ガルガン王国

第18話

「ガルガン王国が攻められている?だってSレベルの冒険者がいるんだろ?」

「よくご存じで。確かにいますが、もう引退をなされています」

「現在どこにいるか分からないのです」


 ってことはガルガン王国にいないってことか。

 なんだ、無駄足じゃないか。


 と言っても聞いてしまっては「そうですか、大変ですねさようなら」とは言いづらい。

 ゲームならまだしも今は違う。

 断っていくのは気が引ける。


「ディラ」

「だめかな?」

「俺も同じことを考えていたよ、ガルガン王国を助けよう」


 ファラとメルは助けようという目でこっちを見ていた。

 なんとなくだけど、そう言っていると分かった。

 昔から優しいもんな。


「ですが旅の者に助けてもらうには――」

「いいのよ。私たちのリーダーがやると言ったのだから」

「そうそう!大船乗ったつもりでいてよ!」


 目的は変わったものの、元々ガルガン王国へ行くつもりだったんだ。

 こっちの世界がどうなっているか知りたいし、無視スルーするつもりはない。


「それでしたら国王様に報告させていただきます」

「まあ、普通はそうするよな」

「それで、国王へはどう説明したらいいでしょうか?」

「これでいいんじゃない?」


 俺たちは貰ったばかりの冒険者カードを渡した。


「Sレベル……ですか」

「だからあのドラゴンと仲間なのですね」

「まあ、うん」

「それでお願いがあるのですが」

「出来る範囲なら」

「ドラゴンを連れて行くと国で騒がれてしまうので……」


 同じSレベルのサリーさんでも驚くから国に連れて行けば大騒ぎだろうな。

 見えてきたら手前らへんで降りようと思ったけど、この二人がいるなら別に歩いていいか。


「だってさファラ」

「わかったわ。ありがとうね、ディエイダム」

『もったいなきお言葉です。では私はこれで』


 そう答えるとアバターが消えるエフェクトと同じようにディエイダムが消えた。

 その下には先ほどの亀がいた。


「まさか召喚をされたんですか!?」

「そ、そうよ」

「おかしいですよ!!共にいるならまだしも、あの伝説の――」

「待って、それはもう聞いたから」


 同じ反応だな。

 やっぱり驚いていたんだな。

 下手に騒いで怒らせないようにしていたのかも。


「それにしても二人でこいつを運ぶ気だったのか?」

「はい、私が多少ですが魔法を使えるので」


 副隊長のミラさんは自慢げに答えた。

 残念だがここにいる3人は普通に運べるぞ。


「いきます。軽量化網ウェイトセービング・ネット


 半透明の網を出すと、そのままイグザタートルに巻き付いた。

 この魔法は見たことが無いな。


「何が変わったの?」

「このままだと重いので軽くさせました。あとは、浮遊フローティング


 さきほど網で囲まれたイグザタートルが浮いた。

 この魔法はゲームでもあった。


「その魔法使うなら網でまとめなくてもよかったんじゃないのか?」

「私だと重すぎて持てないので……」


 ゲームでは浮遊フローティングに重さ制限なんてなかった。

 同じ魔法でも少し異なっている部分があるのか。


「それでは行きましょう。ご案内します」

「ここからだとどれぐらいかかる?」

「およそ30分というところです」


 思っていたより近いな。

 あのまま降りていたらまた騒がれていたんだろう。

 助けて本当に良かった。

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