三分で読めるショートショート集「ヒューンヒョイ」

太一

未来の見える筒

「くれぐれも慎重に選んでください。しかし、考えすぎないように。心を澄ませて直感に従うのです。決まったら抜き取って向こうをのぞいてください。あなたの望む未来を見ることができます。……あ、お客様、そんなに簡単に決めてしまっては……」

 慌てる男は無視し、私は片目をつぶって筒をのぞいた。何もない。白い壁があるだけだ。

「何も見えない」

「もう一度選びなおしましょう」

「白い壁しか見えないぞ」

 男から返事がない。

 筒を外してみると、さっきの男がいない。筒の山も消えている。持っていたはずの筒もない。よく見ると私もいなかった。まさに私が望んだ世界だ。

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