マキナ:グロリア
どこから来たと言われても、別次元の過去からだとも、異次元ファンタジックワールドからだとも、脂汗を垂らしながら跪いて説明したとして、普通ならば理解などされるはずはない。未来らしく原子力式嘘発見器などでなければ嘘と断定され、下手をすれば国外追放の可能性だってある。
だがこの小童には、嘘をついてしまうほうがリスクが高いと感じる。俺が異常な状況下にあることは、既に知っているのだ。やだなぁ、なーんもないっすよ! なんて言ったほうが怪しまれかねない。
返答は、慎重にせねばなるまい。
「信じてもらえないかもしれないが、実はこの時代よりもっと前から来た可能性が高いんだ」
小童は一瞬呆けたような顔をしてから、頬を大きく膨らませ、やがて吹き出し笑った。
「アハハ! ウッソだー!」
なんだ、バカにされているのか。逆にこっちが恥ずかしくなる。
笑い声がなくなったと思えば、今度はしっかりと目元も口元も笑みを浮かべ、こちらを見上げている。
「────うん、でも嘘ではないんだね。驚いたよ。お兄さんの言う、この未来ですらタイムマシンは実現できていないのに」
「そうかそうか、わかってくれたならもういいだろう」
「僕の名前は
いやなぜ自己紹介を始めた。
「あ、ああ、俺は、御影創一だ」
思わず返してしまった。
「創ちゃんか。どう、お腹空いてないかな。奢るよ」
「気安く呼ぶな。確かに腹は空いたが結構だ。そろそろ解放してくれないか」
「それはできない要望だよ。創ちゃんを僕らで保護するよう、今しがた御達しが来たところだからね」
どうも言動に胡散臭さしかないと思えば、やはりどこかの機関のエージェント、といったところなのだろう。俺の今までの行動と、この郡山との会話を全て把握されている。
足掻けば厄介なことになりそうだ。また面倒ごとに巻き込まれてしまったな。
「それで、俺を保護してどうするつもりだ」
「こう見えて僕達は人道的集団なんだよ。まだ若い創ちゃんには学校に通ってもらいながら、しばらくは経過観察になるだろうね」
「学校? 一体なんのメリットが……」
俺の質問に郡山は「まあいずれわかるよ」と、片手を挙げた。特別何も起きないかと思われたが、頭上から何か気配を感じ見上げると、人を象った機械が降下してきていた。それは背部に円形の光輪を浮かべ、目の部分を緋色に灯しながらこちらを確認しているようだった。
やがて地に降り立つと、周囲の人々は嬉々としてその機械を撮影し始めた。俺の七倍はあろうその巨大ロボには、確かに見覚えがあった。
「グラディウス……マキナ」
「よくご存知で。乗り込むよ」
郡山が手を下ろすと、グラディウス・マキナは跪いてから、まるで迎え入れるように手の平を見えるようにして地につけた。
郡山に手を引かれ、手の平に乗ると落ちない程度の低速移動を始め、やがてその胸部の前でその手を止めた。
「これが僕のマキナ、グロリア。行くよ、これから君の住み、学ぶことになる『アルバヒル』へ」
横文字ばかりでとても覚えられそうにない。キラメキのネーミングセンスはどこへ忘れてきたのだ。
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