第3話 勇羅side
―午後三時半・探偵部部室。
「泪先輩いないのに、僕達だけで勝手に部活やって良いの?」
「泪さん。周りに迷惑掛けないなら、俺達だけで部活動やっても良いって言ってたよ」
「それもそうか」
その日の放課後。いつもの探偵部部室で、今日は何をしようか話し合っている勇羅と雪彦。その場にはちゃっかり万里もいる。探偵部の活動方針は、立ち上げ当時からの部員だった泪が一番理解しているし、こちらが余程の騒ぎを起こさない限り、部員にも口出ししない事は勇羅達も知っている。
「瑠奈ちゃんと琳ちゃんは?」
「瑠奈は今日は調理部の方へ行ったよ、実習で豚の角煮作るって。琳ちゃんは家の用事あるから、部活に参加出来ないってさ」
「おおおっ!! 遂に! 遂に儚(はかな)げなピンクの角煮が、肉屋へ連れていかれ」
「万里先輩。いつまで角煮引き摺(ず)ってんですか…」
「いいや。瑠奈ちゃん、豚の角煮作るから場を和ませようと」
「物騒だからやめなよ。大体角煮に使うのはスーパーの豚バラブロックだろ」
珍妙発言を次から次へと連呼する万里に、突っ込みを入れる二人。万里も黙っていればそれ相応に整った容姿なのに、いざ口を開けば出てくるのは、理解不能かつ珍妙な電波発言とは如何(いかが)なものか。
「この女が、皇の血縁者だと思うとこの僕まで品性が疑われるわ」
「なりふり構わず女の子に声掛けまくってる以上、雪彦はもう疑われてる。この前も三年の先輩に声かけて顔面を奇麗に殴られた哀れな男よ」
「やかましいよ!!」
今だ続く雪彦と万里の不毛な漫才に、半ば引き吊った苦笑を浮かばせる勇羅。泪からの又聞きだが、二人はクラスでもこれが平常運転だと聞かされている。しかしいつも探偵部で見ている光景なので、勇羅には珍しくもなんともないのだが。
「いっその事このまま残念なイケメン路線を捨て、いじられお笑いキャラを定番にするのも」
「そ、そうだっ勇羅ちゃん。今日は学園外からの活動なんてどうかな~?」
これ以上、奇怪な怪電波を放つ従姉に構ってられるか! と、言わんばかりに何とか話題を反らす雪彦。雪彦の意図を察した万里も少し考えた後、そそくさと窓際の椅子に座った。
「そういや最近、学園内ばっかりでの部活動ばっかりだったね」
「和真お兄さまがいた時は学園外でも活動してたよ」
この宝條学園で、探偵部を立ち上げた張本人でもある学園OB水海和真(みずみ かずま)。色々な意味で破天荒な人物だったらしく、当時部員だった泪も散々彼に振り回されたと聞いている。
「…姉ちゃんから色々聞いたな。この探偵部立ち上げた和真兄ちゃんも、相当やらかしてたって」
「それでも学園内じゃ、和真さんの悪い噂聞いてない」
「そうだね」
前部長和真も探偵部で散々やらかしたのに、学園内での悪評は殆ど出ていなかった。勇羅も雪彦もそれだけは疑問に思っていたが、もし和真が過去学園外で色々やらかしていたなら、相応に辻褄が合うし納得もいった。
「よし。今日の活動は和真お兄さまの悪評探し」
「もちろん、泪さんには内緒でね」
泪が和真を慕っているのは、勇羅や雪彦達も知っている。だから今回だけは泪にばれてはいけない、今日の活動内容に、前部長の弱み探しの口実が出来ニンマリと口を歪める三人。
万里に至ってはもう眼鏡まで光っていた。
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