狙われた僕

第66話 あれからと、こらから

僕はしばらくは学業に専念する事にした。

川崎さんに色々とわからないことを聞くことができて、試験勉強も凄く効率よく捗った。


………その甲斐有って、テストは補習もなく無事終了。

…授業も今日で終わり、明日からは夏休みだ。


最初は、夏休みはアルバイトをしようと思っていた。

でも、祖父が残した財宝のお陰で、アルバイトの必要は無くなったので、せっかくだから、夏休みは彼方の世を旅しようかと計画している。


理由は、祖父の財はちょっと一点一点が豪華すぎて現世で換金しにくいから、彼方の世で換金してそれを旅費にした方が良いと判断したんだ。


多分、宝物庫の中に残っている祖父の宝は、価値が凄すぎて現世で換金できないから残っているのだと思う。

小さな宝石の指輪みたいな、誰の家にも有るようなものは比較的換金しやすいけど、『これ、何カラットあるんだよ!?』って指輪なんか、おいそれと質屋に持っていけるわけがないよね。

宝石なんかの他に、宝剣なんかも有ったけど、あんなの持っていたら銃刀法違反で捕まってしまう。


多分祖父が換金できなかった、価値の高い物や手元に置いておけないものだけが残っているのだと思う。


多分、残っている物は、一つ売れば一生遊んで暮らせる位の価値が有る物ばかりなのだと思う。

だけど、祖父が換金出来なかったんだから、僕が換金出来るとも思えない。


こちらの世界の物は、こちらの世界に置いておくべき物なんだと思うよ。


本当はアルバイトして、自分の稼いだお金でちょっと旅もしてみたかったけど、バタバタしていてアルバイトを探せなかったというのもある。


母に話したら、

「あのお宝を野本さんに買ってもらって、あっちの世界を旅すればいいじゃない?あれはあんたが命がけで稼いだようなものじゃないの」

…と言われたと言うのもある。


まぁ、人生経験の為に旅行したいとは思ったけど、本当は国内旅行で良かったのに……。

国内旅行のつもりが、海外旅行も行ったことないのに、異世界旅行になっちゃったよ。


───母はと言うと、あれから異世界に入り浸り。

専業主婦なのを良いことに、毎日趣味の裁縫三昧。

毎日が精霊達のファッションショーだよ。

まぁ、誰にも迷惑かけてないし、構わないけどね。


龍之介さんと麻弥さんはと言うと、実は祖父の家に住むことになった。

引っ越しは来月位になるみたいだけど。


実は二人が影に取り憑かれたきっかけは、楽器の練習が出来る物件を探していて、祖父の家の近所にある家を見にきた時に、タイミング悪く捕まってしまったそうだ。


祖父の家の近くと言っても相当離れている場所だったのだけどね。


楽器の演奏をしても近所迷惑とか関係ない、山奥の物件を探していたんだって。

いつもは防音室で練習していたらしいのだけど、龍之介さんがちょっと前に出演した野外演奏会をきっかけに、開放的な所での演奏にはまってしまったんだって。


で、その話を聞いた母が祖父の家を勧めたみたい。

龍之介さんも麻弥さんも凄く喜んでいた。

だって、祖父の家はほんとに山奥の一軒家だもの。

誰も住まないと家はすぐに駄目になってしまうそうだから、母も喜んでいた。


そんな話だっだから、夏休みの間に祖父の家の探検に行こうかなと思っている。

ノマドさんが言うには、祖父が作った秘密の仕掛けがあるらしいんだ。

(ちなみに、僕がキャスパー王子って言うとノマドさんが嫌がるので、これからも僕はノマドさんと呼ぶ事になった)


祖父の家は龍之介さん達に貸すわけだから、いくら魔法の鍵束があるからって、気軽に行けるところではなくなるしね。



ノマドさんはと言うと、東の国の王子と言われてもピンと来ないらしく、昼間はお城に行って色々と動き回っているみたいだけど、夜になるとログハウスのアジトか、レンガ造りのアジトに戻って来るらしい。


家でテスト勉強をやっていた時に、ちょくちょく僕の所に精霊達が遊びに来てそんな話をしていった。

精霊には僕のやっているテスト勉強は意味が理解出来なかったらしく、毎日遊びに来ては僕の邪魔をし、それで毎日母に怒られて、ぴゅーっと彼方の世に逃げていくというのが日課となっていた。

……迷惑な日課だった。


今の悩みはお盆明けに、父が単身赴任解消で家に帰ってくるのだけど、なんて説明したらいいか……。


それから、ノマドさんの父である永久王を探す旅のプランと、まだ解決していない謎『アリス』と鍵束の星印の謎に、抜けた数字の謎、更には魔女の復活の事……。


うーん、よく考えたら、父のことなんか悩みの内にも入らない位の悩み事を抱えてるかも。



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