後半戦

 ~~子猫を拾ったよ~~後半


  ネコ様グッズを買い込んで帰宅の路。まゆは大変ご機嫌で鼻歌なんて歌ってる。ヴィヴァルディの四季より「冬」だった。こんなご機嫌なまゆを初めて見たことに気がついて自分がなんとなく情けない人間に思えて、目をそらしてしまった。


「決めた!」

 まゆが俺の方へと元気に振り返った。

「なにを?」

「ネコの名前! アイリスって名前にする」

「その心は?」

「花言葉で『あなたを大切にします』って意味なの」

 おしゃれな名前だなぁ。花言葉から名前をつけるってセンスいいな。

 まゆがそわそわしてる。きっと早く帰ってネコみたいんだろう。


「ただいまー」

 まゆは元気に、俺は無言。ぱたぱたとスリッパの足音が聞こえ美姫が迎えにやってきた。

「おかえり」

 出かける前より不機嫌な感じだ。美姫って一回不機嫌になると長いんだよなぁ。

「ネコが粗相した」

 なるほど。それで絶対零度なのか。かなり怖いわ。

「アイリスー」

 そんな美姫の不機嫌をわかって無視してるのか、わかってないのか俺には判断がつかないが、まゆはリビングに駆け足で横をするっと抜けていった。

「アイリス?」

「ネコの名前なんだとさ」

「それ絶対に手放さなくなるじゃない」

「まぁそれでまゆの傷が良くなるなら俺は大歓迎だ」

「また甘やかして!」

 俺も怖くなったので自室にリターン。


 ここで大事なことをすっかり忘れていた。

 なにがって?

 俺の部屋に彼女がいることを、だ。


 ドアを開けてすぐ閉めた。

 なんでかって?

 俺のベッドにキャミソール1枚で寝てるみうがいたからだ。

 これ、詰んでない?

 てかセクハラ案件のほとんどがみうに集中してるのはなぜなのか。


 リビングに慌てて戻り

「美姫。みうのこと起こして!」


 このあと、また美姫の機嫌を損ねたのは語るまでもないだろう。


 まゆ? アイリスと戯れてたよ。輝かしい笑顔で、ね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る