第22話
「ちょっと待っててね。」
侑は虹鱒の内臓を取り、綺麗に洗っていた。
(インベントリの中には生き物は入らないから早く処理しなきゃ。)
侑は鮮度を落とさない為に、虹鱒の処理を急いでいた。
虹鱒は二匹だけ残して、全てインベントリに仕舞った。
侑は虹鱒を串に刺して塩を振り、直火で焼き始めた。
「魚焼きグリルみたいなのが欲しいなぁ。」
侑は串を持ったまま、直火で両面焼いていた。
「香ばしい匂いがしてきたね。」
ミチルは久し振りの魚に、尾羽をフリフリしてる。
焼き上がった虹鱒を皿に乗せて、ダイニングに移動する。
「試食してみよう、美味しかったらバトラさん所におすそ分けしよう。」
侑はミチルの前に皿を置いた。
「いただきま~す。」
ミチルは『美味しい美味しい』と言いながら食べてる。
侑も食べてみる、臭みも無くほっこりした白身で少し甘く感じた。
「ミチル、ラピス達の家を作ったら行きたい所が有るんだけど。」
侑は洗い物をしながら、ミチルに聞いた。
「何処?町?」
ミチルは侑とのお出かけに浮かれ始めた。
「ブラフマー様の所。」
侑は約束を忘れてなかったし、聞きたい事があった。
「あ~、そっちか。
二人で買い物かと思ったよ。」
ミチルはちょっと残念な顔になってる。
「買い物はバトラさんに町を案内してもらってから、二人でゆっくりしようね。」
侑はミチルの顔を見て、優しくなだめた。
「そうね、今はお店の場所も分からないもんね。」
侑の『二人でゆっくりしようね』でミチルは笑顔になった。
庭に出て、ラピス達の家を作り始める。
侑の周りをラピスとルビーはピョンピョン跳ねてる。
侑は犬小屋のイメージで良いのかなと疑問に思いながらも作り進める。
出来上がった家を白いペンキで塗った。
二匹は大喜びで入ろうとするのを、何回も侑に止められていた。
「まだ乾いてないから駄目だよ。」
侑は二匹を落ち着かせた。
「侑さん、立派な家をありがとうございます。」
二匹は本当に嬉しそうだ。
急にラピスが門に向かって跳ね出した。
侑は何かあったのかと思い後ろをついて行く。
門の手前で止まるとラピスは動かなくなった。
「どうしたの?」
侑がしゃがんでラピスに問いかけた。
「侑さん、ちょっと離れた所ですが、バトラさんが紫蜘蛛と戦っています。
出来れば、バトラさんの所に行って紫蜘蛛の毒腺を貰ってくれませんか?」
侑は『構わないけど、何で?』と聞き返す。
「紫蜘蛛の毒腺を食べると、ポイズンスライムに変異します。
きっと、侑さんの役に立てると思うんです。」
ラピスは役に立ちたがっているので、必死だった。
ミチルに話すと『いいんじゃないの?』って答えが帰ってきた。
「じゃ、ちょっと行ってみるかな。」
侑はインベントリから、鷹丸を出した。
「ミチル、行こう。」
侑はミチルを肩に呼ぶ。
「しょ~が無いわね~。」
ミチルは『仕方無いから、行ってあげる』的な雰囲気を出してるが、尾羽は上下にピコピコしてる。
門を出た所で、侑は索敵を発動した。
500メートル半径には反応が無い。
侑は範囲を広げた。
1キロまで広げると、反応があった。
バトラと思われる人物と対峙するモンスター、その周りを少し離れた所から囲む様にモンスターが居る。
「何か、マズイ感じがする。」
侑はミチルに周りを囲むモンスターを先に片付けたいと相談する。
「侑は無理しないで、弾持ってきたでしょ?
弓で攻撃しなさいよ?
相手は毒持ちなんだから、気付かれる前に狙い撃ちがベストよ?」
ミチルは侑に『待ってなさい』では無く、アドバイスをした。
アドバイスが終わると、ミチルはフェニックスに戻り右方向へ飛び立った。
侑は鷹丸に魔力を流し、弓モードにした。
鎌鼬を溜め込んだ緑の石をいくつか手に持ち、左に展開した。
侑が索敵でモンスターを確認しながら進むと、囲んでいる右側の反応がポツポツと消えていく。
モンスターが気付かないギリギリの所で侑は止まった。
弓を構え、石をつがえると弦を引く。
狙いを定めると、弦を離す。
弦音も無く、石は鎌鼬に変わりモンスターを真っ二つに切断した。
侑は少し移動すると次のモンスターを見つける。
侑は行射を確認するように、同じ動きをする。
放たれた石は鎌鼬になり、モンスターを切り裂いた。
侑は索敵に反応するバトラと対峙しているモンスター以外の反応が消えたのを確認すると、バトラの真後ろに位置取った。
「バトラさん、伏せて!」
侑の声に驚きながらも、バトラは伏せた。
次の瞬間、鎌鼬がモンスターを切り裂いた。
侑はスキルを偵察に切り替え、周りを確認した。
ミチルも侑の肩に戻ってきた。
「「一体どうしたのですか?」」
侑とバトラは同時に声を発していた。
侑はラピスから頼まれた事を伝えた、バトラは駆除を頼まれていたモンスターを追いかけていたらいつの間にか囲まれていたという。
「おかげで助かりました。」
バトラは素直に礼を言った。
侑は紫蜘蛛の毒腺を貰っていいか確認した。
「構いませんが、危険なので私が運びましょう。」
バトラは、カバンから保存袋を取り出して毒腺を入れ始めた。
(俺の身体は全異常耐性なんだけど…)
侑は黙って、バトラの作業を後ろから見ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます