第3話 お師匠さんとの出会い

 今朝も霜が降りた山道を、与作は、鉄と玉を伴って、三次の町の浅田屋目指し

 駆けていた。薄暗く肌寒い空気の中、玉は与作の懐の中から顔だけを覗かせて気持ち良さそうにしている。

 鉄はといえば、相も変わらず健脚で与作の前を誘導する様に駆けて行く。常に後を振り返りながら気遣ってくれている。

 自由気ままな性格の玉は、気分が乗れば皆んなと一緒に別荘迄付いて来るが、雨でも降っていたなら殆ど出て来ない。

 気まぐれに付き合った時には不思議と何かある事が多い。何故か予感が当たるのだ。

 木立ちの間から家々が見える辺りに近づくと心得たもので、与作から離れて

「いってらっしゃい」とばかりに見送りをしている。鉄も淋しくはない。別荘に入ると、毛布があるので玉とくっ付いて休めるのだ。

 だが其れ以降は一日中、鉄と玉が何処で何をしているのかさっぱり分からない。

 只、鉄は人里には下りて来ず、家畜を捕る事などは一切しなくなっていた。

 与作は、今日一日の浅田屋での仕事は何時も通りで、何度も怒られながらの、こき使われっ放しである。

 丁稚供にとっては毎日の商品の仕入れ、発送等の荷動き手伝いで殆どが力仕事であった。昼間に町中や郡部の得意先に薬の配達、集金と出掛ける時など程よい息抜きであった。

 丁稚奉公に上がって以来、相も変わらず毎度、毎度の繰り返しである。だが与作にとっては丁稚奉公に入って間もなくで何もかも新鮮な体験であった。

 夕方暗くなった頃に何時もの様に女中さん二人が近寄って来て小声で話しかけて来た。

「与作さん、今日は折詰が出たからおむすびはないよ」

「何時も何時も内緒ですみませんね」

「其れよりね、この前の松茸やしめじやら美味しかったよ。有難うね」

「そうか、今度の休みはもう一回、山に上がってみるよ。もう遅いかもしれんけどね」

「楽しみにしとるからね」

「其れとね、むすびの事じゃけどね、奥様はとうの昔から気付いているみたいよ」

「そうよ、でも遠くから駆けて来る与作さんの事を考えて知らん顔をしてくれているみたいよ」

「奥様も優しいよね」

 何時も仲のいい女中さんのよく喋る事喋る事、二人とも家族がおり近所から通っているのだ。

「さぁ、今日も無事終わったな。ぼちぼち帰るぞ」

 と独り言を呟きながら商店街を駆けだしていた。

 与作は町中を外れ何時もの一本道を別荘目指して駆けていた。

 懐から犬笛を取り出し、一吹きしようとすると

「ウワン、ウゥー」「ウゥー」

「コラー!あっち行けー」

 とすぐ道の脇から野良犬二匹に吠え立てられた。

 今日は美和様の誕生祝いで、ささやかながら、丁稚の与作にも折詰を持たされており、今夜は少しはご馳走を食べさせてやれるかなと、浮き浮きしていた処であった。

 野良犬は此れを狙ったのである。だが次の瞬間、

「キャイン!」「ギャー」と叫び逃げて行った。

 鉄が凄い勢いで向かって来たのだ。そして玉も駆けつけて来た。

「オウ、鉄ちゃん玉ちゃん有難うよ」

「ほんま、お前たちは頼りになるなあ」

 後は何時もの事ながら「ワンワン、ニャーニャー」大喜びをしている。

「此れから帰ってご馳走を食べような」

 ご馳走と聞くとすぐに分かる。

 鉄は其処にお座りをしているではないか。もらってきた風呂敷包みを肩に括りつけてもらうのだ。そして両脇に玉も寄り添いながら小屋に向かって駆け出した。

 険しい山道も何のその、皆んなは苦もなく駆け上がって行く。

 暫くして 明光山の一番の難所の峠を越える辺りでは玉はちゃっかりと与作の懐に入っている。

「玉ちゃん、ラクチンじゃな」

 嬉しそうにニャーンと一声鳴いている。

 そして下り出して暫く走った処で鉄が急に駆け出した。そして気まぐれ玉も与作の懐から飛び降りて付けて行く。

「鉄ちゃん、どしたんじゃ」

 薄暗い前方を見ると、道の真ん中に誰か倒れているではないか。其れに鉄と玉が心配そうに寄りそっている。

「ウ~ン、お侍様じゃないか、此の寒空の下でどうしたんじゃ」

 与作にはすぐに理解できた。

「マムシに噛まれなさったな」

 元来、この時期になると、出くわす事など殆ど無いのであるが、運悪く踏み付けたのであろう。

 近寄って見ると、左足のふくらはぎが異様に腫れているではないか。

 与作は急遽、処置しなければと、バンバンに張った脚絆を外した。そして傷口に口を当て毒を吸い出す様にしてはペッ、ペッと吐き出した。

 だがすぐに分かった。噛まれてから時間が経ち過ぎており、口の中に毒が感じられないのだ。すでに体中に回っていると。

「お侍様!お侍様!」

 大声を掛け何度揺すっても、意識が朦朧としているのか反応が殆ど無いのだ。

 与作は忽ち、何とか毒の回りを弱め様と、近辺にある薬草を探し始めた。暗がりの中でも何時も見知った山道だ。幸いな事に近くに「よもぎ」が目に付いた。

「此れだ!」

 手に取ると、小石で叩いて揉んで汁気を多く出し、其れを患部に当て手ぬぐいでくくり付けた。

「よし、忽ちは此れでええ、後は毒消しじゃ」

 与作はその場に芝草を寄せ集め寝床にし、自分の着ていた着物をお侍様に被せた。

「鉄ちゃん、玉ちゃん、この人を温めて守ってあげてくれるか」

 というと、すぐに分かって鉄は覆い被さり、玉は懐に入っているではないか。

「よし、ワシは今から浅田屋に行ってくるからな」

 と言い残すと、下着のまま三次を目指して下りの坂道を一気に駆け出した。

 町の中に入って来る頃には小雪がちらつきだし、寒さも何のその、異様ないでたちで駆け付けると店の玄関横の通用口を開け中に入った。

「旦那様!お願いします、急用です!」

 浅田屋の看板提灯も前の街灯も消えていたが、奥の部屋の明かりは点いていた。与作の大声に奥から奥様が出て来た。

「どうしたんですか、その格好は!」

 そのうち、主人も顔を覗かせた。

「山の中でお侍様がマムシに噛まれて難渋されておられます」

「よし、分かった。一寸、待っとれ」

 というと奥様や美和様にもテキパキと指図して、自分は調剤室に入り込んだ。

 そして間もなくして、与作の為の上着と、毒消し藥と、食べ物を持たせてくれた。

「与作、此れを持って行け。ええか、絶対に死なせてはならんぞ」

「はい、必ずお助け致します。此のお侍様の持ち物からして名のある御方とお見受け致しました」

「其れに、身体が回復するまでは介抱してあげたいと思います。その間は給金は要りません。休ませて下さい」

「要らん心配はするな、お助けするのが一番じゃ」

「有難うございます」

「そりゃそうと、其の後に何処で寝かせてあげるんじゃ」

「はい、幸いな事にすぐ近くに、以前、父親が使っていた炭焼き小屋があります。実家から一里程離れた山の中に有りますが、住む為の道具は一通り揃っております」

 と咄嗟に口を衝いて出た。今、自分が住んでいるとは言えなかった。

「よしゃ、其れなら忽ち此れで足りるな」

 主人に一言、礼を言うと、一目散に山の方に駆け出して行った。

 一方、倒れたお侍様の側に付いている鉄と玉も一生懸命であった。人間と動物の違いはあっても、皆、心は有るのだ。

「玉ちゃん、此の人を絶対に守ってあげよう」

「当たり前だよ、あっためてあげてるよ」

 そう会話をしている様な優しさに溢れていた。

 鉄は大きな身体を全身に被せる様にし、当たらない処は、芝草を口で寄せ集めて乗せていた。

 玉は玉で懐に入って心臓を温めながら、時折、額の脂汗を舐めている。

 そうしている時に与作が戻って来た。

「オウ、オウ、よう面倒を見てあげてくれとるな」

「お前たちのお陰で絶対に助かるよ」

 鉄も玉も、あたぼうよと言う様に得意な顔をしている。

 其れから、与作はぐったりしたお侍様を肩に担ぎ上げ、程なくして小屋の中に運び入れた。鉄は貰ってきた荷物を口に咥えて先に駆けて帰り、又、残った持ち物を取りに走った。

 本当に狼犬とは思われない優しさと愛情溢れる行動であった。

 囲炉裏の側に、何時も与作が寝ている敷き布団の上に寝かせた。

「すみません、オンボロの煎餅蒲団の上に寝かせて」

 与作は此の時、お侍様の寝顔を見ながら、この御方はとんでもない身分で、何処かのお殿様ではないかと直感したのである。

 顔の品格、恰幅のいい体格から溢れる風格といい、凄い拵えの立派な大小と家紋迄入っている刀をお持ちになっておられる。さぞや名刀であろう。

 与作は暫く寝かせてから、頃合いを見計らって、毒消し藥を飲ませる為に身体を起こした。

 やはり此の時も意識は無く、口をこじ開けてお湯と一緒に飲ませたのであった。

 只、その時は脈が正常に鼓動しており、頑健な体力と併せ、助かるであろうと確信したので有る。此れも咄嗟の有り合わせの、よもぎの効きめがあったので有ろうか。与作は看病の為に朝方まで一睡もする事はなかった。

 其れから、うつらうつらしながら様子を見守っていた。

 そして再度飲まず食わずのまま浅田屋に駆けつけた。

「どうじゃ様子は」

「はい、お侍様は頑健なお身体故に絶対に大丈夫です。其れに主人さんの調合した毒消しは天下一品です」

「ほうかほうか、後は回復剤の他に何がいりゃあ」

「女房に頼んで持ってけえや」

「有難う御座います。大至急とって返します」

 寝る間も休む間もなく 与作は昼過ぎにようやく帰って来ると鉄も玉も大喜びしながらも腹が減った様な顔をしているではないか。

「すまんすまん、飯がまだじゃったな。今からやるからな」

 早速飯の支度に取り掛かった。昨日から自分も鉄も玉も何も食っていない。

 食事を終えると、お粗末な物でも美味しかったよという顔をしている。

 浅田屋から多くの栄養のある食べ物を貰って来ていたが、自分たちがとってはいけないと、何時も通りの物で済ませたのであった。

 そして丸一日経って朝方の頃、顔色の血色も良くなり毒消しの効能であろうか、全く足の腫れも無くなった。

 そして身体を何度も動かし寝返りを打つ様になったではないか。

 鉄も玉も相変わらず一日中、側に寄り添って様子を伺っている。

 そして突然

「犬が!猫が!」

 と叫んだのだ。其の声に鉄も玉も何事かとお侍様の顔をジッと見つめている。

 そして外で洗濯物を干していた与作を呼びに鉄が走って出て来た。

「鉄ちゃん、どしたんじゃ」

 中に入いると身体を全身動かしているではないか。

「オッ、気が付かれたかな」

 と肩を揺すってみた。すると大きく目を見開き

「此処は何処じゃ、ワシは何で寝とるんじゃ」

「お侍様、気が付かれましたか」

「お前は誰じゃ」

「はい、与作と申します」

「ワシは今夢を見とってな、三途の川で溺れている処を、黒い犬と猫に引き上げられて助けて貰うたのよ」

「すまん、一寸、起こしてくれんかのう」

 与作は手を添えて座らせてあげた途端に

「アッ、此の犬と猫じゃ!」

「どうして此処へおるんじゃ」

「お侍様が山中でマムシに噛まれて、倒れておられる時からずっと側に付いております」

「ワシはどのくらい気を失うとったんじゃ」

「はい、丁度、丸一昼夜で御座います」

「そんなにか」

「ワシは足に激痛が走ってから段々と気を失い出して、朦朧としている時に何処となく犬と猫の感触があってな。其れじゃったんか」

「はい、鉄と玉は、私が三次の町の浅田屋まで毒消しの藥を取りに行っている間、お侍様に寄り添い身体を温めておりました」

「おうおう、鉄ちゃん、玉ちゃん、そこまでしておってくれたのか」

「有難うな」

 と言うと優しく頭を撫でてやった。

 意識が戻ったお侍様の顔や手を一生懸命に舐めている。

 鉄も玉も余程 、嬉しかったのてあろう。そしてピョンピョン飛び跳ねて「ワン、ワン」「ニャン、ニャン」鳴きながら小さな小屋の中を走り回っている。

「お侍様、ボチボチおなかが空きませんか。昨日から腹の中には毒消し藥と水しか入っておりませんから」

 と笑いながら言うと

「そうよなあ、言われてみるとグウグウと腹の虫が鳴いとるな。じゃがどうして知りもせんワシみたいな者にそこまでしてくれるんじゃ」

「いえいえ、困っている人を助けるのは、相身互いで御座いますから」

「何も心配せずに治るまで此処に居て下さい」

「お粥が出来ておりますから」

「有難う、有難う。頂くよ」

 囲炉裏にかけて温めていた粥と消化の良いおかずが取り揃えてあった。

 其れをゆっくり食すると鉄と玉が見つめているではないか。

「お前たちも食べるか」

 と言うと嬉しそうに大喜びをしている。一緒に食べれる事が嬉しがったのだ。そしてお侍様は急に気付いた。

 自分の身に着けている物がまるで違うのだ。

「与作よ、ワシの着とった物はどうした」

「誠に失礼ながら全部着替えさせて頂きました」

「汚れた着物から下の世話まで皆、してくれたのか」

「下着から全て身に着ける物は、午前中に三次に駆けて行き、浅田屋の主人が調達してくれました」

「皆な新品じゃないか、浅田屋とは何者じゃ」

「私が奉公している藥問屋で御座います。与作は其処の丁稚で御座います」

「道理でな、ワシが助かった筈じゃ」

「すまん、本当にすまん!」

 とお侍様はポロポロ涙をこぼしながら何度も何度も「有難う」を口にした。

 其れを横で見ていた鉄と玉は顔を近づけ舐めている。玉は特に大きなお侍様の事を自分の子供と勘違いする程になっていた。

 飯を済ませて暫くしてから始めて立ち上がった。

「オウ、まだフラフラするのう。じゃが歩けるぞ」

 と外に出ようとした。

「厠は外よのう」

「すぐ横に有りますから壁伝いに行っ下さい」

 お侍様は始めて早朝の外の空気を吸い込んだ。そして生きている実感をしみじみ味わったのである。

 そして小屋の中に入ろうとした時に洗濯物が目に付いた。

 なんと自分の物が全部干してあるではないか。ふんどしまでもだ。

「何と云う事じゃ!与作は、いや与作殿は」

 とに角、感謝せずにはおられなかった。

 中に入ると

「お侍様、又、横になられますか。もう毒消しは要りません。元気にする薬草が御座いますので飲んでお休み下さい」

「何から何まで済まんのう。そうさせて貰うよ」

 再び床に就くと両脇に鉄と玉が添い寝をしてきた。まだまだ介護気取りなのだ。

 お陰でぐっすり熟睡する事が出来た。

 目覚めて起き上がって見ると、与作と鉄は居なかった。側には玉がいる。

「玉ちゃん」

 と言うと、顔を舐めてきて膝の上にちょこんと乗っかって来た。

「与作殿と鉄ちゃんは何処へ行ったんじゃ」

 見ると囲炉裏の上に鍋が有りお粥が掛けて有る。其れにおかずが取り揃えてあった。

「おお、お腹が空いたなぁ、有り難く頂くよ」

 食事を済ませると、身体の調子を確かめる様に外へ出て見た。

「ワシは今、何処へおるんかいのう」

 と四方を見渡すと、微かに木々の間から八幡山城が見えるではないか。

「そうか、城へ行く迄に倒れたんか」

「早よに行っちゃらんと心配するで。でもまぁ内緒に出て来たからええか」

 と独り言を言いながら小屋の中に入って来た。

 段々と身体具合が良くなると、こんな山の中に住んでいる与作に興味が湧き出した。小さな二間四方の部屋の角に、お粗末な板だけの机が有った。

 其の上に蝋燭立てが有り、古ぼけた写経用の経本が置いてあるではないか。其れを覗き込んだお侍様はびっくりしたのである。自分も少なからず写経をするのだが、書いてある事が半端ではない。昼間は仕事が有り夜帰ってからするのであろう。

 一枚の紙に隅から隅まで真っ黒になる程書いてある。其れも裏も表もだ。この時代、紙が貴重品である事は分かっていたが、これ程に大切に使用するとは、お侍様には理解出来なかったのである。何時も浅田屋で書き損じたりして、捨てるものを貰って帰っては其れを利用していたのだ。

 お侍様には与作の実力がすぐに分かった。練習していた枚数も半端ないが、何と云っても書いてある字が整然としており経本通りで何と綺麗なことか。

 其れに何処で手に入れたか、ボロボロの書教が有った。孔子の論語集だ。此れを手本に真っ黒になる程びっしり書いてある。其れに壁には自分が詠んだものであろうか 漢詩まで貼ってあるではないか。

 此れなどは、お侍様も一度も手にした事など無く、読み切る事が全く出来なかった。

「ウ〜ン、此れが浅田屋の丁稚奉公人のする事か」

 暫くすると、鉄がワンワン吠えなから帰って来た。玉がすぐに出迎えに出ると、互いに大喜びしながら小屋の中に入って来た。お侍様の顔を見ると、其れこそ物凄い嬉しそうな表情だ。

「鉄ちゃん、お帰り」

 見ると背中には大きな荷物が括り付けてある。其れを解いて下ろしてやると、飛び付いて来て舐めまくるではないか。後は、皆んなでお侍様も子供の様になってはしゃぎ回っている。

 すると与作がようやく帰って来た。

 おいこに一杯の荷物を背負いゼイゼイ荒い息をしながら

「鉄ちゃん、速すぎるよ」

 其の声に玉だけでなく、お侍様も飛び出して来た。

「あれ、もうよくなられましたか」

「お帰り、ワシも玉ちゃんも待っとったよ、与作殿!」

「何ですか、今、どう言われましたか。私は、ただの与作で御座います」

「ええから、ええから、今日からこう呼ばせてれるか」

 と話しをしながら小屋の中に入って来た。そして遅い朝昼飯をする為、準備をしだした。お侍様は今迄寝ていた場所に座り込むと与作に話しかけてきた。

「与作殿よ、ワシはこの度、大変お世話になり生命までも助けて貰うたよ。誰とも分からんワシを、何から何まで親切、丁寧にやって貰いほんまに感謝しとるよ」

「とんでも御座いません。私は藥屋の丁稚として当然の事をした迄で御座います」

「私は浅田屋に顔を出す度に、主人にお侍様の様子を何度も聞かれ、死なす様な事をしたら絶対に承知せんぞ、と言われております」

「其れにお身体から、完全に毒素を抜いて障害が残らぬ様になる迄、面倒を見てあげてくれと言われております」

「其れ迄は、私は店からお休みを頂いております」

「そこまでやってくれとったんか。重ね重ね有難うよ」

「与作殿、ワシは今迄、名乗らずにおって本当に申し訳けなかったよ」

「いえいえ、とんでも御座いません。其れは一切、結構で御座います。何も言わないで下さい」

「私とはあまりにも身分がかけ離れておりますから」

「おい、おい、其れは違うぞ。侍、町人、百姓に格差、貴賎など有りゃせん。人間、皆一緒じゃよ」

 そして後は有無を言わせず一言発した。

「実はワシは出雲国の尼子国久じゃ」

 其の言葉を聞いて与作は、食事の支度をしていた手を休め床にひれ伏した。

「大殿様とは知らず無礼の数々、平にご容赦下さい」

 すると国久公は与作の前に ひざまずいて座り

「与作殿、手を上げてくれ」

 と両手を握って

「与作殿にも、鉄ちゃん、玉ちゃんにも助けて貰い仲ようなって嬉しいよ。此れからもずっとそうしてくれるか」

 そう言われた事が分かるのか鉄も玉もピョンピョン飛び跳ねながら大喜びをしている。

「そうじゃ、此れからはこうしょう。大殿様など七面倒くさい事をいうな。ワシは与作殿より歳上じゃから、師匠とでも呼んでくれるか」

「そして与作殿は大将じゃ」

「そんな馬鹿な、丁稚に其れは全く似合いません」

「いいや、此れがぴったりじゃ」

 与作はただ、苦笑いするだけであった。

「此れはワシと大将との内密の事じゃぞ」

 とニコニコしながら鉄と玉の身体を撫でている。

 与作と鉄は遅い朝飯を食べだした。其れを大殿様と玉が嬉しそうに見つめている。この時、与作の両手に竹刀タコらしきものが有るではないか。

 まさかとは思い聞いてみた。

「大将は剣術をやるのか」

「えぇ、何でですか。私はやりませんが」

「じゃがマメかタコが有るではないか」

「此れは何時もやっている薪割りの斧のせいなのです」

 然し、師匠にはすぐに分かった。自分は若い頃に剣豪と言われた程の腕前だ。

 師匠さんはこの時、思ったのである。

「この大将は一体何者なのじゃ」

 後ろ姿を見た時の隙の無い振るまいといい、風格といい只者ではないと思われ、此れが丁稚などとは到底考えられなかった。

 其れからお師匠さんと鉄と玉は日差しの良い外に出て行った。何やらあっちこっち走り周っている。まるで子供の頃の駆けっこの様だ。此れには皆んな大喜びだ。其れから暫くしてから小屋の中に入って来ると

「大将、ワシは体調が完全に回復したようじゃ。ほんまに長い間、迷惑をかけてすまなんだなあ。ワシはあの時、三次城から八幡山城迄、間道を抜けとる時にやられたんじゃ」

「ワシもここを出立せにゃならん。皆んなと別れるのが辛くてやれんのよ。じゃがワシにはやらねばならぬ宿命というものがあってのう」

「其れはよく存じております」

「じゃが、ワシがこっちに立ち寄った時は、今迄通りに付き合うてくれるかのう」

「其れはもう、私を含めて鉄も玉も大喜びをするでしょう。特に、玉は道の上で師匠さんに付いて看病して以来、自分の子供の様に思っているのです」

「すみません。要らぬ事を言いまして」

「そうか、そうか、玉母さんか、有難うな」

 鉄も玉も師匠さんが居なくなるのが分かるのであろう。大喜びをしている中にも一抹の寂しそうな表情が現れていた。

「お師匠さん、今日お帰りになりますか」

「そうしたいと思うとるんじゃがどうじやろうかのう」

「はい、其れは。でも先程、三次から帰って来ます時に主人に話していると回復具合を聞かれました」

「大分以前より良くなられましたが」

 と言うと、「そうか、じゃがのうマムシに噛まれた毒の血液の洗浄には段階を踏まにゃならんでのう。今日渡す朝昼晩の薬が最後で完全回復されるじゃろうて」

「と言われたました。お師匠さん、お忙しいでしょうが今晩だけ居ってもらえませんでしょうか」

「分かった。大将宜しく頼むよ。何と言っても命あっての物種じゃからのう」

「然し、ワシは幸せ者じゃのう。見も知らぬ人達からここまでしてもろうて。浅田屋には今会う事は出来んが宜しく言うとってくれんかのう。其れに大将、鉄ちゃん、玉ちゃん、本当に有難う」

 その夜は天下の大殿様と丁稚の与作に挟まれて犬の鉄と猫の玉が枕を並べて寝る、誠に奇妙な光景であった。

 翌朝、お師匠さんが目覚めると朝飯の用意がしてあり、皆んなは外に出てワンワン、ニャーニャー大騒ぎしながら、遥か向こうのお城を眺めているてはないか。

「飯を食ったら送って行くぞ」

 その声に中に駆けりこんだ。

 お師匠さんも手水鉢で顔を洗って来ると

「飯を食ったら出立じゃ」

「ウォーン、オゥーン」「ニャーニャーン」

 鉄も玉も与作やお師匠さんの言う事が殆ど理解出来るのだ。やがて朝飯が済むと

「お師匠さんボチボチ行きましょうか」

「あ〜あ、行きとうないのう。ワシャ、別れるのが寂しいんじゃ」

「じゃがワシの双肩にはこの地方の治安が掛かっとるからな」

「よしゃ鉄ちゃんも玉ちゃんも一緒に行くぞ」

 行くという言葉にすぐに反応して鉄も玉もそこら辺を走りまくっている。

 暖かい太陽の日差しを浴びながら並んで坂道を下って行く。鉄が先導する様に前を歩き、玉はご機嫌で師匠さんの懐の中から顔だけを覗かせている。

「お師匠さん、お加減は如何でしょうか」

「大将、何もかも身体の毒素が抜かれた様で全く快調じゃ」

「其れに短い間じゃったが、食いもんが違ごうただけで、これだけ変わるもんかのう」

「何せ、今迄は偏り過ぎとったよ。城の賄い方が、変な気ばかり使いおるからかのう」

 道中、二人は尽きぬ話しに我を忘れていたが、すぐ近くに城壁が見えて来た。

「お師匠さん、私たちはここでお別れで御座います」

「どおした、中迄付いて来んか」

「とんでも御座いません。百姓の倅が此処に入るなど、有り得ない事で御座います」

「分かった、分かった。此処で別れよう。そりゃえぇが大将、一寸、此処で暫く待っとってくれんかのう」

「鉄ちゃん、玉ちゃんにお土産をやるからな。ワシが持ってくるから」

 鉄も玉も賢い。此処へ来てから一切、大声で鳴かないのだ。

「鉄ちゃん、玉ちゃん、お師匠さんは、たまに此の城に寄って行かれるからな。よく覚えといてな」

 分かったのか、分からないのか、ジッと城壁をみつめている。

 城の侍達には見えない場所で待っていると、風呂敷包を抱えてお師匠さんがやって来た。

「待たせたな、皆んなのお土産じゃ、帰って食ってくれるかのう」

「有難う御座います」

 鉄は嬉しそうに尻尾を振りまくり、玉はお師匠さんの足にまとわりついている。

「処で、大将、今度は何時、休みが取れるんじゃ」

「通常なら明後日ですが、何なら明日も休みを延長してもいいのでが」

 お師匠さんは嬉しそうに

「そうか、そうか、ほんなら明日こっちへ来んか。言うても城へは来んじゃろうからな。城の上に今は全く使うとらん小屋があろうが、此処へ来てくれんか」

「其れならよく知っております」

「よしゃ、昼過ぎにどうじゃ、城の奴等には絶対に寄り付けさせんから。皆んな来てくれよ」

「有難う御座います」

「大将よ、ワシとお主の秘密の仲じゃ、あんまり畏まって物を言うまあで」

「エへへへ」

「楽しみにしとるよ」

 其の日、お師匠さんと別れて帰る山道の足取りの重い事。与作も鉄も玉も三日三晩、一つ屋根の下で一緒に暮らした事がいかに愉しく充実していた事か。

 特に玉は息子が自分の側を離れて行く様で落胆が大きかった。

「玉ちゃん、元気出せよ。此れから何度でも会えるからな」

 与作が懐に入れてやりながら、頭を撫でてやると安堵の表情を浮かべている。

「此れから帰ってから、お師匠さんに貰ったご馳走を食べような」

 食べると聞いて、鉄と玉は一目散に小屋目指して駆け出した。

 小屋の中に入ってから与作は、頂いた風呂敷包みを広げて囲炉裏の前に並べると鉄も玉も目の色を変えている。

「鉄ちゃん、玉ちゃん、よう頑張ってお師匠さんの面倒を見てあげてくれたな」

「お前たちが居なかったら、寒空の下で、亡くなっておられたかもしれんよ」

「有難うな、さあ、ご馳走をお食べ」

 と言うと行儀良く自分の物を食べだした。

 其れを終えると久し振りに何時もの習慣である読経を始めていた。

「お陰様でお師匠さんをお助けする事が出来ました。有難う御座います」

 と感謝のお祈りをしたのである。

 其の日は連日の看病疲れと何度も三次往復に疲れて夜半までぐっすり寝込んでいた。軽く飯を食べると又寝込んでしまった。

 朝目覚めると、鉄と玉はもう小屋の外に出て城の方を見ながらソワソワしていた。今日もお師匠さんに会えるのを知っており嬉しくて堪らない。

 与作が起きた気配が感じられ「ワンワン、ニャン、ニャン」鳴きながら戸を開けて飛び込んで来た。

「鉄ちゃん、玉ちゃん、朝飯じゃ。軽く済ませるで。昼にはお師匠さんがご馳走を食わせてくれるからな」

「其れから一休憩してからのんびり出発するぞ」

 鉄も玉も朝飯を食べるどころではない。とに角、お師匠さんに逢いたいばかりなのだ。外に出て城の小さな天守閣を一緒になってじっと眺めている。

「鉄ちゃん玉ちゃん、ボチボチ行くか」

 そう言われると一気に走り出した。一里程の下りの山道を早駆けし、与作たちが建物の前へ到着した時にはまだ来ていなかった。

 以前に、子供の頃、遊び半分に近くに立ち寄った頃には、この中から剣術の鍛錬でもしていたのであろうか、掛け声が聞こえていた。

 だが、今は全く使用していないのであろう、かなり傷んでいた。

 其の前で暫く待っていると、鉄が耳を立て、玉は鼻をヒクヒクしながら駆け出した。

 お師匠さんが城から出て来たのだ。でも鳴き声は聞こえない。

 間もなくすると鉄が風呂敷包を咥えてやって来た。玉はもう懐の中に入っている。

「大将、待たせたな。然し、鉄ちゃん、玉ちゃんはよう分かるな。ワシが城の中を移動しとる時から気付いておるんで。物凄い鼻と耳をしとるんじゃのう」

「其れは大好きなお師匠さんだからですよ」

 そして、お師匠さんは、其の建物の閂を外し戸を開けて中に入った。

 中は薄暗くカビ臭い匂いがする。与作も手伝って開き戸をこじ開けた。

 鉄と玉は板張りの床の上を走り回っている。

 其れから皆んなで車座になり其の前に弁当を開げだした。もう嬉しくて堪らない。

「そりゃえぇがのう、大将よ」

「何でしょうか」

「ワシは昨日思うとったんじゃが、お主の手は絶対に斧の豆じゃないで」

「正直に言うてみいや、何ぞ鍛えておろうが」

「はい、実は子供の頃から可愛いがって頂いた、すぐ近くに住む、お侍様の庭先で鍛錬されているのを縁側に座ってジッと見つめておりました。其れを見よう見真似でそっくりに山の中に入って、樫の木を削った棒を振っておりました」

「でも、絶対に教えは請いませんでした。何故なら私は百姓の倅ですから、剣など持てる訳が有りません」

「そうか、そうか、じゃぁ、ワシと一本手合わせしてみるか」

「とんでも有りません、お師匠さんと立合うなど、其れこそ罰が当たりますよ」

「大将、其れを言うなと昨日、釘を刺したじゃないか。大将とワシの関係じゃ」

「分かりました。でも今迄一度も相手と手合わせした事がないんですよ」

「そうか、其れならば此れから何時でもワシが相手じゃ」

 と言うと棚に掛けてあった何本もある木刀の前にやって来て

「すきなものを選べよ」

 お師匠さんは長く太めの木刀を手にして素振りをしている。

 与作は何を選ぶでなく、其処にある小さな小刀を手にした。

 そして二、三度素振りをして腰に差したのだ。

「オイッ、それじゃ勝負にならんじゃろうが、長いのを持てや」

 お師匠さんは何が何やら全く理解出来なかった。今迄に小刀の相手に対

 した事がなかったからだ。普通の並の相手ならば必ず長い木刀を選ぶものだ。

「いえ、私は此れで結構です」

 一瞬、ムッとしたが

 双方共に真ん中に進み出た。頃合いを見計らって一礼すると

「イザ!」「イザ!」

「何処からでも掛かって来い!」

 だが与作は腰紐に小刀を差し込んだまま抜こうとしない。両手はだらりと垂らしたままなのだ。

 お師匠さんは、なんぼ初めて対戦するというても、おかしな奴じゃなと首を捻っていた。

 すると其の内、瞑想をする様に目を閉じてしまった。

 お師匠さんは此の瞬間、上段に振り被ると面狙いに打ち下ろした。

「エェーイ!」

 ところが、軽く左側に身を躱された時には、右脇腹に小刀が寸止めされていた。

「参った!」

 此れが一本勝負の戦場であれば完全に殺れられているところだ。

「ウ〜ン」

 お師匠さんはこの思いもかけない勝負に度肝をぬかれたのであった。

「然し、凄い奴じゃな」

 と胸のうちで叫んでいた。

「よしゃ、もう一丁いくか」

 ところが小刀を最初から握り締めて対戦しだすと、ボロが出はじめた。

 初めて手合わせをすると言った通りお師匠さんに打ち込まれ出した。

 だが、何せ身が軽い。其の内、観察眼の鋭い与作は相手の心を読み切る様にな り、次第に手合わせに慣れだし、油断していると間髪を入れず即ぐに懐に飛び込 まれる。

 こうして対戦していて、お師匠さんに六、四の分があったが、何せ小刀で対峙しているのだ。

 其れにかなりの体力差が有る。長くて重い木刀で上から被せられると非力のうえに小刀では押さえ込まれてしまう。だから大小木刀がぶつかるまでに既に勝敗が一瞬のうちに決していた。

 通常の侍同士の木刀と木刀を打ち合わせる鍛錬とはかけ離れていた。

 そして双方が終わって一礼した。

「いやぁ、久し振りにええ汗を流したよ」

「然し、大将よ、何処で鍛錬したんじゃ」

「ワシも若い頃は一応剣豪と言われとったんじゃがのう」

「何時も、お侍様や家に内緒で、山の中で、あらゆる事を想定して千回は小刀を振っておりました」

「真剣での居合い、其れに、木刀での立ち回りとジッと庭先で眺めておりました。でも百姓の倅では刀など持てる訳が有りません。ですから護身の為に樫の木を削って小刀にして振っておりました」

「フゥーン」一流の剣豪でも其処までようせんぞ」

「然し、大将と始めて対戦したがな、いきなり勝負をすると大抵皆負けるで」

「こりゃ忍者剣法かもしれんのう」

「ワシがこっちへ来た時は、何時も顔を見せ立ち合ってくれんかのう」

「有難う御座います」

「ワシも楽しみにしとるで」

 と言いながら鉄と玉の頭を撫でている。

 後は美味しいご馳走を頂きながら皆んなご機嫌であった。

 特にお師匠さんは子供の様に鉄と玉と戯れていた。例え大殿様であろうと無邪気に動物と触れ合う様は、身分は違えども、与作と同じ人間である事をつくづく感じさせてくれた。

 お師匠さんは、歳の違う与作の為に、天下の大殿様の面子をも、かなぐり捨てて接してくれた。

 命の恩人だけではなく、文武両道に優れた一人の男として、与作を一目置く存在として見てくれていた。何れは、何に関しても世の中の役に立つであろうと、既にお師匠さんは先を見越していたのだ。

 次の朝、与作は、看病の為の休みを貰って以来、久し振りに浅田屋に何時もの様に早出して箒を持ちながら前の道を掃きだした。

 すると玄関戸を開ける主人が与作を見て一声 掛けてきた。

「オイッ、与作!お武家様はどうなった」

「アッ、ご主人さん、色々助けて頂いて有難う御座いました。お陰で完全回復され、お帰りになられました」

「浅田屋殿は、生命の大恩人じゃ、何れは、お礼に参るか、代わりの者を遣わすかもしれんが、忽ち、礼を言うとってくれんか。と言っておられました」

「ほうか、ほうか。でもそんなお礼など要りません。と伝えとってくれ」

「当然の事をしたまでじゃからのう」

「処で其の御方は何者じゃ」

 と急に聞かれ与作は言葉に詰まった。何せ、二人の秘めた約束事だからだ。

「あのう、今は、お名前や身分を明かす事は出きませんが、お師匠さん、とだけは申し上げときます」

「分かったよ。そりゃええが与作、お前も大分、薬屋の丁稚らしゅうなったのう」

「有難う御座います。でも仕事を休ませて頂き申し訳け有りませんでした。其れにこの間、大変勉強させて頂きました」

「そんなこたぁ、どうちゅ事は有りゃせんよ。其れに給金から差っ引きゃせんから安心せぇ」

「有難う御座います」

 このマムシ事件があって師匠さんと知り合って以来、一月くらい経った後、何時も小屋で寂しい思いをしていた玉が事件を起こしたのだ。

 後に師匠さんから空飛ぶ参謀忍者と言わしめたカラスのラー助を拾って来て雛から育てたのだ。縦横無尽に空を飛び交い物凄い能力を発揮して、その後全国でも稀なカラスが三次藩のお召し抱えになったのである。

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