第24話

「おはよう」

エリカが部屋に起こしに来た。

侑はあのあと、気持ちを切り替えられなくてそのまま部屋にこもっていたからエリカ達は心配していた。


「おはよう」

侑は目の前で心配そうに見つめているエリカを抱き寄せた。


「きゃっ」

エリカは体制を崩して、侑の上に乗っかってしまった。


「侑、大丈夫?」

「大丈夫だよ、重くない。」

「ち、ちがうよ、昨日の事だよ。

もう引きずって無い?」

「はは、分かってるよ。

もう大丈夫だよ。

こんなにかわいい子が起こしに来たんだから、スッキリした朝だよ。」

「もう…みんな心配したんだからね。

早く降りて、みんなに顔を見せてね。」

エリカはベッドから降りて先に降りてるよとリビングに向かった。


侑がリビングに入るとみんな集まっていた。


「おはよう」

侑は笑顔で声をかけると、メイの所に行った。


「母さんおはよう。

コーヒーが飲みたいな、あと何かお腹に入れたいんだけど…何かある?」

「コーヒーだから、パンの方が良いかしら?

ベーコンエッグ位ならすぐに作れるわよ。」

メイは侑にコーヒーを渡すと、ベーコンと卵を取り出した。


「充分だよ、何か手伝おうか?」

「そうね、パンをトーストしておいてくれる?」

侑はコーヒーを飲みながら、トースターにパンを入れた。



ソファーに座ると横にエリカとサラが、正面にはドラゴが座った。


「もう大丈夫か?」

ドラゴが侑に声をかけた。


「あぁ、もう大丈夫だよ。

心配かけて悪かったな。

どうも駄目だな、あの手の奴に絡まれると…

我を忘れそうになる。」

侑は気持ちの切り替えが上手く出来無いと嘆いた。


「仕方ないさ。

エリカにあとで聞いたけど、俺なら殴り殺してたかもしれない。」

ドラゴは侑はよく抑えたと肩を叩いた。


「はい、出来たわよ。

みんなも食べるでしょ、運んでちょうだい。」

メイは侑の分だけ持ってきた。


「そういえば父さんは?」

「あの人なら部屋で装備の手入れをしてるわよ。

そろそろ出てくると思うけど。」

バトラは装備の手入れが苦手なのよとメイは笑った。



みんなで朝食を摂っていると、バトラが出てきた。


「メイ、俺の分はあるか?」

「あるわよ、自分で運んでね。」

メイは自分の分と子猫のミルクを持ってリビングにきた。

エリカの横に座ると子猫がメイとエリカの膝に飛び乗った。


「この子達は猫のままね。

オニキスみたいに魔獣化するのかしら?」

メイは子猫にミルクをあげながら侑に聞いた。


「どうだろうね、オニキスは餌を探す為に魔素の濃い所を動き回っていたからね。

子猫はあまり動かなかったみたいだから、魔素を浴びなかったのかも。」

侑は子猫の頭をさすりながら答えた。


「町の方で空砲が聞こえたから、今日から依頼開始になるぞ。

ギルドから聞いた話をしてくれないか?」

バトラは編成とかの確認をしようと張り切っていた。


「今回は魔物を討伐したら、死骸を袋に入れてギルドに提出する事になってる。

討伐した死骸を集める役目をラピスに頼むつもり。

だから、一人一人にラピスを付けようと思ってる。」

「ラピスって、青いスライムだろ?

一匹しか居ないのをどうやってみんなに付けるんだ?」

ドラゴはラピスが集合体だと言う事を知らなかった。


「ラピスは今、五百匹位が固まって一匹になってるよ。

だから、百匹ずつで集合体になってもらう。」

侑が説明すると、サラも驚いていた。


「討伐対象はホーンラビットとか、サーベルキャットとかの獣が魔獣化した物がメインになるから各自散開して討伐する事になるよ。

でも、母さんとサラはセットね。

魔素の吹き出す穴がダンジョンになりかけてるみたいだから、途中からはモンスターが混じって来るかもね。

その時はドラゴと父さんが前衛、俺と母さんが中心でサラが殿ね。

サラは最後尾から弓で援護がメインだけど、後ろからの強襲とかがあったら大鎌に切り替えてね。」

侑は大物と出会った時の為のフォーメーションを考えていた。


「「「了解。」」」

みんなは理解したと頷いた。


「エリカは子猫の世話と、夕飯の支度をお願いね。

メニューは任せるけど、出来れば味の濃い物がいいな。」

侑はエリカも大事なメンバーだよと手を握った。


「うん、分かった。

メイさんから教わったレシピで料理を作っておくね。

一品はもう決まってるんだ。」

エリカはちょっと顔を赤くして侑を見た。


「何を作るの?」

侑はエリカの表情からは何を作るか浮かばなかった。


「ひみつ。

ちゃんと無傷で帰ってきたら、美味しいのを食べさせてあげる。」

エリカは侑に微笑んだ。


「無傷かぁ、母さんの後ろに隠れてるか。」

侑は冗談を言うとエリカに向かって笑った。


「さぁ、食べたら行くか!」

侑は全員無傷で帰るぞと、気合を入れた。


外に出ると侑と話をしたラピスは五匹に分離して、全員のポケットに入った。


「ラピスは知能が高いから、心が通じれば念話で話せるよ。

移動中に馴れておいて。」

侑はラピスの索敵能力の高さをみんなに話した。


「索敵能力がそんなに高いのか…

それはありがたいな。

よろしく頼むよ。」

索敵能力が無いドラゴはラピスに頼りにしてると声をかけた。


〈索敵は任せてください、でも攻撃は苦手ですから援護は出来ませんよ。〉

「おっ、ラピスの声が聞こえたよ。

攻撃は任せろ、索敵と回収だけ頼むな。」

〈了解です。〉

ドラゴはラピスと心が通じて話していた。


「ルビーは二匹に分離して、一匹はオニキスと留守中の家を護ってね。」

侑が声をかけるとルビーは二匹に分離した。

一匹は侑のポケットに、もう一匹はオニキスの上に乗った。


「留守中の家は任せて。」

「玄関の前で寝てるニャー。」

オニキスはアクビをしてるが、目は真剣だった。

ルビーはラピスが居ないのがちょっと不安みたいだ。


侑はポケットのラピスに少し残れるか聞いた。


「まだまだ余裕だよ、ちょっと残るね。」

ラピスはポケットの中で分離して、小さいラピスがオニキスの上に乗った。


「じゃ、行ってくるよ。」

「行ってらっしゃい、頑張ってね。」

「気をつけてニャー。」

玄関の前でエリカが手を振った。

オニキスはエリカの足元で丸くなって尻尾を立てた。

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