第55話

 五か月も遅れてしまい本当に申し訳ありません!

 理由等は下記のURLに乗せときますので、目を通してもらえると助かります!

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 これからも引き続き『大魔法師の息子』よろしくお願いします!


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 アリアの来襲により際立った休日を過ごしてから数日。中間試験期間も過ぎ去り、学生たちの間に緩やかな空気が流れる中、祢音は少し疲れた様子で学園に登校した。その理由はあまり語らずともわかることだろう。


 簡単に言えば、少しの間同居することになった義母のせいである。


 久々にアリアと一緒に入れたり、鍛錬ができるのは嬉しいのだが、それ以上の負担を日常で強いられるのは如何ともしがたい代償であった。


 そんなこんなで、試験期間後初の朝のホームルーム。


 祢音が席に着いてからしばらくして予鈴が鳴り、いつも通り気だるげな様子で入室してきた兵吾は1つ大きな欠伸を噛み殺しながら、一週間の連絡事項を話しだした。


「ふぁ……えー、テスト期間も終わったことだがすぐに先月に止まっていた役員試験の続きが行われる。このクラスからは暗条が風紀委員会の本選に出場が決定しているので、クラスメイトとして応援してやるように。じゃあ、これでホームルームは終わりな」


 一束に全ての要件を伝え終えると、兵吾はさっさと教室を後にする。一ヶ月ほどした今ではV組の生徒達は慣れた様子でもう兵吾の態度ややる気に文句は無く、あれはそういう人なんだと納得を見せていた。


 兵吾が立ち去った後、クラスメイト達は思い思いの様子で過ごす。

 中でも冥の席の周りには少なくない人が集まり、応援の言葉を送っていた。


 襲撃事件以降どこか雰囲気が和らいだ様子の冥はクラスメイト達からよく話しかけられるようになった。それだけでなく、中間試験が終わり、後日に迫るのは学園襲撃事件の際に延期していた風紀委員会の役員選抜試験の決勝戦に外部生の中から唯一出ている冥は多くの者達から注目の的になっていた。


 険の取れた美人で将来有望とくれば、当然好かれないはずがない。中には多少嫉妬する者もいるが、以前とのギャップもあるせいか、それもわずかしかいない。


 あまり見ることがない困り顔を浮かべる冥。

 

 祢音はそんな横で対応に四苦八苦した様子の彼女を眺めながら、授業の開始を待った。




 ◇



 

「ねぇ、助けてくれてもよかったんじゃないかしら?」

 

 それは実習講義でのこと。

 

 祢音は冥の苛烈な攻撃を捌きながら、愚痴を聞かされていた。


「助けてくれって言われても、さすがに俺がどう言おうがあの集団をどうにかできたとは思えないんだが……」

「それでも、少しは手を貸してくれてもよかったじゃない」

 

 冥が不貞腐れたような表情を作る。


 どうやら彼女はホームルームの時から始まった自分へのクラスメイト達の接し方の対処に疲れた様子であった。元々口数は多くなく、さらには二年間は人との関わりをほぼ断っていたような生活を送っていたためか、若干コミュ障を患っている冥。襲撃事件以降、柔らかくなったからと言ってそう言ったスキルがすぐに元通りになるはずもなく、思った以上に苦労したようだ。


「みんなが暗条を応援してるんだぞ?いいことじゃねぇか」

「……別にそれが嫌って訳じゃないのよ。こんな不愛想な私を応援してくれるのは有難いと思ってるわ」

「じゃあ、そもそも何がそんなに嫌そうなんだよ?」

「分からないのかしら?」


 機嫌が悪そうに祢音を睨む冥。その放つ一撃一撃が鋭く、重く変化する。


 その変化に小さく眉を寄せた祢音は戸惑うような言葉を投げた。


「むっ?……残念ながら心当たりがないな」

「――今日一日ずっと向けてくるその微笑まし気なものを見つめるような目よ!ハァァ!!」


 今までの攻防の中でも、特に強力な振り下ろしが祢音に迫る。


 祢音はそれを躱しざまに言葉を紡いだ。


「微笑まし気な目って……俺は暗条にそんな目を送ってたか?」

「ええ、そうよ!全く……それを他人から指摘されたときはすごく恥ずかしかったんだから!」

「いやぁ、俺はただ暗条の成長を見れたようで嬉しかっただけなんだけどなぁ」

「成長が見れて嬉しいって……なんで無道君が私の親気取りなのよッ!?」


 祢音の態度に照れるような、むかつくような感情を抱きながら、冥の攻撃はさらに力強さが増していく。

 ただ、学年でも上位に入る実力を持つ冥の連撃を受けていても、まったく攻撃が入る気がしない空気があるのはさすが祢音といったところか。


「もしかして俺の視線は不快だったのか?だから怒ってるのか?」

「ふ、不快って程でもないけど……っていうより別に怒ってないわ!」

「いや、めちゃくちゃ怒ってるじゃん……」

「怒ってないって言ってるでしょ!」


 なぜか頑なに自分の怒りを認めようとしない冥だが、それとは裏腹に手にもつ黒睡蓮からの攻撃は余計に苛烈さを増すばかりである。事実、冥自身にも自分の中にあるもやもやの感情が何かも分からず、戸惑っていたのだ。


 祢音は困った様子で冥の攻撃を流し、躱し、思考する。


 ふと、昔にアリアから教わった『怒った女の子への対処法』を思い出した。


(なんだっけか……確か、とりあえず褒めろとかだっけ?ほかには確か、言うことを聞いてあげるのも手だとか言ってたっけ?)

 

 なんとも大雑把で適当な内容であり、本当にそれでいいのかと言いたくなるような教えだが、祢音はアリアの教えを何よりも大事にする男だ。疑いもなく、小さな時からそれを信じてきた。

 実際はただアリアが祢音にして欲しかったからという願望で教えただけのことだが、それは言わぬが花だろう。


 顔を真っ赤に染めて怒る冥に視線を転じて、祢音は思案する。


 見たところ今の状況で褒めるのは直感的にも何かダメな気がした。

 だとするならば、次案である『言うことを聞く』と言う策を使うことにする。


 冥の振り下ろしに対処するように、アノリエーレンを掲げて受け止め、鍔迫り合いに持ち込む。


「悪かった、暗条。まさかお前がそんなに怒っているとは思わなかった」

「だ、だからッ……!」

「侘びと言っては何だが、できるだけお前の言うことを聞こう」

「うえっ!?」

「何をしてほしい?確か俺はお前の兄に似ているんだったよな?またおんぶしようか?それとも今度はだっこか?」

「……そ、そ、そういうところが嫌なのよッッッ!!!」


 何故かもっと怒らせる羽目になった。



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