第2話 攻撃、防御、素早さ99

「終わりましたー!」


 汚れた服を回収して新しい服を取りに行ってくれれば一人で……なんてことはなかった。

 抵抗をしたんだけど、隅々まで洗われてしまいました。


「大丈夫アンディ?顔が赤いよ」

「大丈夫!心配ないよ!」


 これ以上この話に触れたくない!


「じゃあ私は先に行くね」

「お勉強頑張ってね」

「う、うん……」


 明らかに元気がない。

 お姉ちゃんは勉強が大嫌いなんだ。


「それでアンディはもう終わったのか?」

「終わったよ。部屋に置いてあるよ」

「うむ、なら先に見ようか」

「旦那様、わたくしが取りに行ってまいります」

「そうか、では頼もうか」

「では行ってまいります。アンディ様、お部屋に入らせていただきます」

「かまわないよ」


 ダルダさんは本当に人がいい、というかよすぎる。

 こんな子供にまでそんな丁寧な言い方をするなんて。

 僕も年を取ったらこういう風になりたい。


「ん?早く食べないと冷めてしまうぞ」

「そうだった、いただきまーす」


 僕だけ遅れてのお昼ご飯。

 少し急ぎ目で。

 急ぐ理由は僕たちが食べ終わらないと他の人が食べられない。

 お父さんも一緒に食べようといったけどみんな断った。

 仕事熱心な人が多い家だなあ。


「持ってきました」

「どれどれ……。本当にやっていたようだな。まあ間違いだらけであれば別だが」


 なぜ家主であるお父さんがわざわざ教えているのかというと、先代もそのまた先代もそうしていたからだ。

 ようするに家の習わし、こうすれば教師を雇わなくても済むからいいとのこと。


「……ふぅ。本当に終わらせるとはな。デルク家一番の天才なのかもな」


 勉強の内容は精々小学校3、4年生レベル。

 前の世界の年から考えれば6歳にとってはレベルが高いが、俺にとっては簡単だ。

 何せ元々17歳なんだから。

 闘病中でもいざというために勉強を欠かさなかったぐらいだ。


「これならいいだろう。カラリアも見習ってほしいものだ」

「それでしたら午後は私が坊ちゃまに付き添います」

「うむ、ただしスープをかけるなよ?」

「かけませんよ旦那様!」


 二度もかけられてたまるか!

 僕は部屋から出ようとしたら、ルーシュはお父さんに頭を下げた。


「それでは失礼します」

「アンディ、危ない遊びはするなよ」

「うん、気を付けるよ」


 僕とルーシュは外へ向かった。


「坊ちゃま、外に出て何をするんですか?」

「ちょっと試したいことがあってね」


 試したいことはこっちに来る前に手に入れたもの。

 特に【スキルポイント増幅】だ。


「スキルオープン」


 目を閉じて発動させる。

 すると頭の中にたくさんの文字が浮かび上がってきた。

 数は数えられないほどあり、僕でもほとんどは把握していない。

 その中でも重要視、まずこれに使ったほうがいいものがある。

 今回はそれに使ってみたいと思う。


 取り上げたのはステータスの攻撃、防御、素早さだ。

 スキルポイントは一つにつき99まで上げられる。

 そして【無限】はスキルポイントに使うことができる。

 そのおかげでいくら振ってもスキルポイントは減らない。


「ルーシュ、あの岩って壊してもいいの?」

「あの岩ですか?たしか邪魔とか言っていたのでいいと思いますけど」

「じゃあ使わせてもらうね」

「えっ?」


 僕は岩に近寄り、岩に手をかざした。


「おりゃあ!!」

 ドゴッ!!

「ええええ!!!!」


 岩は粉々に砕けた。

 やっぱり攻撃をあげるとここまで上がるのか。

 まるでクッキーを砕いている感じだ。


「坊ちゃまが…マッチョに……」

「なってないから!」

「ではどうやったんですか!それにそんなことをなさいますとケガをしますよ!」

「ちょっ!」


 また持ち上げられそうになった瞬間、僕は避けるために少し動こうとした。

 少しのつもりだったが、10メートルも離れている。


「あ、あれ?坊ちゃまが消えた……」

「ごめんごめん、こっちだよ」

「一体どうやってそんなところまで……。何か魔法でも使ったんですか?」

「ただ素早さを上げただけなんだけど」


「素早さを?そんなにスキルポイントが余っていたんですか?」

「まあ、余っているね」

「頭がいい坊ちゃまは違いますね。みんなはまず魔法に使いますのに」


 そういえば魔法もあったね。

 また今度使ってみようかな。


「ちょっと行きたいところがあるんだけどいいかな?」

「晩御飯までにお帰りになれば大丈夫だと思いますよ」

「じゃあルーシュも一緒に行こう」

「では御供させていただきます」


 僕たちは少し離れた丘へ目指して歩いた。

 時間はかかること片道1時間。

 それだけの時間をかけてでもやりたいことがある。


「はあ…はあ…まだですかー?」


 ルーシュは疲れて立ち止まってしまった。


「もう、ほら乗って」

「えっと、坊ちゃまが私を持つのは無理かと……」

「大丈夫だから、早く」

「それでは、失礼します」


 僕はルーシュをおんぶした。

 小さい僕が持つのだから足腰を結構曲げるため、逆に辛そうだけど。

 どちらにしろ、最後はこうしないといけないところに行くことだし。


「ちょっと我慢してね」

「え?どういう――キャアアッ!!」


 10メートルを一瞬で移動した速さで一気に丘上まで行き、最後は木の上へと飛び乗った。


「たたたた高いですよここ!」

「そうだけど、前を見てみ」

「わあぁ……!」


 時間は夕方になっており、目の前には太陽が沈んでいくところがよく見える。

 一応木の下からも見えるが、こっちのほうが障害物が少なくてよりきれいに見える。


「いい景色でしょ?」

「はい!でもなんで私なんかに?お嬢様のほうがもっとお喜びになるかと思いますが」

「これはまあ、いつも僕のために頑張ってくれているお礼というか」

「坊ちゃま……!ありがとうございます!!」

「痛い!痛いから!それに危ない!!」


 急に抱き着くと痛い!

 いや、痛くはないな。それにどちらかというと柔らかい。

 そういえば防御も上がっていたんだっけ。

 それでもバランスを崩したら危ない。


「坊ちゃま、そろそろ帰らないと怒られてしまいます」

「そうだね、じゃあ降りるよ」


 僕はルーシュと一緒に木の下へ。

 下に着いたらルーシュは僕から降りた。


「さて坊ちゃま。次は私が運びますよ」

「まさか、また持ち上げるの?」

「いえいえ、今度はおんぶですよ。ほら」

「……わかったよ、はい」


 しょうがないから僕は乗った。

 しょうがないだけだからね。


「よっと、では帰りましょうか」

「うん」


 帰り道、途中まで話をしていたのは覚えているが、途中で寝てしまった。

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