第36話 持ち物はリュックに入れて。

─────放課後。


「食料、水、食器、テント、寝袋、ヘッドライト、ナイフ、ロープ、コンパス、ホイッスル、時計、ブーツ、雨具、軍手、防水マッチ、ビニール袋、あとは薬や包帯なんか…かな?余裕があるなら着替えやタオル、手持ちの懐中電灯とか…かな?」

紙に書いたメモを読む川崎さん。


「大半はボーイスカウトの装備を参考にしたよっ」

屈託なく笑う川崎さん。


そっか、ボーイスカウトか。

その発想はなかったな…

でも装備多いな…覚えられないっ。


「川崎さん、ちょっとお願いが…」


「え?今度はなに?」

小首を傾げる川崎さん。


「今のメモちょっと写させて!」


「ぷっ、なんだ、そんなことか。こんなメモなら海原君にあげるよ」


「ありがとう、恩に着ます!」

「大袈裟な~。でも、海原君…まぁ、いいか」


色々察してくれてるのがひしひしと伝わってくる。

でも、流石に彼方の世の話はちょっと奇想天外過ぎて話しても笑われるだけだろうしな…。


なんだろう、この既視感デジャヴ……。


……まぁ、いいか。

話を変えよう。


「あれから風力発電の件はどう?」

この間の理科室での話、実際興味深い話だったから、また聞きたいと思った。


「全然うまく行ってないの!」

興奮しながらの発言だったが、凄く嬉しそうだ。


「色々検討していく内に、高効率の方向性を『風車から離れ、全方位の風を利用出来る羽』に修正したんだけど、色々調べていく内に、もう既にそのコンセプトで商品化までされてるのがあることがわかったの!」


「凄い!負けた~って思っちゃった。でも悔しいから、もう少しそれを越えるものが造れないか足掻いてみようかなって」


難しいからチャレンジする感覚なのかな?

多分こう言うのが川崎さんの原動力なんだとおもう。


…見習わなきゃ。


「川崎さんはこれから部活?」

「うん、一応。海原君は?」

「僕は帰宅部だからアウトドアショップ寄って帰ろうかな」

「もしかして、私のリストの物を買うの?……念のため聞くけど、お家の人に内緒で家出とかじゃないよね?」


…もしかして、家出を計画していると思ってたのかな?

「違うよ、家出とかじゃなくて、もうすぐ夏休みでしょ?一人旅計画してて。もちろん親には言ってあるよ」

…というより、うちの母親の提案みたいなもんだけどね。


「そっかー。ちょっと安心したよ」

にっこり笑う川崎さん。

心配してくれてたのかな。


「それじゃ部活頑張って!」

「海原君も!じゃまた明日!」


その後僕はアウトドアショップとホームセンターとスーパーをハシゴして帰宅した。


買ったものを並べてみる。

テントと寝袋は毎日家に帰ってくるつもりだったから購入するかどうか迷ったが、テントは値段が高いから今回は思い止まったが、寝袋はコンパクトな物が激安だった為、ほとんど衝動買い状態で買ってしまった。

お年玉が……。


…でも、今のキャンプ用品とか、一人用に特化したものなんかは凄く小さかったり軽かったりして驚いた。


───男子はこういうのに弱いんだよ。

そう思いながら、リュックに購入したものを詰めていく。

そんなに大きなリュックじゃないけど、全部入れてもまだ余裕がある。


…今の道具って凄いね。


よし、それじゃあ、いざ彼方の世へ!












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る