24-6 反撃だ! 戦鬼軍団をぶちのめせ!!
「かかったよ、早速やってみなって!」
「言われなくとも、わかっておる!!」
「そうかそうか、まさかここで動くとはなぁ」
「……余はこのまま終われない、それだけだ!」
リーンフォース・フンドーを駆使して、ロクマストはバグソルジャーを得意戦局の深海へと引きずり込んでいく。ソラが頼んでいないにも関わらず、エンゲストを救いに出てしまったロディの姿勢に対し、アグリカが少し気をよくしていた。当の彼は素直に認めていなかったものの、
『こう、引きずり込んで勝てると……!!』
「リーンフォース・スクリュー、メーザー・サイクロンだ!!」
『な、なぁぁぁぁっ!!』
フンドーで至近距離までバグソルジャーを引きずり込んだ時、相手はデリトロス・ベールを手に取ろうとした途端に、一気に尻尾のリーンフォース・スクリューを射出して、背中を突く、同時に正面からメーザー・サイクロンを放射して一気にバグソルジャーを粉砕すれば、
「……ど、どうだ! 余の力を思い知ったか!!」
「まぁそうだけどよ……無駄多すぎだろ」
実際プレイヤーとしてどん尻であったロディの腕を考えたならば、実戦で1機を撃墜した事は意外でもあり、ロディ自身が思わず胸を張ってしまう程であったが――アグリカが冷静に突っ込むように、量産型1機を相手にして、メーザー・サイクロンだけでなく、1発しかないスクリューを撃つまでもない、まだ敵が残っているからこそ彼女の主張は正論となるが、
「何、獅子は兎を狩るにも全力を尽くすというではないか」
「……こいつ、おめでたい奴だな」
「余の力を思い知らせてやった後だ、何とかなるに違いな……!!」
当のロディはこの1機を撃墜したことで異様に自信が生じさせていたが――追随する2機のバグソルジャーは、タウファンガーで蛇腹状のアームを挟んで砕かんとしていた。さらにベールを胸部に突き立てたが
「メ、メーザー・サイクロンだ! ここからぶち込んでやる!!」
「おい待て! 今やると潰されるぞ!」
2機もろともメーザー・サイクロンの餌食にする――2機がかりの攻撃に多少怯えながらも、1機仕留めた事がロディの驕りを増長させ、メーザー・サイクロンで餌食にすればよいとすればアグリカは慌てて待ったをかける。
「潰される……もしや!?」
――潰されるとの言い回しから、ロディでも危険性に気づいた様子だった。バグソルジャー2機がベールで胴体を貫いたならば、堅牢なロクマストだろうとも水圧で自壊する恐れがあり、セーフシャッターが降りる前に、この場から離脱する必要があると電次元ジャンプで飛び立ち、
「まぁ、一度海から上が……って危ねぇ!!」
動きを封じられ、ベールで胴体を貫かれるリスクを想定するならば、ロクマストが浮上する術も妥当とアグリカが感心したのも一瞬――なぜかバグハルバードの目の前に立ちはだかっていた。タウランシスカが振り下ろされた時、咄嗟にトート・シーカーを割り込ませて、両断される事で身代わりの役目を果たすものの、
『おい! まともに場所指定しないで電次元ジャンプやったのか!!』
『余、余は負けてない、貴殿もそう思うなら余は負けてない筈だ』
アグリカが怒号を飛ばした時点で、ロディは常心を喪っているに等しい。半ば自棄になったように彼が猛攻を畳みかけるものの――タウフランシスカが振り下ろされると共に、機体そのものがにロクマストが仰向けに倒れんだ。この時を狙ったように、バグソルジャーが浮上し、タウファンガーで両腕をかみ砕いて反撃に移る。ゲイリー形態の鼻に位置するバルカンを炸裂させてロクマストは抵抗するものの、火力からして半ば無意味に近い。
「やべぇな、これちょっとダメかもしれないわ」
「そう簡単にあきらめるな! よ、余はまだこんな所で死ぬとは諦めとらん!!』
「そりゃはお前の腕が悪いんだろ。一瞬期待したんだけどよ」
――多勢に無勢。窮地に追い込まれていくにつれて、ロディの諦めの悪さも益々増していたが、アグリカは腹をくくれと静かに口を開く。まるで他人事のようだが、実戦で曲がりなりにも1機だけ仕留めた時、多少は認識を改めようとしていたのだろう。肩を落とす彼女の目が憂いを帯びており、
「い、嫌だ……余が何も、何もできないで終わる事は!!」
『無力に泣きながら死ね……何!!』
自分もまた何もできず終わるのか――死を隣り合わせにして、流石にロディが至らなさと向き合わされた時、バグハルバードのタウランシスカが振り下ろされた瞬間だった。突如天へと挙げた両腕に握りしめられた斧は微動だにもせず、それどころか自分の両腕が握りしめられて入り音が軋むと共に、タウ・ハルバードからも軋む音が響き渡ると、
『悪いのぅ。ここで引導を渡されたら困るぜよ』
『き、貴様もハードウェーザーだが……!!』
『そうよ、こう禍々しい貴方はあたしの趣味じゃないから』
バックパックのブースターを展開させて、ブラウンのハードウェーザーは直ぐにバグハルバードの腕を取り、ジャイアントスイングの要領でぶん回し、両腕を射出すると共にバグソルジャー2機への質量弾のように投げ飛ばす。バグハルバードの直撃と共に、戦鬼軍団の3機が海へその身を沈み、
『ふ、ふごご……』
『ハ、ハルベルト様をあぁも簡単に!』
「あらいけないかしら? てっきりその覚悟があってきたんだと思ったけど」
「やるかやられるかじゃ、悪く思わんでほしいのぅ!」
ワンオフのバグロイドを軽々と投げ飛ばす――戦鬼軍団の面々からすればロクマストと一転し、ジーボストに対しては只者ではないと認めざるを得なかった。ラルとリズはいつも通りの悠然とした雰囲気を漂わせていたものの、二人の姿勢も猶更今の彼らを威圧させるには効果があった。
『もう、ラル! 僕より目立たないでよ!!』
「すまんのぅ。ここでわハッタリをぶちかまさんと、救えんと思ったからのぅ」
『しょうがないなぁ……僕もさっさとロディとアグリカを回収するよ!』
ジーボストが早々に切り込みをかけた様子へ、シャルが少し自分の立場がないと突っ込みをかます。ただラルは自信ありげに自分のすべきことを答え、実際その役回りをやってのけた事もあってケロリと笑ったまま、これにヴィータストも自分の役回りを果たそうとすぐさまロクマストの元へ向かい、エレクトロ・キャノンを連射していく。
「そうしてくれんかぇ。その間わしがおんしらをしっかり守っちゃる!!」
『面白いですぜ、アルバトーレ様……先程のハードウェーザーより骨があるからな』
ラルはヴィータストとロクマストを自らの巨体で守り抜くように激励の言葉をかけ、戦鬼軍団を相手に、ジーボストはその手を大きく広げた。海中から浮上し、体勢を立て直したバグハルバードに対して睨みを効かせつつ、思いっきり啖呵を浴びせるのであった。
「おんしらかかってこい! わしが相手になっちゃる!!」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「……」
「モニターが復旧したわ! 太平洋かしら……」
ブレスト・ファイターは甲板を地に向けるような状態で降下しつつあった。ゼット・バーストによって発動させた非常用のエネルギーは、強引にエネルギー・フィールドを突き破るためにほぼ消耗した状態。
ブザーがコクピットに鳴り響いている状況から既に飛ぶこともままならない。ただ甲板に内蔵されたエアクッションがブレストの全体を包み、冷却ガスを噴射する事で急速な落下に伴う断熱圧縮の脅威から辛うじて逃れていた。
「そ、それよりさ、シャルのアイデアがなかったらどうなってたかな! ブレストがいくら大気圏突入出来ても」
「あぁ……」
本来ブレストはファイター形態で大気圏突入・離脱が可能であった。しかしウイング・シーカーをイーテストに託した上、本体のエネルギーが既に尽き欠けているのならば、ブレストの速度を調整する事は容易ではない。
非常事態を想定し、シャルが空いた容量から内蔵型バリュートのデータを入れたことが、今、功を奏したともいえる。かくして大気圏突入のミッションをどうにか乗り越えたものの、玲也の顔はただ茫然とした様子。ニアがどこかおどけたようにリアクションを取っていたものの、
「……本当ごめん。あたしが余計な事を言ったから」
「イーテストが一瞬ロスト……か」
バリアーを突破し終えようとした頃、ニアのモニターにはイーテストの信号が一瞬ロストした事に気づいた、いや気づいてしまったというべきか――思わず彼女が動揺してイーテストの無事を確認しようにも、バリアーがブレストの突破を許した直後に再度展開した為、大気圏外の状況を確認する術は再度失われていたのだ。このことを知らされ、気落ちする玲也に突っかかるどころか、寧ろ自分の落ち度だと素直に頭を下げていたが、
「いや、アイラの事を考えれば俺がここで挫ける訳には……暑いな」
「あんた……」
「シンヤさんの事に比べたら、俺はまだ戦える……戦わなければ」
『玲也君! 聞こえるか玲也君!!』
今の玲也は前かがみになって、額からの汗をぬぐおうとしていたが――彼の後姿も声も震えは少なからずニアにも感じ取れた。それでも、彼は自分自身がここで崩れてはならないと忽然とした姿勢取ろうと必死だった。アイラが味わった苦痛に比べれば、意気消沈していられないと自分自身に言い聞かせながら、握りこぶしを震え上がらせていた。そのさ中エスニックからの通信がポリスターへと届き、
「将軍……すみません、どうにか戻ってきましたが」
『よく帰ってきた……といいたいけどね、ドラグーンも二手に分かれて戦っている最中だよ!!』
気落ちしている玲也の心情を酌みつつも、今の戦況は彼へ、慰めや労いの言葉をかける余裕もなかった。エスニックからの話によるとドラグーンのハードウェーザー部隊はインド洋と南大西洋の二手に部隊を分けて戦鬼軍団と応戦しつつあり、ラル、シャル、そして才人の3人がそれぞれ戦っている事を聞くや否や、
「ソラとロディが勝手に出てるみたいだし……」
「……俺がいない間に色々あったとは」
ソラとロディが無断で出撃した挙句、窮地に陥った事に対し玲也は何とも言い難い表情を浮かべていた。アンドリューからの緊急通信を受けて、真っ先に自分が救援に出撃したものの、その間にチームの統制が取れずに発生した事態でもある――リーダーとしての自分の務めを果たせていないのではと痛感するものの
「過ぎた事を後悔してる場合じゃないわよ! それこそ直ぐ助けに入らないと!!」
「……そうだ、すみません! 直ぐそちらに向かいます!!」
リーダーとしての責務を果たせてないと悩む玲也へ、ニアは少し声を荒げつつも、彼に今何か悔やんでも始まらないと、安心させるように微笑みかけて檄を送る。このような状況に対し、彼女がパートナーで頼もしいと玲也も微かに微笑みながら、次の手を打つ姿勢を示す。
『ニア君の言う事も最もだけど、大丈夫かい!?!』
『そうじゃ、出来ればわしからも無茶せんでほしいのじゃが……』
「俺はまだ戦えます! ネクストを直ぐよこしてください!!」
ブレーンがオーバーワーク気味の玲也を案じるも、今の立場と状況からここで指を咥えたまま見守ってはいけないと救援に向かう姿勢を示す。その為エネルギーが尽きる寸前のブレストに代わりネクストを電装させるように伝え、
「ちょっと悔しいけど、リンの方が向いてるからね/……早く急がないと!」
「あとクロストも電装スタンバイさせてください! この戦いで必要になりますから」
『なんじゃと? 流石の君でも2機同時にハードウェーザーを動かせない筈じゃが……』
『シャル君と組んだ上で、才人君の救援にも回るつもりだね……直ぐ準備させるよ』
玲也がネクストを駆使する思惑は、ブレーンのビジョンと少し異なるものダッシュ―エスニックが一応彼の手の内を理解した上で承諾した後、着水したブレストの目の前にて、緑色のフレームが生成されつつあった。装甲が装着されていくと共に、見慣れたネクストの姿が電装されつつあり、
『玲也さん、ニアちゃん! 大丈夫ですか!!』
「大丈夫だ……すまん、先に行かせてもらう!」
リンからの呼び声に応えるように、玲也自身自らの身体をポリスターで撃つ。その途端我が身はネクストのコクピットへと飛び移り、ネクストがカイト・シーカーから分離させると共にその体をすぐさま変形させる。縮小される全高と共に、頭部がボンネットに収納され、下半身が上半身の真後ろへ一文字に伸びる。タイヤが展開されると共にビーグル形態が海原をホバーで滑走すると共に、ブレストの元へ急ぎ、
「ここよ! 出来れば早くして!!」
「わかった! 早く俺につかまれ!!」
既にブレストの電装に必要なエネルギーを供給する余裕がなく、電装が解除されれば、ニアもハドロイドスーツから解除され――いつもの私服姿のまま、南太平洋で立ち泳ぎをして浮かんでいる少しシュールな状況であった。その中でもポリスターを海水に漬けないと必死にあげる彼女の左腕を掴んで、引っ張り上げる。
「ニアちゃん、大丈夫ですか?」
「ありがと……でも、今は玲也の方が辛いからさ……」
ネクストの後部座席へと座るニアは、リンの操縦で再度ハドロイドスーツ姿へと早変わりする。彼女の気遣いに感謝しつつそれより玲也の方が辛い立場だと触れるも、
「シンヤさんが……アンドリューさんとリタさんも」
「まさか……ニアちゃん、そんな事が!?」
「まだ分からないから、信じたくないけどね……でも」
「アンドリューさん達の分まで俺は戦う……それとな」
――最悪の事態でないと祈れるのならば、この場で祈っただろう。ただ玲也としてはここで悲嘆に暮れるよりも、地上での戦いを早急に終わらせなければならないと捉え、気丈な姿勢を見せつけた上で、
「かかってこいバグロイヤー! 俺がこの手で血祭りにあげてやる!!」
――玲也は叫ぶ。ただ胸の奥から込みあがる憤怒と悲嘆を吐き出すように。バグロイヤーそのものを、そして今大気圏内で破壊の限りを尽くす戦鬼軍団を倒す事を。この手で八つ裂きにした上で、叩きのめさなければ気が済まないと。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
次回予告
「アンドリューさん……見ていてくれ! インド洋、大西洋で暴れ狂う戦鬼軍団を相手に俺は彼らを血祭りにあげるとここに誓った。シャル、お前ならウィストとのコンバージョンを扱い熟せるはずだ! 才人、待っててくれ! クロストとのコンバージョンを見せつけてやれ!! 思い知れ戦鬼軍団、クロストを見くびるな……!! 次回、ハードウェーザー「今だ! イグナイテッド・エクスカリバー」にクロスト・マトリクサー・ゴー!」
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