第14話 瑠奈side



勇羅達が東皇寺学園の暗部に触れる数時間前の事。


「そうですっ、そのまま念を集中して…」

「むむっ…ん? むぐ、むぐぐぐぐぐぐっ!」

「さ、彩佳先輩っ。思念が乱れてますっ、雑念が多すぎますよ~」


瑠奈と琳は授業が終わった放課後。早速メールで彩佳に連絡を取り、一緒に異能力制御の特訓を行っていた。今度は真宮家に招待してだ。特訓の練習をしている中庭では瑠奈の飼いミニブタ・角煮がのん気に昼寝している。


瑠奈個人としては泪も家に招待したかったが、泪は用事があるのでとキッパリ断られた。それでも困った事があれば報告して欲しい、と申し出てくれたのは有りがたかった。


「はあぁぁぁぁ…。思念を集中するとは言え…む、難しいですよぉ~」


何だかんだで彩佳は、数ヶ月前に異能力者として目覚めたばかりだ。思念や精神の安定が落ち着き、力の制御に慣れるまでまだまだ時間が必要だろう。


「先輩の異能力はどんな感じなんです?」


異能力にも当然種類と個人差がある。先程まで念動力の制御を中心に行っていたので、瑠奈達は彩佳がどんなタイプの異能力を使うのは見ていなかった。


「私の異能力ですか?」

「はい。異能力には色々あって、火を出したり風を吹かせたりとか沢山あるんですよ」

「おおっ! それはまだ使ってませんでしたっ!」


彩佳は自分が持ってる異能力が何なのかは知らなかったようだ。雪彦が突拍子もなく地面にうつ伏せにされた辺り、使ったのは念動力の方だろう。異能力に沢山種類があると聞いた彩佳は一段と目を輝かせる。


「い、異能力って制御出来れば沢山使えるんですね!」

「まっ! まってまって!? 今制御してるのは念動力なんですよ!」


異能力の制御するには念動力の制御から。瑠奈も琳も普通の人と変わりない日常を送るために、両親から幼い頃より徹底的に制御を叩き込まれたものだ。二人はこうした訓練のお陰で一部の友人を除き、現在も異能力者である事を悟られず過ごせている。


「うんうん! それに異能力は基本一人で一つまでなんです。二つ以上異能力を持った人は私達今まで見たことないんです。それに実際どんな力なのか、自身で使って見ないと分からないんです」


異能力を二つ以上持っている能力者を、瑠奈達は今まで見たことがない。茉莉から何度か聞いた事があるが仮に二つ以上持って居たとしても、身体の見えない内部でお互いの異能力同士がぶつかり合い、肉体的精神的な反動が激しくなるのだと言う。


「でもさ、何で東皇寺の生徒会は異能力者狩りなんて始めようと?」

「ごめんなさい。私もそこまで詳しくは…」

「瑠奈。あんまり踏み込み過ぎない方が」


「その東皇寺生徒会の事なんですが…私、実は学園の生徒会苦手なんです。何だかあの人達、得体がしれないって言うか」

「得体がしれない?」


彩佳の複雑そうな表情を見た瑠奈達は、怪訝な表情をしながらお互いの顔を見合わせる。得体の知れない生徒会などこれまで聞いた事がない。宝條の生徒会は余程の馬鹿な行動をやらかさない限り、比較的寛容だから、異能力者である自分達の感覚が麻痺してるのか。


「それは…」



―…ガチャ。



「ただいま~…」


彩佳が何か言おうとしかけた時、丁度茉莉が家に戻って来た。しかし声の様子からなんだか疲れているみたいだ。


「姉さんお帰り…って、どうしたの?」


憔悴仕切った茉莉の様子に、琳が心配して声を掛ける。


「瑠奈達に残念なお知らせ。今帰って来た私と一緒に学校からの来客もいるわ……。進んで騒ぎに巻き込まれようとする、好奇心旺盛な生徒達が来たのよ…」


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