明日の空

鍵山 カキコ

第一章

やらかした

 ──晴れは、嫌いだ。

 晴れていると明るいし、無駄に暑いし。

 人々のテンションも、何故だか高くなっている気がする。

 人間は怖い。

 平気で人を裏切るし、自分の事しか考えていない生物だと思う。

 そんな事を云う私も人間である。

 だが、人とはほとんど関わりを持たず生きている。

 関わらないといっても、ただ会話しないだけ、といった感じだが。

 どうにも、落ち着かないのである。

 自分が誰かの視界に入る事が。

 話し掛けられる事が。

 だから今、私は非常に困っている。


「き、木嶋さん! 俺と、付き合ってくれませんか?」


 下校途中にこんな事言ってくる奴、普通いるだろうか?

 いやまあ、私の普通の基準も正しいとはいえないのだが。


 それにしたって、なんなのだこの男。突然告白なんてしてきて、どんなからかい方だ。


 なんて不審に思う心を、残念ながら私は少ししか持ち合わせていなかった。

 頭が真っ白になる。

「え……あ、えっと……えー」

 動揺のあまり、上手く話せない。

 怖くて視線も合わせられないので、目が泳ぐばかりだ。ただでさえ人と喋るのは苦手だというのに。

 しかし、周りに人が居ないというのは不幸中の幸いだな。

(自分でも引くぐらい喋るの下手だなぁ!)

「無理……かな?」

「あ、その、えっと。そのぉ……無理。じゃ、ないで……す」

 なんてことだ。

 パニックで、やっと絞り出した言葉がこれだと?

(うわっ。やばい、完全に言葉間違えた‼)

 告白してきた男子が目を輝かせる。

 なんて純粋な笑顔だろう。

 どうして私なんかに、それを向けるのだろう。

「ホント!? うわっ。やったぁ! ありがとう! 本当にありがとう!」

 両手を掴まれ、ブンブンと上下に振られる。

 痛いくらいに。

(どうしよう。今更取り消せないよ、こんな顔されたら……)

「そういえば、俺の名前……多分分かんないよね、一応言っとく。戸山海斗かいとっていうんだ。よろしくね」

 彼は嬉しくてたまらないのか、少しだけにやけているみたいだ。

「は、はあ……」

 まだ、全てを理解できないでいる。

 急な事だからな。頭がパンクしそうだ。

 しかし、いくらなんでも突然すぎはしないか?


 ──というか、これから私、どうなるんだ?

 

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