今の世の中暇しない
@Higuta
第1話
見渡す限り見える山々などの風景全てが真っ白に覆われている。冬の寒さを際立たせる銀白色の空からは刹那に純白色の天使達が舞い降りてくる。そして、俺の肩にはその天使達が積もり始めた。現在俺は訳あって校門の前に立っている。この学校は町外れ+山の麓にあるため、多くの自然と触れ合うことができる。時々、リスが見かけられる。なので登下校は結構時間がかかる。今日は7時間授業だったので早く帰らなければ暗くなってしまう。なのに、茜色の空のようなきれいな色のした髪色の少女が立ち塞がる。その可愛らしい小悪魔的な見た目とは裏腹に、少女の口からは無造作に他愛もない子供のような暴言が俺に向けて吐き出されている。
「このバカ!アホ!自己中!」
「…。」
「なんで、なんでなのよ!私が勇気出して言ったのに。」
「…。」
「私と付き合ってよ?お願いだから!」
「…。」
「ね、いいでしょ…?」
「…。」
「だめ…かな?」
「なんか言いなさいよ!」
「あはーん。」
俺がふざけた言葉を放った瞬間、少女の垂れ下がった目は釣り上がり、収まったと思ったはずの暴言の波が暴言の嵐もなって再来した。
「こんな時にふざけないで!この間抜け!バカ!このくそどうて…」
「黙れ、童顔。」
「童顔じゃなーい!そろそろぶっ◯すぞ!」
淡麗な容姿を持っているやつがそんな言葉を言ってはいけないと俺は思う。
「とにかく、今はキレてる場合じゃないや。」
少女はいきなり冷静になり、二重で大きな輝かしい目で上目遣いを始めた。
「もう一回言うね?私と…私と付き合って…?」
「断る。」
俺はすっぱりと切り捨てた。
普通の高校生なら誰もがOKサインを出すだろう。だが俺は違う。生まれた日と病院は同じ。そして、隣に住んでいる。おまけに幼稚園に通ってた時以上前からの付き合い。だから学校では猫を被ってることなどお見通しだ。「なんで…ずっと前から好きなのに…う…うわーーーーん!」
「ガキみたいに泣かないでくれ。」
泣き出したら子供のように泣いてなかなか泣き止まない。正直、こうなってしまっては面倒くさい。「わかったよ。付き合う。」と言ったらぴたっと泣き止むと思うが、そんなことは口が裂けても言わない。
「なんでぇ…なんでよー…うぇーーーん…」
ついに地面に膝をつけて立ち上がらなくなってしまった。
「難しいことは言わない。とにかく立って。早く帰ろ。」
その言葉が少女のガラスのメンタルに突き刺さったのか。
「酷いよー。もう立ち直れないよー!」
ああ、魔が差した。銀白色の空は暗黒色の空へと変わりつつあった。
「誰か助けてくれ…」
もう間も無く酉二刻を迎えようとしている。この時間帯になると学校に残っている人は部活に入っている人ぐらいだ。
「一人で帰っていいか?」
「うぇーーーん…うぇーーーん…」
「そろそろ泣き止んだりしない?」
「…。…。…。うぇーーーん…うぇーーーん…」
「はあぁー。」
見た目は子供。中身も子供の高校生。か。
「君は女の子をいじめるから私に捨てられるのよ。」
後ろからクーリッシュな鈴音が耳を震わせた。
「美咲、なぜここにいる?」
俺はそのクーリッシュな声でわかった。
「なぜって、学校帰りに決まってるじゃない。」
「そうか。」
「元カノが同じ学校、同じクラスっていうこと忘れてた?」
「忘れたいけど忘れられる訳ないだろう。」
こいつの名前は穂村美咲。さっき説明があった通り俺の元カノだ。学内で5本の指の中に入るだろう。くびれた腹部に膨よかな胸。その淡麗なスタイルは制服ごしでもわかるほどだ。艶やか黒髪ロングに美しく整っている顔。虜にならない男子などいない。俺も虜になったうちの一人だ。
「とにかく、女の子をいじめることは見過ごせないわね。しかも、年下の少女を…絶句するわ。」
この状況を途中から見た人はそう思うだろう。
「もしかして新しい彼女さん?中学生?あなた、ロリコンなのね。捨てて正解だったわ。」
否定する隙も与えてくれずに話は進んでいってしまった。これは詰んだ。
「ねえ大丈夫?怪我してるの?」
少女に詰め寄り、話をかける。やっぱり根はいい奴なんだよな。
「ぐすん…私、中学生じゃない!」
少女は煌びやかな目を両手で擦り、涙を拭き取った。
(あっ、泣き止んだ…)
「私はあなたのこと知ってるよ。将太の元カノでしょ?」
将太って俺の名前ね。
「私も思い出したわ。あなたは確か将太君の幼馴染よね?」
思い出すタイミング都合良すぎだと思うのは僕だけでしょうか。
「私から将太を奪わないでよね。」
「貴方達ってそんな関係になりつつ…」
俺の元カノこと美咲の目が獲物を狙う蛇のように輝いたように見えた。
「いや、私がもう一度彼をおとして見せるわ。」
「このクソビッチが!」
だから、そんなに可愛らしい容姿を持っているのに口が達者過ぎるよ。
「何度でも言っているといいわ。」
俺が会話に入る隙間など微塵もない。
「将太君、私のことまだ好きよね?」
唐突に突拍子も無いことを振られた。
「好きなわけねーだろ。」
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俺達が別れたのは約半年前。いきなりの出来事だった。学校帰り、手を繋いで一緒に歩いていた時。それはそれは絶句した。
「他の好きな男と付き合うことになったから別れて欲しいの。」
「おま…何言ってんだ?」
「とにかく別れて欲しいってこと。」
「…は?」
「ここまででいいから。今までありがとう。さようなら。」
俺は一瞬の出来事を理解できずにその場に立ち尽くしてしまった。これが彼女との苦い思い出。以上。
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「付き合ってくれたら私の初めてをあげてもいいのよ?」
「本当か?」
「私の全てを知ってちょうだい。」
彼女は自分の膨よかな胸に手を当てている。
「な…なら。い…いたっ!」
俺が学校の卒業式ではない卒業式の夢を見ていた時、横から、小ぶりの小さな手が俺の頰を叩いた。
「穂村美咲はビッチよ!今まで何人の男と…目を覚ましなさい!」
「お前の強烈なビンタで冷めたよ。むしろ殺意持ったわ。お・ま・え・に。」
俺の脳内は桃色一色から赤一色へと変化した。
「それより…私はどう?胸は少し劣るけど、新品よ…?」
「はいはい、そうですか。そんな事どうでもいいですよ。」
「なんでよー!?」
なぜ、俺の周りにはこんなクレイジーな奴しかいないんだ。
「将太は私のものよ!」
「将太君は私のもの。」
こんな奴らと関わっていくのは正直勘弁して頂きたい。誰か助けてくださーい。
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