第21話

「さて、どれぐらいかかるかな?」


 メルメシア王国を目指して飛び立って数分。

 いまだに国は見えない。


「ん?あれはテントか?」


 ちょくちょくだがテントが広がっている。

 味方のテントか?


「いや、違うな。俺に向かって魔法を撃とうとしている」


 来た方向で分かったのか、俺に気づいた者全員が俺に向けて魔法を放った。


「しゃあない、速度を上げるか」


 こんなところで道草食っている場合じゃない。

 さっさと終わらせたいんだ。


「んげっ!追尾型かよ!」


 しかも速度上昇付きと来た。

 このままでは当たってしまう。

 しかしその先にはまたテントがあった。


「いいこと考えた!」


 高度を低くし、地面すれすれまでいった。

 そのまま俺はテントを過ぎ、追尾してきた魔法はテントに当たった。


「これで一石二鳥!邪魔な魔法は消えたし敵も減った。あと進軍だったら止めることができたから一石三鳥だったか?」


 まあどうでもいい。

 さらに速度をあげ、目的地へと向かった。


「へぇ、ガルガン王国よりでかいじゃん」


 つくりは似ているものの、規模が全然違う。

 というかこの大きさで今まで戦ってこなかったのか。

 よほど注意深いのか小心者なのか。


「とっとと頭潰して調べますか」


 俺は頭がいそうな城へと向かった。

 大体偉い人は上の方にいるからな。

 とりあえず屋根に降りた。


「炎ノ刀」


 魔法を使い、炎でできた刀をつくりだした。

 これがまた便利で温度が高く、発泡スチロールを溶かして切るような感じで物を切れる。

 使ってて気持ちい。


「あれ?誰もいないな」


 もしかしたらここは物置とか?

 でも物は少なく、動きやすい。


「また透明化か」

「お見事、よくわかりましたね。ようこそメルメシア王国へ」

「どうも、それで誰?」

「おっと、申し遅れました。わたくしはメルメシア王国指令総括のヴェル・ユーラスと申します」


 いきなり当たりを引いたな。

 まさかこんなところにいたとは。


「なんとなく予想を立てていたんだが、まさか当たっていたとはな」

「別に隠すつもりはなかったのですが」


 国王を見る限り、あのままずっと悩み続けていたら長くは持たない。

 そうなるとメルメシア王国が攻めてきたのは相当最近になる。

 俺たち以外にSレベル冒険者がでたと聞いて、その人は現在行方不明。

 だから候補に挙げていたけどまさか当たっていたとはね。


「まあそれは置いておいて、今回はルール違反です」

「ルール?ゲームのつもりか?」

「ええ、これは国をかけた戦争ゲームです」

「この国はお前のものってことか?国王でもないのに」

「そうですよ、入ってきてください」


 ドアが開くと30少しぐらいの男が入ってきた。

 ただ、目が虚ろになっている。


「洗脳か?」

「そうです。彼はトッティー・メルメシア、メルメシア王国の国王です」

「洗脳を使うとか最低な奴だな」

「こんな私でも仲間から信頼されているんですよ」

「こんなことをしているやつを信頼するとは、お前の周りは終わっているな」

「ここに来た時から表向きはいい顔をしていましてね。この地位を手に入れるのも簡単でした」

「へぇ、それならその洗脳を解かせばゲームとやらは終わりそうだな」

「そうはさせませんよ。これは私がつくったゲームなのですから」


 不意を突いて洗脳を解こうとしたが防がれた。

 流石Sレベルなだけあるな。


「そもそも俺たちが参加する義理はない」

「そうですか、ではこれを御覧ください。光映像ライト・ヴィジョン

「!? てめぇ……」

「私は以前この方の近くにいました。何か仕掛けてあるかと思いませんか?」

「人質っていうことか」


 映像にはガルガン王国の国王が写っていた。

 洗脳の次は人質か。

 こいつ、本当に自分勝手な奴だな。


「国をかけた戦いならルール違反ってのはなんだ?戦争ならルールも何もないだろう」

「いきなりボス同士が戦ってもつまらないでしょう?」

「……俺は国王でも国の民でもないんだが」

「そんなの知っていますよ。なんのために情報収集させる者を動かしたと思ったんですか」

「そうだったな。ずいぶんと手の込んだことをやっているな」

「強いと暇ですので。新しい遊びを見つけたので力をいれているんですよ」


「遊びで国の取り合い?人の命がかかっているんだぞ!」

「おかしいですかね。井戸から取れる水を1摘も残さず使いますか?使いませんよね」

「人は水なんかじゃねえ!」


 気づいたら俺はヴェルに向かって飛んでいた。


「これは時間がありませんね。ルールを簡単に説明します。

 ルールは兵隊を使って戦闘をすること。私たちSレベル冒険者は前線に立つことはできません。ただし駒がいない場合は参加可能です」

「そんなの初めもさせない!」

「説明は以上です。それでは楽しみましょう、帰還リターン


 ギリギリまで引き寄せた瞬間ヴェルは何かの魔法を使った。

 俺は頭に血が上ってしまったせいで、まんまと魔法に引っかかってしまった。


「ちっ!仕留め損ねた」

「ディラ?」

「いきなり帰って来たわね」


 俺はガルガン王国の城に戻されてしまった。

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