8-4 いつわりの休戦条約

「……ということです、サーディー様」

「全くあれだけ負けない負けないといった結果が和睦だなんて! 私を舐めてるとしか思えないわ!!」


 ――月面にて、艦船用のドッグには2隻の巡洋艦“ペレス級”が出航を控えていた。大気圏内外に対応したその艦のブリッジにはサーディーの姿があり、ゲノムから前線へと赴いたものの、メガージの報告に激昂して地団駄を踏む。


「ゼルガ総司令は既に地球側のガードベルトステーションで会談中です。この会談が終わるまでは双方の戦闘行為は一切禁止との事でして……」

「勝手にそこまでだなんて、総司令官から越権した行為だわ!!」


 メガージが直接サーディーへと、今月面に不在のゼルガの動向を報告する。元々彼がサーディーの部下であり、名代としてゼルガの監視を兼ねて副官へ着任したに過ぎない筈だが、密告している彼の表情には何故か後ろめたさと苦みが交錯していた。ゼルガが意に反した和平を独断で進めた事に対してかは定かではない。


「そしてこのままですと、使節の人々が地球へ送り返される事になります。おそらく電次元でゼルガ総司令が密かに匿っていた面々と思われまして……」

「……メガージ、それをぶち壊すことは考えたかしら?」

「いえ、既に双方が休戦条約に応じてしまっています。この状況で戦闘行為を行うことは自殺行為でしょう」


 休戦条約が締結された状況で戦闘行為を行えば、違反者として処分される内容が含まれている――慎重な対応が望ましいと主張するゼルガへ少し不満げな表情をサーディーは浮かべるも、すぐさま別のペレス級に顔を向ける。ゼルガ子飼いの部下でもあるメイド服の少女たち“パッション隊”に誘導される形で使節の面々が乗船しており、そのまま大気圏を突破して彼らを地上へ送り届けるのであろう。


「アルファがその所ちゃんと手を回しているのよ。彼には手柄を立てたら処分は取り消しって伝えてるわ」

「……」

「あらどうしたの? 卑怯云々とかじゃなくてこれも作戦の一つと言ってちょうだい」

「いえ……ただ、貴方が前に出ざるを得ない状況を思いましてな」


 表向き使節たちを乗せたペレス級の護衛として、サーディーは前線へやってきたそうだが、滅多に出てくることがなく、戦果の及ばない本土で胡坐をかく人物が前線に出た事に不安を覚えない方が無理に等しい。


(作戦の監視とはいえもっと他に適任の者がいたのでは……人材にせよ物資にせよバグロイヤーは既に疲弊していると認めろというのか)


 戦闘を継続する事はバグロイヤーの敗北につながるとメガージは考えつつあった。ハードウェーザーの登場で当初優勢だった自軍が敗北を重ねるようになった、五番隊、四番隊が既に壊滅し、三番隊も少し前に同じ末路をたどった。現状を把握していない本土の上層部が断固抗戦を続ける限り明日は我が身かもしれないと。


(そのハードウェーザーを次々と捕らえて、地球側に揺さぶりをかけるゼルガ総司令の作戦は一理ある……)


 バグロイヤーで唯一ハードウェーザーを擁する者としてゼルガのとった行動をメガージは内心評価に値する。地球側がハードウェーザーに依存した状況で自分たちを圧倒しているのであって、そのハードウェーザーを削いでいった事で、双方の力関係が再度変わるとみていたのだ。ハードウェーザー1機で複数のハードウェーザーを立て続けに相手して捕らえたのは彼の腕によるものだと。


(だが、その力を味わったことのある私からすれば……そう終わってはならない方だ)


 最も、地球側に揺さぶりをかけての話し合いから二人の描く展望が異なるものと歯がゆさを抱かざるを得ない。メガージが他の前線のものと異なりゼルガの能力を評価する背景には、かつて彼と刃を交えた事があった為だ。


「ゼルガ総司令がその気になられたらこうする必要も……」


 メガージは愚痴を漏らす。こうせざるを得ないのは自分が本来サーディーの部下であるが故か、ゼルガと描く展望が異なっていたか――憂いの走る表情は誰に向けてかは定かではない。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「将軍、すみません……!」

「もう何なのですの!? 玲也様は今日非番のはずですのに……」


 その頃、ドラグーン・フォートレスのブリーフィング・ルームにて玲也たち3人が到着した。アンドリューとリタ、そしてシャルとジャレコフの4人が既に控えており、奥の大型モニターへブリッジで指揮を執りながらエスニックの姿が映されている。


『申し訳ないエクス君、玲也君も休みの所悪いね』

「いえ……急な呼び出しですから何か重大な事がまた起こった筈ですね……」

『全くもってしてそうだ。再生を頼むよアンドリュー君』

「あいよっと」


 アンドリューがポリスターに届いた音声データを再生しようと操作を行う。それから少ししてざらついたノイズ音がしばらく続いた後に声が聞こえた。


『こちらコイ……ゲノムのレジスタンスに保護されてるわ! サンも一緒に月から送り出されて』

「コイさん!?」

『ブラハートでハドロイド計画を再開させる予定……ハドロイドが4体……明日……』



 そこで通信は途絶えたものの、サンとコイは電次元で無事との可能性が生じていた――玲也は驚くとともに少し安どの表情を浮かべる。そんな彼の様子にアンドリューは密かに微笑みを作るものの、


「最もまだ安心できねぇ。あいつらを電次元から救わねぇといけねぇからな」

『ビャッコに届いたメッセージをカプリア君に送信してもらった。アンドリュー君の言う通りコイ君達を救出しなければいけないのだが』

『生憎ビャッコのハードウェーザーは私だけで……動くことが難しい』


 その上であえて先の問題にアンドリューは触れる。この問題を認識すれば玲也の表情が再度真剣なものへと変わり、エスニックもまた本題について口を開く。


「ということで、電次元への入り口があると思われる月へ誰を向かわせるからだが……」

「なるほど、それを決めるために今回……って」

「ちょっと? あたしは別に構わないけど、何で玲也なの?」


 カプリアが動けない状況のため、おそらくドラグーン、フェニックスからの6チームの内誰かになるであろうと玲也は想定していた筈だが――アンドリューもシャルもまた同じ方向を、手前の席に座る自分へと視線を向けていた事から、思わず彼自身も指さしてしまい、。


『コイ君たちの救出と電次元との通信の確保に、ハドロイドの回収……色々あるけどもね』

「リンのタグを修理しないといけないからみゃー」


 またもブリーフィング・ルームの扉が開いた。メルとブレーン、ラディに挟まれながらリンが現れるものの彼女の表情はどこか晴れない。無理して笑顔を作っている様子でもあった。


「ちょっとメルさん!? 結局リンは修理できなかったって事?」

「いっとくけどメルはチンプンカンプンじゃないみゃー。ここに必要な部品がないからいけないんだみゃー」

「必要な部品……?」

「どうやらニア君達が最新の第3世代との事で第1、2世代のタグと部品の規格が異なるらしいんじゃよ」


 アンドリューに頼まれてメルがフェニックスから出向したとの事だが、彼女でもリンのタグを直せないのかとニアが食って掛かる。自分の腕が至らないように思われて、彼少し不服そうな様子でメルが理由を説明する。ハドロイドのタグの内部構造について、まだ把握していないところもあった玲也にブレーンが詳細を触れており、


「まぁ博士の言う通りだみゃー。第2世代までは互換性があると確認していたみゃー、けど第3世代が互換性ないみゃー」

「なるほど……」


 メルが電次元から転送された時は、第3世代のハードウェーザーが存在していなかったのでやむを得ない所もあった。彼女のいう互換性はポリスター・ガンの材料に使った第2世代までのタグのスペアから確かめていたのかもしれない。


「ごめんなさい、私のタグを修理するには電次元へ向かわないといけないようなのです……」

「リンが謝る必要はないわよ! ったくゼルガという奴が余計なことするから!!」

「確かにそうだが……」


 ニアの怒りはここにいないゼルガに向けられた。玲也自身内心消されるかもしれない状況の中、タグを破壊されるだけで済んだのは不幸中の幸いだったと感じており、激情に走るまでには至らなかった。ただそれも、今ここでいうべきではないと心の中に押しとどめた。


『リン君を修理するにあたっては玲也君たちと行動を共にした方が有事にはよいと私は考えてだな』

「最も、俺も有事の護衛として一応行かせてもらうが」

「ラディ、おめぇがかよ」


 玲也たちが向かう事になった理由をエスニックが説明するとともに、少し咳払いをしたラディが一歩前に出て護衛を務める事を告げる。アンドリューが彼へ軽口をたたくのだが、


「お前こそイーテストのプレイヤーだろ。その身で俺の出番を奪うな」

「おー、おめぇまだプレイヤーの俺にねたんでるのか」

「まー、アンドリュー。そうあんまりラディを揶揄うな―」

「……す、すまねぇ」


 冗談半分で揶揄うライバルに対して、ラディは厳しい口調ながら何気ない様子で返す。ただ分かった上でリタが仲裁した時に彼の言葉は急にたどたどしいものともなっていた。


「分かってると思うけどみゃー、ブレストの方がいいみゃー」

「それは最もです。スピードで段違いですからね」

「スピード……ということは玲也様!? まさか私は出番なしということですの!?」


 メルからのアドバイスに自分も同じことを考えていたと玲也は返すが……自分ではないことにショックを受けるエクスの存在を忘れていた。どう彼女を納得させようか悩むのであったが、


「やーい、やっぱ硬くてバカスカ撃つだけのクロストじゃ役に立たないってことじゃん」

「な、なんですって!? シャルさん貴方はまだ選ばれてもいないじゃないですの!!」

「そういうエクスは、後でアレだからみゃー?」

「……許してくださいまし、話を続けてくださいませ」


 ほぼお約束になりつつあった、シャルとエクスの口喧嘩に対してメルのアレは効果抜群のようであった。エクスが一瞬にして大人しくなったが、その後ろでリンもまた蹲っており、玲也は彼女のいうアレが何なのか少し不安を覚えつつもあった。


「……自分も意見があります。そもそも第3世代のハドロイドのタグがそうどこでも手に入るものではないかと」


 場の空気が妙なことになっていると察したのか、それまで喋ることのなかったジャレコフが意見を述べる。彼が第3世代のハドロイドのタグについて懸念する事は、彼が転送された時に第3世代のハードウェーザーが開発されておらず、数々の地下拠点から第3世代の開発に着手した所が判明してないからであった。


「それならあたし達のティーンパープルよ。あたし達3人とも同じ場所からだし」

「でもニアちゃん、そのティーンパープルが今もあるかどうかわからないですよ……」

『ブラハートならある筈さ! 僕はそこから転送されたからね!』


 その折ポリスターにフェニックスからの通信と思われるクレスローの映像が現れる。彼のレスリストもまたブレスト達と同じ第3世代である他、彼の触れるブラハートがそもそもハドロイドを新たに転送する目途の立っている拠点なのである。


「へー、クレスローが役に立つ時もあるんだみゃー。実はリンのタグにクレスローの部品を使おうと思ってたんだみゃーよ」

『僕がリンの部品……そ、それはそれで!』

「……それはそれで断って、クレスローさん!!」

「リン、あんた……いや、ゴメンわかるわ」


 本気かどうか定かではないが、メルが仲間をスペアパーツのように見なす姿勢もだが、リンに気があるか知らないがそれを甘んじて受け入れようとするクレスローもまたクレスローである。さらに言えば、クレスローの献身に対して彼女は結構本気で嫌がっていたのか思わず声を上げる。彼女のリアクションへニアが突っ込もうとするも、すぐさま自分も同じスタンスだと同意の意見を述べた。


『クレスロー、何を言っているんだ……すみません将軍、僕もよろしければ同行してよいでしょうか?』

「……アトラスさん!?」

『クレスローがブラハートの場所を知ってるなら、玲也達の助けになると思います。フェニックスには人が余ってます』


 クレスローを窘めつつ、アトラスもまた電次元へ向かわんと志願した。クレスローがブラハートの場所を把握していると述べる点に乗じるようアピールして、この大仕事に彼は漕ぎつけようとしているのだと、


「ブラハートでしたら、自分も場所は分かります。任務で何度か足を運びましたので……」

『ボックストよりレスリストの方が機動性は上です!』

「……すまない、確かにそれはそうだが」


 最もジャレコフもまたブラハートについて把握していると知った時、少し必死になってアトラスが自分の方が適していると押し切る。内心彼のプライドを傷つけてしまったかもしれないとジャレコフが俯いて謝るが、内心割り切れない様子もあった。


『ジャレ、今はあまり気にしない方がいいかな』

『……』

「……どもです、ムウさん」


 そんな二人の間に不穏な空気が走るとムウが察した。アトラスの肩を掴んで窘めたうえで代わってジャレコフへ謝る。なおムウの後ろではバンが腕を組みながら無言で彼らに目をやるも、すぐさま見ないふりをしていた。


「しかしアトラス君もだが、シャル君もベル君も行かせたくはないんじゃが……」

『ただ求められる燃費では、6機の中で一番レスリストが適している……ブレストのフォローに適任だと思うが』

「がきっちょー、どうした顔色が悪いぞー?」

「い、いえ……それは……」

「おめぇが行くのは決まってるんだ。遠慮してたら命取りになるぞ?」


 エスニックはレスリストを同伴させる事について、わりかし一理あると検討してはいた。しかしリタが玲也に思うところがあるような表情をしていた事に気付いて声をかける。その不安について口にし難いとシラを切ろうとする彼だったが、アンドリューは言うべきことは言えと気さくな様子ながら釘を刺した。


「分かりました……すみません、俺がこういう事を言うのは何ですが今のレスリストに不安があります」

「……!」

『……ホワイ!? アトラス、落ち着いて』


 わずかに躊躇の念があったものの、今後を想定するならば、本人兵居づらい事だろうとも口にしなければならなかった。思わずアトラスが無言で席を立ち、クレスローが彼を何とか宥めようとしている様子だが、


「流石ですわ玲也様! 私もこのクレスローと一緒なら何されるかわかりませんからね」

『ノン! エクスにもそれを言われると僕はきつい……』

「……それもそうだけど、あんた達が一度逃げて帰ってきたでしょ」


 玲也に便乗して、エクスがクレスローはタイプではないと振る。一応ニアが同意するものの、それ以上にアトラスへの不信感があり、任務を遂行するにあたってこの懸念が大きいと見なしていた。


『れ、玲也……君は僕なしでも行けるというのは流石だと認めるけどね』

「そういう話ではないですよ! この所アトラスさんが無理をしているとしか思えないから不安なだけです!!」

『僕が無理をしてるのは否定できないけど、それだったら君はどうなんだ! いきなり電次元に行けと言われてもそんなあっさりと!!』

「アトラス、今はそういうことを聞いてんじゃねぇ」


 先輩としてのプライドからか、国家からのプレッシャーか――温厚なはずのアトラスが開き直ったようにも、ややムキになって反論する。最もその反論が問題の焦点を転嫁させているものであるとアンドリューが冷静に指摘する事も忘れていない。冷静さを欠きつつあった彼はまともに反論する余裕もないようだった。


「自分もそうは言いたくないが、ここは玲也やアンドリューさんの言う通り……」

「いや、いいと思います」


 ジャレコフもまた二人に同調しようとした時だ。また扉が開いた人物がアトラスを肯定する――ベルだ。彼女は右腕を開いたり閉じたりしながらも、穏やかな姿勢ながら強く彼を肯定しており、


「アト君がそういうなら、彼の思うがままにさせた方が良いと思います」

「ベ、ベル君……それは本気で言っとるのかい!? そう簡単に捉えられてはじゃな」

「将軍、よろしければ私とシャルちゃんもよいでしょうか。ちょっと二人をフォローできたらと思いまして」

『もしかしたら、調整してもらった右手をベル君は信じてるのかい?』


 右手を絶えず動かしているベルの様子から、エスニックが志願した理由を察する。彼女は図星と感じつつも苦笑いを浮かべて、


「ただ、前より動かすことが出来るようになってもそこまでの自信は私にはありません、シャルちゃんを巻き込むのも危険ですし」

「そ、そんな! 僕だってちゃんと動かせるってベルは認めてたのに!?」

「違うの。もし電次元についた時の問題を考えてたの…生き延びれるかわからないから」


 自分ならベルを支えられるとシャルは主張するのだったが、その先の事を考えたうえでベルはあえてその先は無理だと固辞する。電次元で生身の戦闘を想定した場合、玲也には3人のハドロイドとラディが護衛に控えているが、自分とシャルの二人をジャレコフ一人が護衛となるのは重荷と判断したためでもあった。


「それはよかった……あっしとベルちゃんの手を借りてもそこまで義手の性能を上げることは難しいですからね」

「できなくはないけど、いきなり極限まで上げたらベルの神経がいかれるみゃー」

「すみません……ただ、無理はしなくとも玲君とアト君を支えられるようこちらでお膳立てをしたいと思います」

『なるほど……。玲也君、アトラス君はそれで特に不満はないかな?』


 エスニックが意志確認をするも内心ではこの3人で電次元への突入を検討しつつあった。玲也とアトラスに対して、フォローしながら支援していく役割はベルなら果たせるとみなしており、


『僕はそれで異存はありません。ベルさんの手を借りてしまっていうのも何ですが……』

「アト君、それを詫びるよりも必要以上の手出しを私にさせないように頑張りなさい」

『は、はい……そのつもりです』

「ならいいの。玲君も大丈夫かしら?」

「俺もです。それで作戦はどのように……」


 二人の同意を得た事を確認したのを踏まえ、玲也に促されたと共にエスニックが肝心の作戦内容について伝えた。メンバーの決定は予定されたものではなく急に決まったにも関わらず、その構想は既に頭の中でまとまっていたようだった。


『標準時でいえば午前0時に現時点での休戦条約は失効する。残り3時間の間にまずボックストが動いてだ』

「レール・シーカーで月面から電次元へつながる入り口を確認するですね……」

『その上で、ブレストとレスリストがそれぞれ電次元ジャンプで月面から電次元へ突入する……休戦条約が有効なうちでこそ効果がある訳だ』

 

 エスニックの立てた作戦とは、締結された休戦条約を逆手にとって月面から電次元への突入を計画する――。最大半径20万㎞まで一度に飛ぶことが出来る電次元ジャンプは2回使えば月面まで到達することが出来る。フォートレスからの電力供給で1回分を肩代わりした上で、休戦条約に沿ってこちらから攻撃を仕掛けなければ、バグロイヤーの本拠である月面で総攻撃にさらされるリスクも減るともできると睨んでいた。


『すまないがベル君、さっそくボックストを電装させるつもりで……』

『将軍! バグロイヤー側の巡洋艦が迎撃されたとの事です!!』

『……何だって!?』


 このまま電次元への突入が開始されようとした時、クリスの信じがたい報告をで状況は一変した。大気圏を突破しようとしていたバグロイヤーの巡洋艦とは、おそらく解放される使節たちを乗せたペレス級であろう。


「ちょっと! バグロイヤーじゃなく、こっちが先に条約を破ったってことなの!?」

「よりによってなぁ……味方に調子狂わされるとはなぁ!!」

「何てことだ……!!」


 最もそのペレス級の様子が大型モニターに表示されるが、ステーションの迎撃用キャノン砲を被弾して炎上しつつあった。バグロイヤーが一方的に条約を破棄しての攻撃以上に厄介な事態になりうる――玲也は握りこぶしを震わせながら、この暴挙に憤りを覚えずにいられなかった。

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