世界にたった一人だけの職業

Mei

プロローグ

第1話 異世界転移

 天は人の上に人をつくらず。人の下に人をつくらず。

 これは福沢諭吉の言葉だ。簡単に言うと人は皆平等という意味だ。

 しかし時に、いや、常にか。うん、思うんだよ。

 この世の中に平等なんて言う言葉があるわけねーだろう!!そんなもんはきれいごとのまやかしに過ぎねーんだよ!!と。

 このことを今すぐにでも大声で叫びたいが、ここは自重だ、自重。

 そんなことを心の中でのたうちまわっている俺は、柏沢蓮斗。高校二年生だ。才能に恵まれず、努力には裏切られ(本人は全くしていない)、容姿は至って普通で読書が好きなどこにでもいるやつだ。因みに、今も席に着いて読書に耽っている。読んでいるのはラノベだ。

 たまにどこかの有象無象がキモオタだのなんだのほざいているが、ラノベやアニメの素晴らしがわからないやつなど話にならん。

 ガラガラガラっ。

 教室のドアが開き中に人が入ってくる。

「きゃあーーーー!!」

 途端に女子の黄色い声援が響く。これはやつしかいないと俺は確信した。

 やつの名前は#高峰 綾人__たかみね あやと__#。どこにでもイケメンオーラを振りまき、女を一撃で仕留める。秀才で、運動神経抜群の理想を絵にかいたようなやつだ。クラスのリーダー的存在である。やつの周りは常にキラキラしていて思わず腕で眼を庇う程だ。

「はあー。イケメンに無性に腹が立つ」

「奇遇だね。俺もだよ」

 こいつは、西川 秀治にしかわ ひではる。おれの一個前の席だ。おれの同類でもある。俺よりも勉強ができ、学年で1、2位を争うほどだ。因みに争う相手は、あのキザなイケメンこと高峰である。高峰がほとんど一位で、たまに秀治が一位だったりする。

 キザなイケメンが教室に入ってきた少し後にまた人が入ってきた。

「おおおおお……」

 今度は男子の方から声援が上がる。

 今入ってきたのは、川崎 春香かわさき はるか。学年一の美少女と呼び声も高く男子から毎日告白されているらしい。本人は全部突っぱねているらしいが。高峰も川崎に好意を寄せているらしいが告白には至っていない。

 ん?なぜ知ってるかって?態度見てりゃあわかるだろ。高峰なんか特に。

「お、お、おはよう。川崎さん」

「おはよう。高峰くん」

 ほら。あいつの幸せそうな顔。まるわかりだっての。因みに、高峰が川崎に好意を寄せていることはクラス内では周知の事実である。

 川崎は高峰と挨拶をかわすと、おれの席の近くまでやって来て、

「…おはよう。柏沢くん」

 にっこりと微笑みながら挨拶してきた。

「………おはよう。川崎」

 俺もそれに応じてにっこりと挨拶する。もしかしたら気持ち悪がられるかも知れないが。

 しかしおれの予想とは逆で頬をわずかばかり染めながら嬉しそうにソワソワしだした。

 そしてこれまたいつも通り男子たちから、鋭い嫉妬の視線を向けられる。

「何であんなやつが……!」

「川崎さんを呼び捨てとは何様だ!」

「このキモオタ童貞野郎が……!」

などと、様々な言葉がおれに突き刺さってくる。キモオタ童貞野郎とか地味にダメージ食らったよ?俺。川崎は相変わらず周りに気づかないし。挙げ句の果てには、

「蓮斗、頑張れよ」

とかいって自然と傍観者になり、俺を見捨てる秀治。くそう!味方がいないぃぃ……!

 川崎はまだ何か話したがっていたが、それを話そうとする前に。

「おーい。お前らー。席に着け。朝のホームルーム始めるぞ」

先生が開いていた前のドアから入り、前のドアを閉めた。

 それを聞いた川崎も渋々といった感じで自分の席に着く。最後に一回席につく前にこちらを潤んだ瞳で見つめていた気がしたが気づかないふりをした。

 今、教室に入ってきたのは坂井舞花先生。女の先生で名前に反して穏やかな雰囲気ではなくどこか鋭い雰囲気を纏っているように感じる。

 ……ふう。助かった……。あのままだったら俺男子の鋭い嫉妬の視線受け続けて意識失ってたっつうーの。川崎ももう少し周りを見てほしい。

 俺がそんなことを考えていると、

「8番。柏沢」

 出欠の確認で呼ばれたので、

「はい」

 返事をしておいた。

 しばらくして出欠確認が終わったのか、

「よし。全員いるようだな」

 先生はそう呟いた。そのあとも今日についての諸連絡などをした。それが終わり、クラスの皆は解散だと思い席を立とうとする。

 だが、

「待て。お前たち。話しはまだ終わってないぞ」

 先生から静止の声がかかる。クラスの皆は他に何の話があるのだろうかと疑問を浮かべながらも席に座り直す。

「魔力よ。今我が手に集いて陣を形成し、その真価を示せ……」

先生がなにやら詠唱めいたことを始めた。

「おいおい……先生ついに中二病に目覚めたか……」

「先生大丈夫か?頭でも打ったんじゃないか?」

 などといった声が聞こえるが俺はそれどころではなかった。足元を注目するとうっすらではあるが、魔法陣が浮き上がっている。とても複雑で、言語もこの世界のものでは無いものがきざまれていた。やがてその魔法陣は青白い光を放ち出した。

「おい!皆逃げろーーーー!!!」

 俺がそう叫ぶも時すでに遅し。

 魔法陣の放つ青白い光は徐々に強くなっていき、俺たちは意識を失った。

 

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