5-4 何故だ! 電装マシン戦隊に走る疑惑
「ちょっと! そうなるとニア達がスパイだというわけなの!?」
「落ち着けよ……俺はあいつらがスパイだとは言ってない」
「そ、そうじゃよな……」
翌日、ドラグーン・フォートレスのブリッジでは一波乱が起こっていた。テッド曰くハードウェーザーの機密データについて何者かが不正アクセスの痕跡があり、データのセキュリティを管轄する彼にとって、自分を超える相手はシャルかハドロイドの面々しかいない。そう判断を下したことでクリスが思わず感情的になっていた様子であり。
「確か情報処理に優れたハドロイドはリンさんですが」
「ちょっとブルート! あんたもやっぱり疑ってるの!?」
「やめろ! ここで言い争ってもどうしようもないじゃん!!」
「俺も疑ったがな……」
ブルートがリンを疑おうとしているとクリスが食って掛かるが、ロメロが二人を仲裁する。最もテッドの言葉に彼女は再び彼に視線を向けるのだが
「ビャッコの方には既に確認を取った……手遅れだった」
「そっちでも被害が出てるとなると……」
「多分、俺らのところのハドロイドじゃない。情報が盗まれた時にあいつらは学校に行ってた」
ビャッコ側のブリッジへ確認を取る中で、既にそちらでも被害が生じている事が判明した。ビャッコ側の被害が発生した時間にリンが登校中の状態では、大気圏外のフォートレスまでアクセスすることは不可能に近いのだ。
「ま、まさかバグロイヤーのスパイが潜伏していたとは、昨日フェニックスの方で戦闘があった事もあるんじゃし……」
「フェニックスの方に今連絡は取ってます博士。戦闘のあった宙域はどうだ」
「昨日、ザービストがこれを退けていました。この戦闘を囮として誰かを向かわせたのでは?」
「ビャッコにはない。フェニックスは……おっと」
ブレーンはバグロイヤー側がスパイを送り込んだのだと思いたかったが――エルとテッドはその後首を横に振ったのが答えだ。フェニックスにも何者かが潜入した痕跡が見当たらなかったのだ。
「となるとフォートレスの誰かがバグロイヤーへ内通していると……さてどうすべきか」
「将軍、博士―!!」
エスニックが最悪の事態を想定せざるを得なくなった時、シャルがブリッジへ慌てて駆けてきた。テッドはこの時を待っていたかのような様子で彼女を向くと
「昨日やっぱいたんだ! ドラグーンにスパイが!!」
「な、なんじゃと……ここにいる皆がそういうことをするとはわしにはとても!」
「いや博士落ち着いてください。そもそも昨日って言ってるじゃないですか」
「そうだよ! 僕も信じたくないけど……ポーちゃんだよ!!」
シャルはテッドの命でドラグーン・フォートレスを巡回しつつ、パソコンで昨日の様子と照合していた。その結果バグロイヤー側からの通信履歴が残されていたと知らされたのだ。
「私も認めたくはないですが……実はポーちゃんの行方を昨日探した際、示した先と違う場所にいたのです」
「ポーがやたら前に出たがるとかで、まさかと思いましたけどね……リンに探らせて正解だったと」
リンとアンドリューがポーがスパイであるとの証拠を説明する。彼女が手にしたタグは自分たちハドロイドの居場所を示すようにポリスターと連動している。それから彼女が言うには、ポーの気分が悪くメディカル・ルームへ向かったが、レインが迎えに来ても帰りが遅いことからメディカル・ルームに向かっても実際に姿はなく、なぜかブミーティング・ルームの近くで蹲っていた様子を見たとのことで発見に手間取ったという。
「おそらくバグロイヤー側がタグを改造したのではと思います。ポーちゃんがもともとバグロイヤー側の手に落ちていたことからも十分あり得……」
「将軍、レスリストから救難要請が出ています! キューブストの護衛中にバグロイヤーの艦隊と遭遇したとのことです!!」
リンは顔を横に向けながら、自分の抱く疑念を打ち明けた瞬間、クリスがレスリストからの救難要請をキャッチしたとの報告があった。レスリストがキューブストを引率しての実機訓練に入っていた最中であり、
「話は聞かせてもらいました将軍、ここは俺が……」
「いや、玲也さんに行かせてもらえないですか……! それにニアちゃんで!!」
「リン、どうしたんだー? お前らしくもないぞー」
レスリストの救援にアンドリューが名乗り出ようとした所、リンは玲也とニアにその役を振ってほしいと嘆願した。これにリタが少し驚いたような表情で問うが。
「私はニアちゃんの親友を裏切るようなことをしました。それとポーちゃんがだいぶ追い詰められていた様子で、絶対何かやむを得ない事情があると思うのです……」
「けど、あいつが電送マシン戦隊の機密を漏洩したのは確かだからな……」
「テッド! 僕だってこんな事やりたくないんだから!!」
リンは自分もまたポーの裏切りを知らせることでニアを裏切った罪悪感があり、苦渋の思いで明かさざるを得なかった。だからせめて彼女の事情を知って説得しなければならないとこの場で感じていた――最も自分では何もできない、親友のニアでなければ説得もできないと考えると自分の非力さも痛感していた故でもあるが。
「エスニック君、わしもできる事ならリン君の意見に賛成したい。あの子にやむを得ない様子があるなら何とかそれを救わなければと」
「博士もですか……」
「テッド君、ハドロイドもまた同じ人間じゃぞい! 償いはしてもらわないといけないが、まだ後戻りはできるんじゃ!!」
「 直ぐに手を打たなければ折り返しのつかない事になる ……玲也君、ニア君! アラート・ルームへ急いでくれ!!」
エスニックもまたポーの事情を考慮してその場での始末は極力避けたい方針だった。ブレーンの言葉を受けて玲也に説得の機会を与えることにした。温情ある対応についてハードウェーザーによってバグロイヤーとの戦いを優勢に渡り歩いている背景もあった。それを踏まえると1機でもハードウェーザーを電送マシン戦隊に置くことが今後の戦いで求められているのだ。
『しかしエスニック、まさかハドロイドがバグロイヤーに内通していたと世間で知られたら厄介なことになりますね……』
「ガンボットさん、正直今そのような話をしたくないが私も否定できないのがね」
その折にガンボットからの通信が入る。彼がポーの内通が世間に知られると電送マシン戦隊にとってはスキャンダルになりかねないとの事。世間に対しての体裁をあれこれ述べる事をエスニックは好んでいなかったが、そうは言ってられない。
『こちらからも直ぐウィストを出す。レインに万が一のことがある事もありうるからな』
「ありがたい。少なからずポー君がレイン君から離れてそのような行動に出ていたとなれば、彼女が共犯という線は低いからね」
『当然だ! ったくポーとかいう女はとんでもないことをしやがって』
「ネイラ君、今はまだ後の事もある。穏便に解決できるよう、最悪の事態を避けるようにはしたい」
ネイラは部下のハドロイドに裏切られた事に拳を震わせながら歯がゆい心境を述べる。その彼女を宥めつつも、エスニックは今の状況はブレストがこの状況を収拾できるかにあると判断していた。
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