。


「どうしてこんなにワクワクする?」


「幸せね」


店を出たところ、


「すでに犯人の目鼻はついている」


こずえちゃんだ、なぜ気づく?


「こずえちゃんが僕の耳を引っ張る」


「そら、耳だよ!」


相変わらず、あんぽんたんな会話が始まる。


「空耳を聞いたである。二次会でござる」


「まず、オケの一次会を締めてこないと……」


こずえちゃんが腕を組んで何か考えている。


「いいよ、オケはオケで楽しんで来なよ」


「あのさ、僕らは二次会無し、恵ちゃんと締めのお寿司三皿、コップ一杯の生ビールくらいで丁度いいんだ」


「私も、あそこのすし屋の下ネタが好きです」


「下ネタ?」


恵ちゃんの笑いが始まる。


「下ネタのこんにゃく寿司もあるですし」


恵ちゃんはお腹を抱えて笑う。

   

「分かった。どうにでもなれ、という心境だよ」


「こずえちゃんワールドに、お付き合いするよ」


「さて、お寿司屋さんはキャンセルして。蟻地獄と呼ばれる扇谷、秘密の間へと行きましょう」


「その部屋に立ち入ったが最後。よく聞く、朝まで寄り添って寝て居たカップルというライトなものから、救急車を呼んだという話まで」


「それで、何が言いたい?」


「不肖こずえ、正先輩とその部屋に身を委ねたいと……」



「はいはい。恵ちゃん、やっぱり帰ろう」


「うん。1時間くらいカラオケして帰ろうか」


「一番無難で安上がり」


こずえちゃんが僕に問いかける。


「扇谷には?」


「行かない」


「下ネタのお寿司屋さんには?」


「行かない」


「じゃあ、難しいですね……」


「巣鴨にでも向かいましょうか?」


「巣鴨?」


「化粧をしていない、巣鴨のママが見られます」


「そのギャグな誘いもダメ」


「こずえちゃ〜ん。どこ?」


店の中からこずえちゃんを探す声。


「わかりました。正先輩との楽しい時間は今度にしましょう」


「今回は、オケの飲み会に全力を尽くします」


おい、もともとがオケの飲み会だろ……。


「じゃあ、こずえちゃん。今度ね」


「はい、今度とお化けは……」


「そう、出たことないよ」


三人で笑って、僕は恵ちゃんと二人でカラオケに向かった。


そしてそのあと、下ネタへ。


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