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「かなわねえなあ、アディには。いい嫁さんになるぜ」


 言いながら店主は、アディの持っていた網かごにかぶをいれ、ついでにスーキーの網かごにはおまけのたまねぎを入れてくれた。


「ありがとう、おじさん。またね」


「ああ。来週にはキャベツも安くなるだろうから、また買いに来な!」


「そうするわ」


 アディもキャベツは大好物だ。


「よかったですね、お嬢様。今日は得しちゃいました」


 二人が浮かれた気分で店を後にすると、今度は雑貨屋の親父が気づいて声をかけてくる。


「よう、アディ。まだ油は足りているかい?」


「おかげさまで」


 笑顔で答えたアディに、親父はあたりをうかがうように声をひそめた。


「夏になったら値が上がりそうだから、今のうちに少し多めに用意しとくといいぜ」


「あら、そうなの? 教えてくれてありがと、おじさん。じゃあ、明日にでも買いに来るわ」


「おう、待ってるぜ」


 その後も道々声をかけてくれる街の人々に応えながら、アディはスーキーと二人で帰路についた。


 朝の市で見事な値切りをしていく二人は、すっかり名物になっている。


「今日もいい買い物ができたわね。さあ、帰りましょう。今日はいい天気だし、畑仕事がはかどるわ」


「はい!」


 その時だった。


「てめえ、誰に向かってもの言ってやがる!」


 ばしんと大きな音と共に、大きなだみ声が聞こえた。二人が振り向くと、ガラの悪いごろつきがなにやらどなっている。


「お前には、関係ないだろう!」


 威勢よく返しているのは、鮮やかな金髪にきりりとした顔つきの、一目で貴族のお坊ちゃんとわかる少年だった。どうやら思い切り殴られたらしく片頬が赤くなっているが、びくともせずにりんと背筋を伸ばして男を睨みつけている。その胸には、なぜか紙袋を両手でしっかりと抱え込んでいた。


「うるせえ! さっさとその袋をよこしな!」


「誰がお前なんかに……!」


「ああそうかい、なら腕づくで奪うまでだ!」


 もともと少年の話など聞くつもりのない男が、ぶん、と拳を振り上げた時だった。


「スーキーは、そこらへんに隠れてて」


「お嬢様!?」

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