今日も今日とて
俺の治療活動が始まってもう1週間以上になる。
三日に一度とはいえ毎回重病人はいる。
時にはどこかの商会の一人娘さんの病気を治したり、時には大怪我を負った冒険者を治したりとあちこち動き回っている。
このままだと俺が聖女ってバレるのも時間の問題だな。
別に良いけど、あの司教がどう突っかかってくるか気になるとこだな。
現在、午前中の治療を終え、お気に入りの屋台で串肉を買って大広場で小休止。
ロコルお姉ちゃんとこの後の予定を話し合う。
でも、多分治療をすると思う。
こうやって食事中や談笑中はロコルお姉ちゃんしかいないけど、いざ次何するかって時には何処からともなく誰かが現れる。
まあ俺が治療した人の中の誰かなんだけどね。
そしてまた新しい患者の情報を教えてくれる。
その情報を元に治療に行くという方式が成り立っている。
それに付き合わせているロコルお姉ちゃんには少し申し訳ない。
気にしてないですよって言ってくれるけど、常に周りを注意しながら人を守るというのは精神への負担はかなり大きいはず。
本当にごめんね。
「おおいた!ノートン見つけたぞ!」
広場に響き渡る声。
うるさいなと思い、声の主を見る。
それぞれ金髪と茶髪の青年2人組。
なんかバッチリ目が合うんですけど。
なんかこっちに近づいてくるんですけど。
徐々にこちらにやって来る2人組に対して、ロコルお姉ちゃんは俺の前に陣取り構える。
いつもオロオロ気味のロコルお姉ちゃんだけどこういう時はかっこいい。
「貴方達、止まりなさい。それ以上近づくなら容赦しません。」
拳を突き出し、2人を制止させる。
「ま、待て!俺たちはその後ろにいる少女にお礼を言いたいんだ。」
「お礼?」
俺はロコルお姉ちゃんの後ろからひょこっと顔を出して聞き返す。
俺と目が合った金髪の青年が少し息を呑んだのちにさっと目をそらす。
あれ、俺変な顔してたかな?
いきなり視線を逸らされる顔って‥。
ちょっと落ち込んだよ。
「そ、そうだ。君にお礼を言いたかったんだ。以前、ここで倒れて苦しんでいたところを救われた。」
未だに視線を逸らされて傷つくもののじっとその横顔を見つめ頑張って思い出す。
あぁ、あの時の訳ありそうな2人組かぁ。
確か2人で仲良く抱き合ってたからそのまま放置して帰ったんだっけ。
「どうやら思い出されたようですね。」
茶髪の方はあの時と違って礼儀正しくなっている。
「ええ、思い出しました。お元気になられたようで良かったです。」
「あ、あぁ貴方のお陰で俺はこうしてまだ生きていられる。ありがとう。」
金髪の方が今度はしっかりと俺を見て頭を下げる。
それに続くように茶髪も頭を下げる。
「それはどういたしまして。また怪我や病気にかかったらおっしゃって下さいね。いつでも誰でも治しますから、では。」
俺はそう言って立ち去ろうとしたけど、金髪が引き留めてくる。
「ちょっと待ってほしい。是非、何かお礼をしたいんだ!」
「いえ、私はただ治したいだけで、お礼を貰いたいために行なっている訳ではございませんから。」
「いや、しかしそれでは俺の気が済まない。」
「いえいえ、気にしないでいいですよ。」
「し、しかし‥」
なおもお礼の押し売りをして来ようとする金髪。
ちょっとロコルお姉ちゃんがそろそろ止めようと首を鳴らし始めてるから。
そんな状況を数人の男達が打ち破る。
「おい、お前。お前が今巷で噂されているどんな怪我や病気も治すっていう女か?」
と、ロコルお姉ちゃんに話しかけている。
はい、違いますよー
「いえ、それは多分私のことですね。」
「そうか、お前か。ちょっと付いて来い。」
俺を掴もうと手を伸ばしてくるけど、それを阻む2人の壁。
1人は毎度お馴染みロコルお姉ちゃん。
そして、もう1人は金髪。案外良い動きをしている。
茶髪はいつでも金髪を守れる位置に動いてる。
「なんだてめぇら?邪魔をすんじゃねぇ」
「私はこの御方の護衛です。それ以上踏み込めばその腕吹き飛びますよ。」
最近のロコルお姉ちゃんは少し過激派。
普段の性格との落差がすごい。
「な、なんだと、ブッ飛ばされてぇのか?あぁん?」
男どもがじりじりと周りを囲み始める。
俺以外の人達の闘気がどんどん高まっている。
はぁー、なんか次々と面倒そうな事が迷い込んでくるなぁ。
俺はトラブルほいほいか?
そして、唐突に戦闘の火蓋が切って落とされた。
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