第16話 圧倒的不利。そして、形成逆転へー。ー4
襲いかかってくる兵士達を俺達は次々と撃破していく。
「水の精霊よ……その力を持って、敵を喰らい尽くせ……。"水乱流"」
「雷槍乱舞!!」
「紡ぎ、強くなりてかの者達に一筋の光をもたらしたまえ……。"攻撃強化"」
大きく螺旋状に渦巻き勢いよく進む水流、色々な方向に飛び出したり、方向転換する雷槍、そしてそれらの魔法を強化する川崎の攻撃強化の魔法。それらが一気に三人を襲う兵士達に襲いかかる。
「あがあぁぁぁぁぁぁ!!」
攻撃直後に悲鳴があがる。だが、悲鳴をあげたのは攻撃を受けた兵士達ではなく王女であるレミリーだった。
(ぐぅぅぅ……。まさかあいつらがここまでだったなんて……)
そう。レミリーは、これだけの兵士がいればあいつらが魔法を放つ前に勝負をつけられるだろうという慢心から魔法「共有」を解除しなかったのだ。まあ、それ以外にも魔法「共有」を解除してしまうとあの駒どもの位置を特定出来なくなったり、兵士達を自分の思い通りに動かせなくなってしまうから等の理由もあったが。とりあえずレミリーは、痛みに歯を食い縛り耐えながら魔法「共有」を解除する。
(ふふふ……。多少兵士達の自由が効かなくなったぐらい問題ないわ……。「魅了」と「支配」の魔法さえ無事ならば、兵士達は自動的に侵入者を排除しようとする……。さあ、私も反撃させてもらうわ……!!)
「我に背く者に如何なる追随も許さん……。"
ちょうど秀治のいる位置に複数の鋭い刃が飛んでくる。
「秀治!! 来るぞ!!」
蓮斗は兵士達を相手するのに手一杯でレミリーの魔法を防げる余裕はなかった。故に秀治に警告だけでもと思いそう言った。
「了解!!……光の精霊よ……我が道に仇なすものを拒め……。"光天拒絶"」
秀治の周りを光の結界が覆う。これでレミリーの攻撃を回避できるー。そう誰もが思った。その刹那。
「!?ぐあぁぁぁぁ!!」
「秀治!!」
「西川君!!」
レミリーの攻撃は光の結界に弾かれることなくすり抜け、あろうことか秀治を切りつけたのだ。
(なぜ秀治の結界をすり抜けた?あの刃は結界をすり抜ける性質を持っているのか?……いやそんな事よりもまずは秀治を助けなければ……!)
俺は複数の兵士を相手取りながら懸命に魔法を発動する。
「"抗う風輪月"」
切れ味の鋭い風の輪が複数色々な方向に飛び交う。"風輪月"によって俺が相手していた兵士達がスッパリ切られ、血を吹き出しながら倒れていった。秀治を襲っていた刃にも直撃し、真っ二つになった。
「た、助かった……ありがとう。蓮斗」
「おう」
「川崎。秀治に回復魔法を頼む」
「わかった。かの者に癒しと安らぎを与えたまえ……。"ヒーリング"」
川崎の魔法"ヒーリング"によって秀治の身体中の傷や疲労といったものが回復される。
「すまない」
「ううん。気にしないで」
「ところで秀治。さっきの魔法はなんだったんだ?」
俺はさっき考えていたことを口にする。レミリーの放ったあの魔法は間違いなく秀治の光の結界を貫通した。否、すり抜けたと言った方が適切かもしれない。
「……。多分だが、あの刃には"意思"が宿っていて自由自在に動く事ができるんだと思う。それで、さっき光の結界をすり抜けたのは……」
「……! 拒絶されたから……」
「そうだ。あくまで仮説の域をでないが」
(秀治の言う通りあの刃が"意思"を持っているとして、対抗手段は? この状況を切り抜ける方法は? いや……まずは一つ一つ片付けなければ……)
蓮斗が思考を最大限巡らせていると、
「あらあら。反撃はないのかしら。なら、こちらからどんどんいかせてもらおうかしら」
蓮斗達は事実レミリーに対して反撃していない。否、正確に言うなら反撃出来なかったのだ。兵士達の大群を相手にするので手一杯だったために。
(やばい……。ここで喰らえば俺達のうち一人はダウンしてしまう危険性がある……。一か八か賭けてみるか……)
「これでくたばりなさい!!……我に背く者に如何なる追随も許さん……。"
再び同じ魔法が秀治へ襲いかかる。万事休すかー。と秀治が諦めかけたその時ー。
「"拒絶する蒼天碧空"」
三人を取り囲むように青い障壁が展開される。
「無駄よ!!どんな障壁でも"意思"さえあればー」
ガキィィィィィ!!
レミリーの魔法は障壁を貫通することなくその場で消滅した。
「な……!?」
レミリーは自分の魔法が防がれたことに困惑した。王国内でレミリーの魔法を防げる輩はいない。ましてやレミリーは魔法師協会の中でもトップクラスの方である、魔法師協会幹部の長なのである。その魔法を防がれたとあってはさすがのレミリーも困惑するのも仕方がないだろう。
「おい……くそ王女……。覚悟しろ……!」
そして"拒絶する蒼天碧空"を発動した蓮斗は目の色を怒りにそめながら王女を睨むのだった。
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