第39話 大戦-09
次は、電磁波兵器について検討しよう。
一番ありふれたものとしてはレーザーがある。
その他には核爆発に伴うガンマ線や熱線も広義の電磁波兵器と言っていいだろう。
電子レンジで使うマイクロ波も出力さえ高ければ人体を沸騰させられる。
更に言うなら、太陽光をレンズで収束させた可視光でも殺傷能力があるのだ。
一番単純な方法は全ての電磁波エネルギーを消し去る事だが、それでは問題がある。
全ての可視光も吸収されてしまうのでバリアの外が全く見えなくなってしまう。
他には無線通信の電波も届かなくなるという問題もある。
さて、どうするか?
先程と同じく、異形の物を思い出してみよう。
少なくとも可視光レーザーはある場所を境に消失していた。
しかし、わたしからはその領域を通して向こう側は見えていたのだ。
つまり、無害な可視光まで消失させてはいなかったと言う事だ。
おそらく、閾値以上のエネルギー密度の電磁波に対して逆位相の電場と磁場を自動的に発生させて相殺しているのだろう。
そのやり方なら何とかなりそうだ。
早速、イメージングに必要な式を構築しよう。
理論上の計算式は問題なく完成したが、やはり実証しなければならないだろう。
先程の高速陽子ビームと電子ビームの装置を車に戻し、普通のビデオカメラ、紫外線カメラ、赤外線カメラ、無線通信機、放射線検出器、マイクロ波発生器、ガンマ線照射機、投光器を取り出した。
バリア内はやはり有害な電磁波はカットできているようだ。
普通なら失明してしまうレベルまで投光器の照度を上げたが、ビデオカメラも紫外線カメラも赤外線カメラもモニターに映す映像は一定以上には明るくならなかった。
マイクロ波もバリア外では金属から火花が飛んでいたがバリア内では何も起きなかった。
その一方で無線通信機はバリア内外で問題なく通信できていた。
ガンマ線もバリア内では検出限界以下であった。
そして、いよいよレーザーキャノンでのテストだ。
これは1発の出力が10^10Jなので先ほどのレールガンよりも1桁エネルギーが低い。
しかしエネルギー密度が高いので貫通力はこちらの方が遥かに高くなる。
レールガンが防壁を吹き飛ばして突入口を開く用途なのに対して、このレーザーキャノンは防壁越しに内部の人員や設備などをピンポイントで破壊するのが目的なのだろう。
結果は予想通りで、問題なく防げた。
なお、こちらからの攻撃はレーザーの起点をバリアの外側にすれば問題なく可能だ。
なにも指先や掌から発射する必要は無いのだ。
実際、異形の者は自身の周囲から同時に複数のレーザーを発射していたのだから。
さて、これで敵の攻撃を無効化するバリアは完成した。
バリアを張る順番は外側が対質量、内側が対電磁波だ。
逆にすると、榴弾を防いだとしても爆発で生じた高熱が防げなくなってしまうからだ。
まぁ、わたしの場合は、全て複合したバリア1枚で済みそうだからそういう問題はない。
これからは応用試験をしてみよう。
バリアを張りながら飛行し同時に攻撃もしてみるのだ。
そう言えば、わたしの最大魔力をまだ調べていなかったな。
無理を言って戦略兵器試験場を借りてもらったのだから調べなければなるまい。
ふむ、だいたい10^18Jくらいか、TNT火薬換算で約200メガトン級だな。
という事は、1ギガトン級までなら爆心地近くでもバリアで防げる事になる。
戦略兵器試験場の中心まで飛び、最大魔力でレーザーを1cm程度に収束し地面を撃ってみた。
「おぉ、素晴らしい!キノコ雲の付け根ではこういう挙動を示すのか!」
しかし困った事に、最大魔力を放ったが魔量は減らなかった。
正確に言えば減った分がすぐに回復してどれ位減ったのかが分からなかったのだ。
しかし、最大魔力で連射してしまうと惑星レベルで環境に影響が出そうだ。
「そうだ!外気圏まで登って外宇宙に向けて撃てば問題ないはずだ!」
景色を楽しみながらのんびりと秒速10kmで上昇し、2分程で外気圏に到着した。
魔充もまだ把握していなかったので、ついでに測定してみるつもりだ。
まず最大魔威のレーザーを最大連射速度の秒間100発のペースで5秒撃った。
しかし魔量は最大値付近のままだ。
わたしの思考速度では消費が追い付かないらしい。
なお、思考速度は実界側の事象であるから、魔法レベルには左右されない。
もっとも、現在のレベルでも過剰戦力なのは間違いないので思考速度を向上させる訓練は必要ないだろう。
さて、酸素にまだ余裕はあるがそろそろ帰ろう。
宇宙の景色は中々美しかった。
時間がある時にじっくりと堪能したいものだ。
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