第38話 謎の先
「なんかスッキリした!前からあの鍵のマークは疑問だったんだよね。」
僕は少し前から気になっていた鍵のなぞが解けたので、テンションがかなり上がっていた。
「亀と鳥は分かりやすい図柄だったけど、虎と龍は分かりにくかったよ! 虎の絵はライオン と言われればライオンに見えちゃう絵柄だったし、龍に関しては空想上の生き物だもの!」
「それについては…こちらでは龍は実在する生物でございます。下等な知恵を持たない種類もおりますが、長く生きて知恵を持った種の者も大く存在します」
「そうなんだ!見てみたいな!」
「それは私はあまりお勧めしません」
ノマドさんが神妙な面持ちで僕に話した。
「多くの知恵を持たない者は度々人を襲うような、人に害を与える種の者でございます。それに対して知恵を持った者はどうかと言うと、基本的には、多くの知恵のある龍は人など相手にはしません。向こうにしてみれば、人など蟻のようなものなのです。鼻息一つで人を吹き飛ばし、寝返り一つで人など押し潰してしまう……そんな力を持っています。しかも彼らにしてみれば人など蟻のようなもの。押し潰しても気にもしないでしょう。……龍とはそんな存在でございます」
「そうなんだ、ちょっと興味本位で近づいちゃいけないものみたいだね。よく考えたら、大型の野性動物、熊とかライオンとか…動物園以外じゃ会いたくないよなぁ。龍もきっとそんな感じたね。旅先で出会わないことを祈るよ」
…龍かぁ、想像もつかないなぁ。
「それでは私はこれから地図の仕上げをして参ります。輝様のお陰で、明日には完成させることが出来るでしょう」
ノマドさんはお辞儀をすると別室に移動していった。
僕の旅はノマドさんの地図待ちだし、母は精霊達の服作りのために鶴の恩返し状態だし、龍之介さんと麻弥さんは落ち着いているとはいえ、面会に行く事は負担もかけるし、暇だからって気軽に顔を出すべきじゃないと思った。
「さて、暇になったな…」
よく考えてみたら、最近はこんなゆっくりする事なかったな。
いつもここから何かしらやることがあったかもしれない。
「とりあえず外に出てみるか…」
僕は外の空気を吸いにログハウスのアジトから外に出た。
アジトの周囲はノマドさんの畑や小さな小川があり、その周りを囲うように森が広がっている。
背の高い木々のせいで周囲はわからないが、このログハウスは人里からはかなり離れていると、以前ノマドさんは僕にそう教えてくれた。
森を切り開いた名残なのか、椅子にちょうどいい切り株があったので腰を下ろした。
頭上には青空がひろがる。
鳥のさえずりが聞こえ、のどかな山小屋での休日…という雰囲気ではあった。
ただ、この森のなかにも危険な動物や魔物が潜んでいるらしい。
特に夜間は絶対に一人で立ち入るなとノマドさんには釘を刺されている。
「鍵のマークの謎は解けたけど、まだ数字の入った鍵の番号が飛んでいることについては解けていないな…」
数字の入った鍵は祖父が追加した鍵だと言っていたっけ…。
そこに違和感があった。
─────なんだろう、この変な感覚。
それに対して、ふと思うことがあった。
……じゃあ、四神のマークの鍵は誰が?
四神の鍵の方角の基準になっている『星の鍵のレンガのアジト』は、祖父の家と繋いでいたから、そこを基準に祖父がマークを入れた……というなら違和感を感じないが、ノマドさんは四神の鍵は祖父が追加した鍵ではないと言っていた。
……祖父ではない誰かが鍵束に追加した鍵。
全ての四神の鍵は祖父のアジトを示す星の鍵を基準に方角が揃っている。
あの星の鍵、もしくは星の鍵のアジトには何かまだ謎が含まれているのかもしれない…。
だから何か理由があって祖父も自宅を常にあのアジトに繋いでいたのではないのか─────
謎が一つ解けたと思ったが、また謎が深まってしまった。
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