第13話 疑念の一行
フィーズがラテュルたちのもとへ戻ると、案の定ラテュルが心配そうに訊いてきた。
「あの…リディルと何かありましたか…?」
「あ、あぁ大丈夫…俺の方がちょっとやるせなくなっただけだ」
「そ…そうですか…」
そんな短い会話を終えると、ちょうどリディルも戻ってきた。ラテュルは妹のもとへ駆け寄り、気を取り直すよう、次の目的地の提案をし始めた。その様子を傍から見ていたテイザーの隣に立ち、フィーズは話し始めた。
「俺のことは、少しでも納得してもらえたか?」
「…今はラテュルの言う通り様子を見るだけだ。少しでも変な動きをしたら、ただじゃおかないからな」
「おぉ、おぉ怖いねぇ。宝族の割に随分気性が激しいんだな」
やれやれと首を振るフィーズを見て、テイザーは気づいたことを不意に口にした。
「…そういうあんたも宝族のようだが…」
「ん?……あぁ…」
フィーズの髪には、宝族の証であるガラス玉の髪飾りが着けられている。"情報屋"の男が宝族の証を着けていることに、テイザーはただただ違和感にしか思わなかった。
「あんた、どこの出身だ…? どこかで会った事あるか…?」
「…それはいずれまた話すよ。ちょっといろいろあって、話すと長くなる。もう少し俺のことを納得してくれたら、リディルたちと交えて話してやってもいい」
「…ますます怪しいんだが…」
「ところでお前、歳いくつだ?」
「なんだ突然…23だが…」
「じゃあ、俺の方がお兄さんだな。俺25だもん」
「は? それだけ…」
「ひとつ忠告。宝族なら、もっと"目上"に対する対応をちゃんとした方がいいぜ。今後後悔するぞ、お前」
「本物の宝族かどうかもわからない輩に言われたくないな」
「……そっか。ならいいわ。お前が何を隠しているのかも訊こうかと思ったけど、俺も様子を見させてもらう」
「……………」
意味深長な言葉を残し、フィーズは荷物を持ち姉妹のもとへ歩いていく。その後ろから、テイザーもゆっくりと歩みを進める。四人がそろい、ミサ=ラミアを後にする。
心を閉ざしたままのリディル、体が弱いにも関わらず妹を心配するラテュル、飄々としているが未だに正体が謎めいているフィーズ。そして、婚約者の護衛と言いつつ本当の目的が見えないテイザー。互いに妙な距離感を持ったまま、旅の新たな出発となった。
四人が街を出るまでの間…教会の屋根の上。一人、その四人の様子を静かに見守っていた。そして四人が街を出たことを確認すると、その"人物"は後を追うように"光になって消えていった"。
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