蝙蝠

 まだ頭も覚めぬ早朝の事である。ゴミを捨てようと外に出たのだが、家の前にある木に何かがぶらさがっているのが見えた。鳩か雀かと思ったのだが、もしそうであるならば枝の上に居るはずだ。鳥ではありえない。よく目を凝らしてみると、そいつは蝙蝠であった。既に日は出ているし、私も生活の一部を始めているというのに、なんと暢気な奴だろう。

 私の家の周辺は、特別に蝙蝠が多く生息しているわけでもない。遠くの空を飛んでいるのを何度か見掛けたぐらいで、こんなにも間近に、しかも日の出ているうちに見るのは初めてで、思わずじろじろと舐め回す様に見てしまった。そうして観察した蝙蝠は、はっきり言って気味が悪かった。虫の様な羽に、鼠の顔がついている。人を脅かすためだけに生まれてきたのではないか、と思うほど不快な格好をしていた。私は背筋に冷たいものを感じて、集積場まで無心で走った。

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