恐怖はいつも隣に あなざー
アルフから貰った姫様意識落とし権。
俺はそれを使う絶好の機会を迎えていた。
ちゃんと寝る前に忠告したにも関わらずこのお姫様は。
全く反省の色無しで寝込みを襲って来た。手口は慎重かつ丁寧。年下の少女のやる可愛らしいものじゃない。そこらの暴漢よりタチ悪い。
何度かお泊まり会で一緒に寝たけれど何も起きる事は無かった。目が覚ませば隣でよく自分を縄で縛って動けなくしたスゥ様を見掛けたことはあるけどさ。
妹のような存在で慕ってくれるのは心から嬉しい。でも、感染が深刻化しているのか偶に度の過ぎた愛情表現を爆発させてくる。
俺を見つめるその瞳は本当にただのお姉様ってだけで見ているのか疑わしく思う時がある。
そして今、物音立てず鼻息と呼吸音以外は静かに忍び込んで来た。ただ一緒に寝たいってだけなら別に許すけど、なんだか今日は特に身の危険を感じる。
いつもより何割か増した鼻息が不安を駆り立てた。
昼間みたいに俺の唇を奪う気か?
ちょっと警戒をするがそれは杞憂みたい。
俺の下の方へと向かった。
なぜだ?
鼻息が肌に触れてもぞもぞしてしまう。
それと本人は無意識っぽいけどボソボソと呟いている。お姉様の生足…俺の足がなんだってんだ。
少しずつまた上へと上昇して来た。
俺の胸の辺りで停止したかと思えばまた呟き始めた。お姉様の絶壁…ここでこのお姫様の意識を落とすことは決定した。
絶壁じゃないちょっとは………………絶壁じゃない!
満喫したのかようやく俺の顔まで帰ってきた。
では、お迎えいたしましょう。
呆れた目で見つめてやると、微かに動揺で瞳が揺れていた。幾ら気配を消せてもあれだけ無意識に鼻息や呼吸を荒くしてたらバレるよ。
寝惚けただ夢遊病だとか色々と言い訳をしてくるスゥ様。
もう仕方がない子と小さく溜息を吐いて、優しく抱きしめる。腕が首へとまわるように。
「お、お姉様、ついに私を受け入れて下さるのですね!あぁ、幸せです、ついに一つになれるなんて…。子供は百人作りまくひぃん!?」
「スゥ様、貴方病気よ。」
俺は何かのたまう姫様を抵抗出来ないよう全身で抱き締め、ついでとばかりに腕で首を絞めていく。
「お、お姉様、そんな乱暴に…。私初めてですよ。あぁ、でもそれがいい。いや、それでいい!」
もう嫌だこの子なんか怖い。
どうか彼女の心に巣食う病が無くなるよう心から冥福を祈りつつ、気絶を促していく。
「お姉様ったら……はぁ、強引なんですから……ぶくぶくぶく。」
ようやく変態は夢の中へと帰ってくれた。
一国のお姫様なのに白目で口から泡を吹いて眠ってる。
そっとお姫様だっこして彼女の本来の寝床まで戻して優しく縄で固定しておく。
油断はしません朝までは。
しっかりと固定を終えたらもう寝よう。
まだまだお外は真っ暗だ。
それでは皆さんお休みなさい。
次の日の目覚ましの合図はシーナさんの悲鳴だったのは言うまでもない。
そりゃあ、お仕えするお姫様が簀巻き状態で意識を失ってたら驚くよね。
でも、ちゃんと説明したら納得してくれた。納得するんだ。
まぁ何処か満足そうに白目を剥かせ気絶する姫様を見たらどうでも良くなるか。
この後、一応アルフにも昨夜の出来事を伝えたら頭を抱えて新たな権利を貰いました。
『就寝時限定!鉄の鎖で妹を縛り付ける権』
俺は有り難く今夜も権利を行使しました。
お陰で今夜からはぐっすり寝れそうです。
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