第24話

「うおおお!!」

「うーん……」


 凶器を持って襲ってきているが、所詮初心者がナイフを振り回しているだけ。

 対人戦でプロ相手にしていたから避けるのは簡単だ。


「はぁ…はぁ……」

「ごめん、少し寝ててもらうよ。催眠スリープ

「うぐっ!?」


 寝起きの運動にしてはいいが、このまま続けると国王の身体からだが危ない。

 ただでさえ疲労で弱っているんだ。

 これ以上無理に動くと自分で自分を殺してしまう。

 だから眠ってもらった。


 国王を運ぶために給仕をしている人を見つけ、国王を運んでもらった。

 それと勝手に動くと危ないから看病も頼んだ。

 国王と一緒に俺が持っていた疲労回復の薬草を渡した。


 国王の移動が終わった時には、夜が明けていた。


「もう朝か。今から寝るのもなんだし、このまま起きているか」


 一応寝たには寝たからな。

 ただ、嫌な夢を見た上に最悪な起き方だったが。


「二人が起きるまでに、やっておきたいことを終わらせておくか」


 この城にいる人は日の出と共に起きる人が多い。

 メイドや執事はもちろん、戦闘部隊も起きている。


 やっておきたいことは、全部隊の隊長の召集だ。

 俺たち3人で話し合ってもこの国の戦力がどれほどか知らない。

 戦力を知りたいという理由と作戦の相談に乗ってもらうためだ。


「あれ?ディラさんじゃないですか」

「デルガンさんか。ちょうどよかった」

「どうかされたんですか?」

「作戦会議をしたいから隊長全員を集めてほしいんだ」

「なるほど、わかりました。早急に集めます」


 後はファラとメルの二人が起きてくれるのを待つだけだ。

 国王も参加したほうがいいと思ったけど、一緒に参加してもまた襲い掛かってきそうだし。

 それに今は休ませておいた方がいい。


「ディラだよね?何しているの?」

「本当だわ、早起きなんてするのね」

「まあちょっと訳があってね」


 国王については軽く話しておいた。

 国王は参加するべきか聞いてみたら、俺と同じで休むべきという意見だった。


 デルガンさんの仕事が早く、1時間以内に昨日使った部屋に全員が集まった。


「集まってくれてありがとう。初めて見る人もいるから、まずは自己紹介をしようか」


 昨日使った部屋に俺たちを含め、合計8人がそろった。

 大事な会議だけあって他の者は誰一人といない。


「まずは俺たちから。Sレベル冒険者のディラ、それにファラとメルだ」

「では次に僕が。僕は5番隊隊長のメガル・ネイティアです」

「俺は4番隊隊長、ソガネ・ユージスだ」

「俺は別にいいでしょう、アリアさんどうぞ」

「私は2番隊隊長のアリア・シルフィールよ」


 眼鏡の青年に強そうなおっさん、それに美人なお姉さんがいる。

 あと1人で自己紹介が終わるんだが、なんとまあナルシストみたいなやつだな。

 ここに来てからずっと自分の髪をいじってばかりだ。


「最後は私ですね。私は1番隊隊長のサルベルク・ガーダーです」

「これで自己紹介は終わったか。じゃあ次に――」

「次に行く前に一つ、聞いてもよろしいでしょうか?」

「どうぞ」


 サルベルクさんが何か聞いておきたいみたいだ。

 意見があるならぜひ参考にしたいから聞いておこう。


「なぜ、あなたが指揮をしているんですか?」

「……国の状態を聞いて助けようと言ったら、国王に頼むと言われたからだが?」

「それでしたら我々の戦力だけになってもらいたいですね」

「戦力だけ?兵として動けってことか?」

「そうですよ。それ以外にありますか?」


 随分とケンカ腰だな。

 こいつ何言っているんだ?と言われれば実際は間違ったことは言っていない。

 初めて来た人に任せて「国が潰れました」なんてあってはいけないことだ。


 そもそも国王も国王だ。

 切羽詰まったせいで俺に縋るようになっていたが、本当なら1番隊隊長サルベルクさん城の者他の隊長に頼むべきだ。


「そこまでにしなさい」

「アリア、貴方は黙っていてください」

「そんな態度だから国王様から信頼を置かれないのよ!」

「……もう1度言います。黙りなさい」

「くっ…!」


 なるほどな。

 国王に嫌われていたから、相談もされなかったのか。


「ですから私が指揮を――」

「ご報告がございます!」

「……会議中ですよ」


 会議室に一人の兵士が入ってきた。


「も、申し訳ございません!ただ早急に報せるべきことだと思い……」

「それで、どうしたんですか?会議中に飛び入るようなその内容とやらを」

「国の外、すぐそこまでおよそ千名におよぶメルメシア王国の軍隊が攻めてきております!」

「「「「「!!??」」」」」


 ヴェルのやつ、もう行動にまで移っていたのか!

 ガルガン王国とメルメシア王国の間はけっこう距離があったし、テントこそあったが精々百人程度。

 考えられるとしたら俺を追い返した後、夜通しで動かしたってことだ。

 決断力が早いのか、用意をしていたのか……。


「ちょうどいいですね」

「ちょうどいい?何を言っているんだ!国が攻められているんだぞ!!」

「ソガネ、急に大きい声を出さないでください」

「貴様が馬鹿なことを言うからだ!」


 ソガネさんが立ち上がった。

 こんなところでケンカをされても困る。


「まあまあ、落ち着いて。それで何がちょうどいいんだ?」

「貴方達に見せてあげますよ。どちらが指揮をするべき人間か、というのをね」

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