第19話 作成99
「待て、待てだよ。まだダメだからね」
「ヴヴゥー……」
俺は床にドラグノール用の皿を2枚置いた。
「よし!」
「ワウッ!」
ドラグノールは勢いよく走りだした。
向かった先は右にある皿だった。
「なんだ、お肉よりりんごのほうが好きなんだ」
右の皿にはリンゴがのっている。
何をしていたかと言うと、ドラグノールの好物について調べていた。
この前、狩りをしていたかと思うとりんごを食べていたからね。
もしかしてリリスが住んでいる木のりんごが好きなのかと思ったけど違った。
このりんごはお父さんに頼んで仕入れてもらったりんごだ。
どうやらりんごが一番みたい。
「アンディー、何しているのー?」
「エイミー、ドラグノールの好物について調べていたんだ」
今の時刻は12時を過ぎている。
午前中は各自で勉強をしているから無事に終わったんだろう。
お姉ちゃんがいないっていう事はまだ終わっていないのかな?
まあ、エイミーは甘やかされて量が少ないから早く終わったんだろうけど。
ちなみにだが、僕は日に日に増えてきている。
1ヵ月前の2倍まではいかないものの、1.5倍以上まで増えている。
まだ小学生の内容なのが助かっているところだけど。
「あれ?りんごばっかり食べている」
「そうなんだ。お肉より、りんごが好きみたい」
それにしても意外だった。
見た目はもう『お肉命』と言わんばかりの大きさなんだからね。
と言っても最初からりんごだけだとここまで大きくならなかったろうけど。
「あっ、次は肉を食べ始めたよ」
「メインとデザートが逆だな……」
ドラグノールはりんごを食べ終わると嬉しそうにお肉を食べ始めた。
なんだかんだお肉も捨てがたいのか。
「そうだ。いっそ二つを合わせてあげたら喜ぶんじゃないのか?」
「そんなことできるの?」
「出来るかは分からないけど試してみようかなって」
もちろんスキルでだけど。
問題は、ドラグノールは生肉のほうが好きなことだ。
調理をするなら料理中にりんごと一緒に焼いたらいいんだけど。
でも生肉なら別の方法になる。
「まあ探してみるか。スキルオープン」
今更だけど、りんごを絞ったものを生肉にかければよかったんじゃないか?
ここまで来たなら他の方法を探すけど。
さて、どれがいいかな。
移動魔法、なんてどうだ?
りんごを生肉の中に…ないな。
そんなことするぐらいなら別々で食べた方がいいし。
他には…うーん。
あっ!生肉にりんご自体を入れるんじゃなくて、りんごを絞ったのを入れるのはどうだ?
それなら注入があればいいんだけど……。
むぅ、見当たらないな。
探し方が悪かったのかな?
直接やるのではなく、注射器を使えばよさそうだな。
でも注射器はこの家にはない。
無いならつくればいいんだ!
となるとあって嬉しいもの……。
あった!作成があった!
なんかバッサリしているけどこれで大丈夫だろう。
作成を99にまで上げてっと。
「おっ!」
「どうしたの?」
「いや、つくりたいものが頭の中で浮かび上がったから」
「?」
すげぇ!
『これをつくりたい!』って思ったら構図が頭の中で思い浮かぶ!
なにこれ、すごすぎる……。
でも材料はあるかな?
注射器ならガラス加工が…あ、はい。
どうやら要らないみたいです。
「よし!じゃあつくってみるか!」
「何をつくるのー?」
「出来てからのお楽しみ!30分ぐらい待ってて!」
「? わかったー!」
僕は必要なものを手にし、部屋に籠った。
道具はあまりないものの、うまくできそうだ。
こういう風に物を作るときのワクワクっていいよね。
30分後、代用に代用を重ねようやく似たものができた。
さっそく試すためにドラグノールのところへ向かった。
「お待たせー!」
「アンディ!何を持っているの?」
「秘密道具だよ」
と言いつつただの注射器だけど。
普通の注射器と違う点は針がそこまで細くはないところ。
人間にではなく生肉に刺すだけだからね。
そこまで細くなくても大丈夫だろう。
りんごを絞り、それを注射器にいれ生肉に入れた。
全体に行くよう、何回も刺して注入した。
結構面倒くさい……。
このまま焼いて食べたら美味しそうだなあ。
「ワンッ!」
「ごめんごめん。ほら、食べていいよ」
ドラグノールは待ってましたと言わんばかりにバクバク食べ始めた。
「うまいか?」
「ワンッ!」
「そうかそうか、それならつくった甲斐があったよ」
嬉しそうにペロっとすぐに全部食べてしまった。
すると皿の横でちょこんと座りだした。
「どうしたの?」
「くぅーん」
あぁ、おかわりってことね。
もうちゃっかりおねだりを覚えちゃって。
「これで終わりだよ。りんごももう少ないんだし」
「ワンッ!」
「分かっているのかなあ……」
そう言っている間も食べている。
またすぐに食べ終えてしまった。
「くぅーん」
「だからもうないって!」
「何がないの?」
「リリスー!」
「やあ、エイミー」
いつの間にかリリスがいた。
リリスはいつでも遊べるように合鍵を持っている。
悪さもしないだろうから渡したけど、こうしていつの間にかいるとびっくりする。
「りんごがないんだよ。ドラグノールにあげる餌で」
「りんご?それならあげるけど」
「いいの?大切な木だからあまり貰うのはいけないかなあって思っていたんだけど」
「少しなら構わない。そのまま渡せばいい?」
「いや、ちょっと貸してくれない?」
「じゃあ何するか見せて」
「それならいくらでも」
ただ注射器で入れるだけの作業だし。
いくら見せても構わない。
僕はリリスからりんごをもらい、絞って生肉に入れた。
それにしても大丈夫かなあ。
絶対食べ過ぎていると思うんだけど。
「へぇ、随分面白いやり方をするね」
「そう?けっこういいアイディアだと思ったんだけど」
「私ならこうする。
リリスは余っていた生肉とりんごを触り、魔法を使った。
その瞬間、りんごだけ消えた。
「何をしたの?」
「りんごを粉々にしてお肉に満遍なく散らかせた」
「へ、へぇー。そんなやり方があったのか」
そっちの方が楽じゃないか!
もっとしっかり調べるべきだったよ……。
「でもこれもすごいよ」
「ありがとう、でも負けた感じしかしない……」
「?」
単純に魔法から探せばよかった。
今後からはそうしよう。
「さて、ドラグノールは食べ過ぎているからこれは夕飯に…ってあれ?」
さっきまであった生肉がなくなっている。
一体どこに消えた?
「それならドラグノールが食べたよ!」
「えっ?」
「ワンッ!」
いつの間に……。
っていうか食べ過ぎているよ!
いつもの倍近く食べているし。
次の日、お腹の調子が心配だったため食事は少しに。
ドラグノールのしっぽは一日中下がっていた。
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