いつか晴れた日に
准
エピローグ
長い受刑生活だった。
暑くても、寒くても、ひたすら我慢の毎日だった。
苦しくて、苦しくて自殺を図った事もあった。
でも、ひたすら耐えた…
梨花に逢いたい。
それがすべてだった。
刑務官に見送られ、まるでドラマのように
「純正、二度と戻ってくるなよ」と言われた。
「誰が戻るもんですか…こんな地獄」
本当に6年間は長かった…
早く、梨花に会いたいなと思っていた。
抱きしめて、謝りたいと…
ただそれだけを考えていた。
6年間、辛い地獄のような生活だった。
殴られた日もあった、集団でリンチされたり、トイレを手で洗わされた日もあった。
食事すら、食べさせてもらえない日もあった…
立ったまま寝かせられた日もあった…
全てが過去になる。この日から幸せだったあの夏に、戻れる。
でも、挫けずに生活できたのは、梨花が最後に言った
「早く帰ってきて…私、ずっと、待ってるから」
「メルアドも変えないから、必ず連絡して、お願いだからね…」
そう、6年前の8月、警察の留置所に面会に来てくれた時に梨花が言ってくれた
その言葉に支えられ、今日まで、何とか生きてきた。
門を出ると、そこには、今まで、見ていて、見ていない世界があった。
目の前を沢山の車が、走っている。
すごく不思議で夢でも観ているようで、
ボクは動くことすら、できなかった。
「あーこれが普通の世界か…」
思わず口に出していた。
側を通っていく、サラリーマンらしき人が
不思議な顔でボクを見ている。
携帯電話すらない、誰にも連絡できない。
お金は6年間、刑務所で働いただけの僅か30万円しかない。
「さて、何処へいこうか…」
どうして良いのかすら、全くわからない。
ただ、6年ぶりにようやく訪れた普通の生活に、
感謝した。
神様、ありがとうございます。
ボクはまだ生きています。
梨花、会いに行くから…
ゆっくりと、一歩一歩、噛み締めるように
頬をつたう涙をそっと拭きながら、
新しい人生を歩き始めた。
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