第36話 賑やかな発明家
「わあぁああぁぁあ!! ごめんなさい! 遅くなりましたぁあああ!!」
「わー! わー! しーっ!」
「はっ! そうでした、ごめんなさい!」
「…マーベラ…まさかとは思うが…」
「お察しの通り…"彼女"がさっき通話していた"クラッシー"だ」
恐る恐る尋ねるアールに、マーベラは頭を抱えながら今来た人物を紹介する。当の本人はというと、肩までの髪を、寝癖なのか整えているのか、跳ねさせた髪型の、少し小柄な女性。それでいて、先ほどのような大きな声を持っているものだから、その場にいた全員、口がポカンと開いてしまっていた。
「あ、あなたがアールくんね! 噂は常々聞いてます。わたしがクラッシー・フィルベーザ。よろしくね!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。クラッシーさん」
「"クラッシー"でいいわよぉ! マーベラくんたちからも呼び捨てだったし! よそよそしい感じは無し無し! ね!」
「はぁ…」
発明家というものだから、もっと堅苦しいイメージを持っていたアールだったが、彼女の高いテンションについていくのがやっとであった。しかし、そんな空気を制し、マーベラは問う。
「んで? "アレ"はできたのか?」
「あ、そうそう! 何とか形にしてきたわー。完全なものにするためには、まだ時間が欲しいところだけど…とりあえず今日この時だけであれば、いくらか時間稼ぎはできるはずよ!」
そういいながらクラッシーが取り出したのは、掌サイズの色も何もない水晶玉のようだった。それを見て、アールは当然疑いの目で見る。
「…これでどう時間稼ぎができるんだ…?」
「まあまあ、これが本領発揮するのはこれから! えーと…エレンちゃん、だっけ? ちょっとこれ持ってもらえる?」
「えっ? 私…ですか?」
「うん、そうそう! はいっ」
「…これを持つだけでいいんですか?」
「そしたら、この玉に魔力を流すイメージで集中して…」
「待ってくれ、エレンは今…」
「だーいじょうぶ! それもちゃんとわかってるから! イメージでいいの、イメージで」
「イメージ…魔力を流す…」
クラッシーに言われた通り、エレンは水晶玉を両手で大切そうに持ち、目を瞑って集中する。すると、水晶玉がほのかに光り、中心に核ができた。
「!? 魔珠なのか!?」
「ちっちっちっ…まだまだこれからよ~。エレンちゃん、その魔珠を軽くポンッと叩いてみて!」
「え、はいっ」
更に言われた通りにエレンが玉を叩くと、核ができた時より強く光り、不思議なことに、"もう一人のエレン"に変化した。その様子に、全員が目を丸くさせた。
「!? なっ…」
「嘘…」
「お姉ちゃんが二人…!?」
「さすがだ…これなら…」
「分散して惑わすこともできる…!」
「ふっふーん。どうよ、これもわたしの自信作、"
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