騎士団との楽しいお遊び



「「チュンチュンチュンチュンチュン」」


俺の両耳へぞくぞくっと囁かれる変態信者の目覚まし。

最近のこの子達の行動力は目まぐるしい。敵意が無いから気配を察知するのも困難だ。


「おはよう。」


「「お姉様、おはようございます!」」


「おはようございます、アリス様。」


「うおっ!?」


しれっと近くで待機していたロコルお姉ちゃん。

お姉ちゃんは変わらずお姉ちゃんだと思いたい。思っていいよね?

一抹の不安が拭いきれない。


寝間着からローブに着替えて朝食へ。


王族組とフォルクスさん、ディーナさんはすでに到着済みで簡単な挨拶をして席につく。

他愛もない話を挟みつつ朝食が終わったら早速セイル様が俺の元へやって来た。


「腹ごしらえも終えた事ですし早速行っちゃいますか?」


王子様なのに口調を砕いてくれて助かる。


「はい、楽しみにしておりました。是非行きましょう。」


待ちに待った他国の騎士達との戯れ。

楽しみにし過ぎてつい笑みが溢れてしまう。


ところで、お姉ちゃん達はどうするんだろう?


「スゥ様達はこの後お茶会?」


「はい、トワレ様達とディーナ様、そしてこの三人でゆっくりと過ごそうと思いますわ。」


「そっか、そっちに参加出来なくてごめんね。」


「いえいえ、お姉様はお姉様の望むがままに動けばいいのです。」


フンと鼻息一つ。

スゥ様の後ろで二人もこくこくと頭を縦に振る。


「うん…じゃあ、お互い楽しく過ごしましょうね。」


「はい!お姉様の勇姿しかとこの目に焼き付けます。」


うん…………ん?

なんか疑問に残る台詞を残してスゥ様達はディーナさん達のところへ駆けて行った。


「では、お嬢様僕らも行きましょうか。」


悪戯っ子な笑みで紳士な立ち振る舞いを見せるセイル様。

恭しく差し出されたその手に苦笑しつつ手を乗っける。


セイル様とは気が合いそう。





そして、セイル様に手を引かれつつ案内された場所は闘技場のようにちゃんと観覧席も備わった訓練場。

騎士達の怒声のような猛り声や金属と金属が打ち付け合う音が心地よい。


「全員止め!整列せよ!」


甘い顔から発せられたとは思えない威圧のある声を出すセイル様。

思わず目を丸くしてしまう。


その俺を悪戯成功みたいな顔で笑ってくる。むーっと頬を膨らませてそっぽを向いてやる。


俺がちょっと不貞腐れている間に鍛錬していた騎士達が全員集合した。

一切の乱れのない整列。


それだけでもこの人達の実力が窺える。

綺麗な整列の中から一人だけ大男が抜け出してセイル様に近寄ってくる。

ガルム団長並みの体格だ。

この人がおそらく騎士達をまとめる隊長だろう。


「ゴーゼフ鍛錬中済まない。今日はお前達に素敵なお客様を紹介しに来たんだ。」


「隊長、こちらの可愛らしいお嬢さんが素敵なお客様?」


「あぁそうだ。なんとあの噂のシェアローズ王国の聖女様だ!!」


「「「!!!!?!?」」」


皆が何故か驚く。

俺は別の事で驚いている。


このゴーゼフっておっちゃんはセイル様の事を隊長って言ってた。

つまりは…。


「あの、セイル様ってもしかして騎士団の隊長ですか?」


「ふふ、そうですよ。驚きました?」


また悪戯成功って顔をする。

はい、めちゃくちゃ驚きました。

目を大きく開いて口をポカーンと開けましたよ。


訂正この人嫌い。

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